第4話 村の掟
「……説明してくれ。俺には何が何だか分からない。一体どういうことなんだ」
懇願するキョウスケの向かいに座るリュウヤは、自分の周りに乱雑に置かれてある物を、掴んでは異なる場所へ置く、それを繰り返した。その行為からは、キョウスケの問いに答える気は見られない。初めは黙って見ていたキョウスケではあったが、苛立ちが募っていく。
「おい、聞いているのか⁉」
「君さ、僕の家の場所、数人に聞いたら教えられたって言ったよね?」
キョウスケの方を見ずに言う。代わりにリュウヤが目にしているのは、手に取ったノートだった。
「あ? ……ああ、それがどうした?」
「村の皆、親切だよね」
「……は? 何を言っている?」
「話は振り出しに戻るけど、君はなぜここに来たの?」
「……?」
「僕に『合格』って言われて、その理由が気になったから?」
「……そうだ」
「いや違う。君がここに来たのは、僕に来いって言われたから。それで知りもしない僕の家に来たんだよ。わざわざ人に尋ねて」
「そんなわけがない。お前が気になることを言ったから、俺はここに来た。でなければ来る理由がない」
「はは、本当に興味深いね、君は」
そう言って、リュウヤは手に取っているノートを開いた。それからゆっくりと、何かが書かれたページの方を、キョウスケへ見せた。
「それが何だ」
そこには村の掟が書かれてあった。リュウヤが書いたものだろうか。親しくもないキョウスケには、それは分からない。
「一つ目を見て。『村人は皆、繋がりを大切にすること』って書いてある」
「だから俺が、お前との繋がりを大切にするためにここに来たって言いたいのか?」
「そうだよ」
「笑わせる」
「じゃあ聞くけど、ここに書かれてある掟を、君はどれだけ遵守するつもり?」
「分からない」
「少なくとも、絶対ではないってことだよね?」
「ああ、そうだな」
「それだけ聞ければ十分」
「さっきから、お前の言いたいことはさっぱりだ。一から説明しろ」
死生活と石 暁の月 @akasaku
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