第18話 ムーン・クエイク
それから37ヶ月後…。
2033年5月。ホール1†基地。
(ホール1基地の出口側という意味である。 詳しくは第一章を参照)
~ステータス~
世界:ヒューマンビーイング
場所:月面(静かの海より4240メートル西)
建造:サウロイド
占有:サウロイド
規模:2200平方メートル
兵力:サウロイド勢力97ポイント
※兵力については後年の人竜海三者鼎談にて報告する事が義務付けられた。(第一章を参照)なお人数でないのは各勢力で体格や装備などの差が著しいためである。そこでユニット(1人や1機といった戦闘単位)ごとの戦力をポイント化して配備可能な兵力を管理・制限する取り決めとなった。
人類の歴史でも第一次世界大戦後、ワシントン軍縮会議というものがあり、各国の保有できる戦艦の数が決められたが、それと似たようなものである。
2033年時点で兵力ポイントという概念は誕生していないし、筆者が報告の義務に従う必要もないが、せっかくなので記載しておく。
【兵力】
ラプトルソルジャー:8名(2ポイント×8=12)
ラプトルコマンダー:2名(3ポイント×2=6)
ミムスレプリカント:15名(2ポイント×15=30)
ミムスレプリカントスタッフ:1名(4ポイント×1=4)
テクノレックス:2機(4ポイント×2=8)
サウロイドTecアーマーF:3人(4ポイント×3=12)
メイジャーサウロイド:1人(5ポイント×1=5) ※あの青年将校だ。
このほか文官・非戦闘員:40名(0.5ポイント×40=20)
上記を見て、文官すら兵力ポイントが計上されていることに不思議に思ったかもしれない。
これはサウロイドだけの義務付けである。
サウロイドやラプトリアンの筋肉は運動刺激が無くても分解されづらく、また単純に大柄なので、研究者などの非戦闘員であっても無視出来ない戦闘力を持っているため、ディープシーライブズ勢力(第一章以来に久々に登場する海底人だ。彼らについてはもう少し待って頂きたい)の提議により非戦闘員も一人当たり兵力ポイント0.5として計上せよ、という取り決めになったのである。
むろんサウロイド勢力は渋々それを了承したわけだが、実際、男性のサウロイドの平均身長は2.2m、体重は身長の割には軽く120kg。ラプトリアンは一回り大きく2.3m、体重は巨大な尻尾があるため160kgを超える。確かに、もっぱら研究しかしてこなかった"ひ弱"なラプトリアンにも、ほとんどの生物は敵わないだろう。
研究員も兵力ポイントとして報告せよ、というディープシーライブズの主張ももっとも話だ。
……が。
『研究員が餌になってんだろ!?』
あるサウロイドが右手に武具を装着しながら叫んだ。
人間と同じで、回転式の警光灯(パトランプ)が緊急事態を伝えている。色覚が違うため、その色は赤ではなく紫だ。
『研究員が…!ま、まさか』それを受けた下士官は慄いた。
『何も食べずに大きくなるかよ!A棟で‟アレ”が成長したに違いない』
『エース!検体は不要だ。殺して構わん』隣の部屋、臨時の司令所から、あの青年将校のサウロイドが叫んだ。
私的な親交があるのだろう、そういう言い方だった。
『そのつもりだ!』
エースと呼ばれたサウロイドは、Tecアーマーと呼ばれる(むろん人間側の呼称だが)補助外骨格の右腕部パーツのみを装備し廊下に駆けだした。
と、その刹那――!
巨大な地響きが基地全体を揺すり、エースはバランスを崩して片膝を着く。
月の地震…!? いや…月に地殻変動などは…
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