第10話 理想の学校生活は自分で作り上げていくもの

「たっくん今日はまだ人集まってないから今のうちに学校出ちゃおっ」


「そうだな。今日はゆっくり話したいことがあったから助かったよ」


「話って何っ!? 」


食いつきよすぎだろ! 告白の類だと思っているんだろうか? やけにテンションが高い。


「なるべく人の目のないところで話したいんだが、家についてからでいいか? 」


「う、うん。そうだよね、周りに人がいたら恥ずかしいよねっ♡ 」


完全に勘違いさせる返答しちゃったな。まあこれはこれで可愛いしいっか!


家に帰るまで今日の学校での授業の話や昔話などに花を咲かせていた。

まあ、汐里の心ここにあらずって感じで全く会話は成り立たなかったんだが…。


「ただいマチュピチュ~~~---!!!」


返事はない…。つまらないから無視してるとかそういうことではなく、ねるはまだ帰ってきていないんだろう。


「ねるちゃんまだ帰ってきてないみたいだねっ…。私はもう心の準備出来てるよっ! 」


「じゃあ、遠慮なく言わせてもらう」


「うんっ♡」


「実は理事長から養われたい部って部活に入るように言われて入部することにしたんだ」


「待って?? 話があるって、今日学校に呼び出された理由についての話? 」


「うん、そのことだよ」


「なんだ…。ソワソワしてたのバカみたいじゃんっ!! 」


やっぱそうだよな、絶対そうだと思ってた!!!!

まあ、俺は女心の分かる男だからなここで深追いするような無粋なマネはしない。


「やっぱ告白かなんかと勘違いしてたんだな笑 」


やっちまった、また悪い癖が出た。やっちゃダメってわかってるのにやっちゃうのってなんでなんだろ???


「そんなんじゃないよ~だっ! それで話って??? }


あれ、去年の汐里だったらきついパンチ飛ばしてくるところなのに…。

俺なんかよりよっぽど大人になってるな。


「あ、ああそうだな。」


今日理事長室であった出来事を洗いざらい汐里に話した。


「つまりその養われ…たい部? って部活に入ってなかなか家に帰れないから私にねるちゃんの面倒を見て欲しいってことっ?? 」


「まあ、そういうことなんだけど頼めるか? 」


「うーん、その部活に入ればたっくんも毎日学校来てくれるわけでしょっ? なら汐里にもメリットあるし全然いいんだけどさ…。 たっくんはそれでいいの? 」


「そんなはずないだろ? 大好きな可愛い妹との時間。自分のことなんかより俺の心配を第一にするような最高&最強の幼なじみとの時間が削られるなんて良いはずない!!! 」


「たっくんはさ勉強は出来るけどおバカだよね。 自分の大切なもの捨ててまで学校行くなんてだめだよっ!! 」


「そうだよにぃに!! 」


「うわっ!? ねるいつの間にいたの?? 」


「にぃに達が帰ってきたときからいたんだけど、ギャグがつまんなすぎてこっちが恥ずかしくなっちゃって…」


「そ、そんなにつまんなかった? 結構今回のは自信あったのに 」


まじかーー恥ずっ!! 妹ですらこの反応とか汐里にはどう思われてたんだ???


「それよりさ~、にぃにがねるをほったらかしにする選択するなんてがっかりだな~」


耳元で囁くように話しかけてくるねるの声は、今にもいたずらをする子供のような雰囲気があった。


「そうだよな、本当にごめん…」


「にぃにもおバカだけど汐里ちゃんもおバカだよ! さっきの話ちゃんと聞いてた? 理事長先生は養いたい部に入部できるメンバーは知名度ランキング上位5名のほかにももう一つあるって説明してるよね? 」


「あ、そっかっ! たっくんが指名した人も養いたい部に入部できるんじゃんっ! 」


「確かにそんなこと言ってたがお前らはこんな訳の分からない部活に入部したいと思うのか? 」


「うんっ! たっくんと一緒に過ごせる時間が減るくらいならどんなことだってするよっ♡ 」


「ねるも汐里ちゃんと同じ考えだな~!! 」


「けどさ、汐里は普通に高校の部活に入部するだけだけど、ねるちゃんはまだ中学生じゃんっ? 入部させてもらえるのかな? 」


「ここまで背中押してもらってるんだ! その辺の交渉は俺に任せてくれ! この三人での生活を崩すなんて死んでもごめんだからな」


その日は三人、同じ屋根の下で多少の不安と大きな希望を抱いて寝た。




そして今俺は理事長室の前にいる。


コンコンっ 俺は絶対に引き下がらない!そんな強い意思を胸にドアをノックする。


「スーハーースーーハーー」


才能にあふれる天性の腹式呼吸を用いて最大限空気を体に取り込んだ、準備万端だぜっ!!


ガチャっ


「失礼しゃーーーーーーーーーーす!!!!!!! 」


強豪校の野球部のような挨拶で先制攻撃をかました。


「理事長。二年Aクラスの雨宮汐里と中等部の神宮寺ねるを養いたい部に入部させてもよろしいでしょうか? 」


初球で変化球を挟むことなく、ど真ん中直球勝負。


「中等部? 」


「はい、中等部の俺の妹なんですが…」


「全然ええよ~」


「え、? え、、? ええんかーーーーーーーーーーーーーーーーーい」


あっさりOKされ、俺の用意していた魔球を披露することが出来なかったことが心残りだったが…いやもう心残りどころか拍子抜けだよ!!!!!!


けど、これで俺の生活を何とか死守することが出来た! 何とか、でもないか…。



 




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養われたい部と養いたい部 大海あかさ @akasa0330

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