第6話 親友
楽しい日曜日の翌日は、月曜日。
だけどこの日は終業式で、いよいよ冬休みに入る。
先日の事をまだ怒っているのかと思い、終業式が終わるまで大人しくしていたのだが。
式が終わると
「もしかして
「怒ってないよ」
「じゃあどうして?」
「別に」
少しだけ顔を上げて
「クリスマス、どうする?」
「家族と出かける事になったから。ごめんね、今年は一緒にいられない」
「え? そうなの?」
家族と和解したとしたなら、それは喜ばしい事だった。
「えっと、年末年始も?」
「うん」
「冬休み中は、遊べない?」
「あのね
「あ、うん」
そのように言われてしまうと、遊びに誘う事などは
口ごもり、寂しそうな顔を見せる親友を見るのは、
「メッセージは入れてもいい?」
「ええ。それじゃあね」
お嬢様らしく優雅に手を小さく振りながら、長い髪をなびかせ、
玄関で、
そんな彼女に、他のクラスメイトが優しく声をかけてくれる。
「どうしたの。ケンカしたの?」
「ちょっと怒らせちゃったみたい」
「えー、珍しい! すぐに仲直りできるよ、ファイト」
「ありがと」
笑顔を向けてはみたけど、寂しい気持ちが心を支配する。
甘えすぎてしまったのかなあとも思う。
力なく歩いて帰宅すると、ベッドの上のぬいぐるみを抱きしめる。
いつもクリスマスにはプレゼントの交換をしていて、すでに今年の分も準備済みだったから手渡せないとなると。
彼女は机に向かうと送り状をプリントし、プレゼントを宅配で送る事にした。マンションのコンシェルジュに依頼して発送。
翌日に到着したが、送られた荷物は届いてすぐに
彼女からの到着のメッセージはなく、
そして
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
この時代もクリスマスは人々の気持ちを弾ませるようで、街はイルミネーションが美しく、夜遅くまで賑やかさが続く。
古くからのクリスマスソングが流れる中、電子的に作られた幻の雪が降る。
しかしそこは普段の喧噪とは違った異様な雰囲気で、にわかに騒然としており、遠くから警察車両のサイレンが聞こえる中でケンカをしているような声を囲んで人垣ができていた。このように他人に興味を持つ人が多く集まる事が珍しくて好奇心をそそられたが、人混みをかき分けて覗きに行く程の野次馬根性は無く、人が固まっている所を避けるよう迂回する事にして、そのすぐ隣の路地に入り込んだ。
少し奥まった所まで来た時、人々の騒ぐ声に重なり、背後でドゴンッという爆発的な音が伴って少女は振り返った。その目に、吹き飛んで来た通行止めのために設置されたバリケードが映りこむ。反射神経のない
膝をついたまま茫然としてしまったが、悲鳴や逃げ惑う人の足音が聞こえて我に返ると、その音に混じってわけのわからない言葉を叫ぶ作業服の中年男が彼女のいる路地に入り込んで来たのが目に入る。爆音に驚いて、逃げ込んで来た人にも見えなかった。
男の周囲にはゴミ箱や飲料ケースが次々と浮かび上がり、高ランクの超能力者であることが見て取れた。錯乱しての暴走という所だろうか。
本能的に恐怖を感じ少女は立ち上がり、逃げようとしたが、両足を同時に出すような不器用な立ち方をしてしまい再び膝を付いてしまう。
そんな彼女の腕を横から伸びて来た手が掴み、声を上げる暇もなく一瞬で彼女は物陰に引き込まれた。
少女が顔を上げると、見覚えのある男が銃を構えて、
「えっと、
「ん?」
名前を呼ばれて男は少女を振り返る。眠そうな一重の細い目が見開いて、心底驚いた顔をしたが声は小声。
「あっ、あの時の子か」
「何が起きてるんでしょう?」
「君は逃げなさい、テレポートできるのだろう?」
「移動できるのは一メートルなので……」
「そうなのか」
「参ったな、応援が遅い。街中に人が多過ぎるんだな」
激しい騒音がして、二人はビクっとする。狂った男が持ち上げた物を周囲の壁に叩きつけたようだった。フーッフーッという野獣のような息遣いが聞こえて来る。
「クリスマスに彼女に振られ、やけっぱちで怪しげな薬に手を出してご覧のあり様だそうだ。全く、はた迷惑な」
軽蔑と嫌悪と憎しみを籠めて吐き捨てる
「撃っちゃうの?」
「君も、人食い熊が可哀相と言うタイプかな?」
「ううん、もしそうなら目を閉じておこうかと思って……」
「安心しろ、一発目は麻酔弾だ。避けられたら次は実弾だが」
中年男は、物を持ち上げては壁に叩きつけるを繰り返し、物を壊す事で憂さ晴らしをしているような様子だった。警察車両の音も近づき、警察官らしき声も聞こえて、二人がほっとしたのもつかの間、男はどんどんこちらに近づいて来る。
「このレンガの壁は、さすがに一メートルの厚みはないはずだ、向こう側にテレポートしなさい」
「でも」
「足手まといだと言っている」
「……はい」
少女が転移した事を確認すると、
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