第19話 キャラは出来るだけ濃くする

 バン!! リイカは思いっきりドアを開けた。ミスケアはそれをみてちょっと、え? いいの? と言うように慌てている。リイカはズンズン前に進み「よろしく!! 私の名前hリイカ・ポートフォリオ!! 今日からここの部屋になったの!! よろしく!!」と元気よく挨拶をした。

 しかし、誰も返事をよこさない。変だなと思って部屋の中へ見渡すと、「誰もいない?」とリイカは確認すると、何か左のベッドの奥の方でボソボソと声が聞こえる。何かと思って、覗いてみると、そこには「私はできる、私はできる」と、目にクマを出し濁った眼をした一部の前髪が撥ねている人物がそこにいた。

「なあんだ、いたんじゃん!! よろしく!! 私は、リイカ・ポートフォリオ!!」

 リイカが手を伸ばしてもやはり返事が無い。喋る屍か? なんて、思っているとその人物は突然「あ・・・・リイカ・ポートフォリオさんですよね」と突然生気も希望も無い目を向けて話し出した。

「お……おう」リイカは突然喋ったので少したじろいだが再び「リイカ・ポートフォリオ、よろしくね!!」と言って手を伸ばした。もしかしたら弾かれるか? と不安が過ったがその人物はリイカの手を快く握った。

「はい、ご存じです。たしか、キメラを討伐したという」

「いや、あれは横にバーレスク先生がいたから」

「否定しないんですね……と言うことは本当なんですか?」

「ま、まあ、少し脚色があるかもしれないけど」

「そうですか、あの新入生最優秀魔女の1人、ケンカ・エルソードさんと互角に渡り合えたとか」

「いや、あれは、制限時間があっただけで、あのまま続けてたら負けてたかも……」

「あはは……そうですか」

「うん、そうなんだ」

 会話中、手だけがブラブラと舞っている、リイカはぎこちない笑顔をしていた。相手は生気のない目だが笑顔をみせながら手を握っていた。2人の手は会話中は大きな時計のようにゆったりと降られていた、しかし、会話が終わるにつれ相手の力により、次第に乱暴なメトロノームとなっていった。そして、その時がやってきた。

 散々揺らしていた手を勢いよくその人物は離すと「流石は入学早々色々な注目を浴びる魔女は違いますねぇ!! あなたの未来にむかって真っ直ぐ輝くその目!! 自分の夢が絶対叶うって信じているんでしょう!?」

「え? そ、そうだよ!! 自分の夢はまず自分が信じなきゃ始まんないじゃん!!」リイカは、初め突然饒舌になったことに驚いたが、相手が自分の夢を非難することを言ったので反論した。すると、はぁああああぁと大きなため息をし「これだから、無鉄砲な魔女は困る」と呆れたというような声を出した。

「な、私のどこが無鉄砲よ!!」

「今日、自分が学校で、どんなことを起こしたか考えてください、先生への激突、魔法実践での活躍、初日から教科書の忘れ!! ああ、目立ちたがり屋の、魔女はいい意味でも悪い意味でも目立つ!! 本当に羨ましいああああ!!!」最後は何故か悶絶をして、ブリッジをするような姿勢になった。

「えへへ、ミスケア聞いた? 魔法実践で私、かなりみんなから噂になってる」

「リイカちゃん、それ誉め言葉じゃ」と、少しデヘるリイカに対し、困るミスケア、その時突然「静かにしてください!! 自習中ですのよ!!」と甲高い声が響いた。

「ああ、ごめんごめん」

「全く、リイカ・ポートフォリオ、ミスケア・スケアリィ、あなたたちはレイシア様の脅威になる存在」リイカとミスケアを睨みながら、後ろ結びにしてある赤毛を振りかざして呟く。

「レイシアって、あの、席の場所を教えてくれなかったいけ好かない魔女!!」

「誰がいけ好かない魔女ですか!! あの方は、いつも名も知らぬ植物に恵みの雨を、食べ物に飢える生物に愛を!! あの方をいけ好かないと思うのは貴方の心の現れ、心が醜い者にはあの方の美しさがわからないのだわ!!」

「はあ!!? 心が美しかったら、席を教えるくらいのことだって出来るでしょ!! それに、人のこと獣呼ばわりなんて失礼じゃない!?」

「それは、事実でございましょう!! 貴方は獣です!!」

 2人の応酬を、イルイニスは生気のない目で興味なさそうに、眺めている。ミスケアは両手で2人を抑える仕草をしていた。

 そして、「ま、まあ、2人とも、その辺に」とミスケアが制止しようとすると「あなたもです、ミスケア・スケアリィ」と怒りの矛先が自分に来たことにびっくりした表情をする。

「あなたは、レイシア様と賭け事をしていたそうですね」

「賭け事? 何の話?」リイカは事の顛末を全く知らず、間の抜けた顔で2人に尋ねた。

「この方は、魔法実践の時にあなたとケンカ・エルソード、どちらが勝つのか、全財産を、体も、貴方にかけていたそうですよ」

「ホントに!!?? ミスケアありがとう!! やっぱり信頼できる友達がいるのって幸せなことだよね!! でも、体はやりすぎかな」ミスケアは若干、誇張されていると思いあはは、と苦笑いをした。

「友の思う心から、文字通り全てをかけたことは賞賛に値します。ですが、校内でどうどうと賭け事など言語道断です!!」

「それ、レイシアも同罪じゃん」

「レイシア様は何もかけていませんわ。よって、賭けたことにはならない」

「はあ!? なにそれ、意味わかんない!! 屁理屈じゃん!!」

「あの獣と互角に渡り合ったからって調子に乗らないことね!! あなたの前には常にレイシア様、と私たちがいるんだから」

2人の応酬が再び始まり、イルイニスはリイカたちに背を向け、ゴロンと横たわっており、時おり、だらしなく、背中をかいたりしていた。

「はあ、終わんねえかなこの論争」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ウィッチグラウンドワークス 航悔 氏銘 @koukaisimei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ