質問箱で書いちゃったやつ
白金有希
勘違い
「お…」
その続きの言葉を呑み込んだ。クラスでよく見る彼女、それを街で偶然見かけたので声をかけようとしたのだが、できなかった。
理由は単純、男を連れていたからだ。綺麗な顔立ちで背の高い男性。見た瞬間勝てないことを悟る。
綺麗な彼女には彼のような人が似合うな……こんな僕じゃつり合わない。
嫌なものを見てしまった……帰ろう。
「あれ、塚田くん?」
沈んだ気持ちでこの場を後にしようとすると後ろから声をかけられる。
クラスで何度も何度も聞いた彼女の声だ。
「奇遇だね。」
「あっうん……そうだね……」
彼氏がいるからか目を合わせられない。自分が惨めに思えてしまう。
「じゃあ僕はこれで……」
「あれ、もう帰っちゃうの?」
「あっうん。だって彼氏さんいるんでしょ?邪魔しちゃ悪いし。」
重い事実の確認を自分からしてしまったことに後悔する。9割方そうだとわかっていても、彼女の口から確認しないと心の底では納得できない。でも納得してしまったら……この恋は終わる。
「えっ、彼氏……?」
彼女は隣の彼をまじまじと見てその数秒後、吹き出す。
「ぷっ……あはは!この子彼氏じゃないよ。男に見えるけど実は女の子だよ。男装が趣味なんだけどね。」
彼氏ではなく友達だとわかった瞬間世界が明るくなる。よかった〜ほんとによかった!
「紹介するよ、この子は幼なじみの浅田結(あさだ ゆい)。よく男と間違えられる人だよ。」
「よろしく、塚田くん。」
浅田さんの声はハスキーボイスと言われるもので、かっこよかった。
「よろしくお願いします。」
女性なのに男の自分よりイケメンな浅田さんは眩しかった。
「君のことは野乃花から聞いてるよ。よく話に出てくるからね。」
「えっ、話に?」
「ちょっと結、余計なことを言わないで!」
慌てる彼女はとても可愛かった。話をしてくれるのはちょっと嬉しいな。
「さて塚田くん、私たちはこれからゲーセンに行くんだけど君も来るかい?」
浅田さんは僕に耳打ちしてくる。
「はい、行きたいです。」
「それなら君から誘いなよ。僕も一緒に行動してもいい?って。」
「えっ、なんでですか?」
「まぁまぁいいから、ほら早く。」
浅田さんに押されて前に出る。彼女と一対一の世界になる。鼓動が早くなり、パニクって文字が紡がれなくなる。
「あっえっと……」
「?、どうしたの?」
「その……小野田さん、俺も一緒に行動していい?ここであったのもなにかの縁だし。ほんとに……もしよければだけど……」
彼女、小野田さんは少しの間考え、そしてなにかに納得した顔になる。
「うん、いいよ。一緒に行こう。」
小野田さんは夏にさく花火のような眩しい笑顔で応じる。その瞬間、僕は嬉しくて脳内でガッツポーズをとる。
「それはそうと……結、あとで話があるから。」
「おう……」
そこから一転、身震いするほどの笑顔を浅田さんに向ける。
ここからどうなるんだろ……
質問箱で書いちゃったやつ 白金有希 @Sirokane_yomiyomi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます