ノー・サレンダー、降伏という選択肢はない。この言葉が、今止まりかけていた時計の針を動かそうとしている。錆びついた唯子の指がそのカメラのシャッターを押そうと思う時、希望の扉が開き出す。物語は写真が大好きだった唯子が、思い出の詰まった団地にやってくるところから始まります。そこで出会ったのは、記憶の中でしか生きるはずのなかった同級生、小島くんでした。本当はもっと長いお話に展開するだろうスケールの大きさを感じました。とても胸が熱くなる、素敵なお話でした!おすすめです!
タイトルの「ノー・サレンダー」に全てが詰まっていますが話自体は、主人公が団地の解体をきっかけに男友達に再会し…というささやかなストーリー。なのにこんなに、勇気が出る読後感は何でしょう。ノー・サレンダー。心が折れてしまった人・折れかかってる人…生きることを肯定したい全ての人に、お勧めしたい短編です。
思い出の中心だった団地の解体。それをきっかけに、主人公の世界が少しだけ変化するヒューマンドラマです。丁寧な描写とストーリー、短編とは思えないボリューム感。等身大に描かれた主人公には――なんだか己と重なる部分が感じられて――ちょっとしんどくなるぐらい。だからこそ、ラストが心に響いたのです。読んで後悔なし。ぜひゆっくりと堪能していただきたい逸品です。