それから
「こんなところかな。結局ほとんど対策らしい対策は立てられなかったね…」
ひとしきり反省会と称した対策会議も終了し、苦虫を潰したような表情の旭が酒を口に含む。
「ま、そんなもんでしょ。そもそも相手が未知数すぎたわ」
そんな旭に対しひらひらと片手を振ってフォローを入れる音々もまた、若干赤らんだ表情に苦いものを見せていた。
「異世界の連中なんだから対策もクソもねェとは思ってたがな、オレは」
「法則、理、全ての異なる世界を識るというのは至極難しいことです」
次いでアル、迅兎の言葉にも頷いて返す。
「そうだね。この世界だけでも無数の人外と異能が蔓延っているんだ。それ以外のいくつもの世界のことなんて解るはずがなかった、か」
「いい機会に巡り合えたと考える他あるまい。知っている、知ることが出来た。それだけでも大きなアドバンテージとなろう」
皿に満たされていた酒を舐め干したカナが、得た経験を反芻するように数秒閉眼し、ゆっくりと開いた。
「次があるなら、負けんよ。そのように私も心気引き締めていかねばな」
『ですね。人の最上位として、人ならざるものの一角として、精霊の頂点として、それぞれに力を出し切るしか知らないのですから』
仰向けになって部屋の中をふわふわ漂っている風の大精霊も今回の一件は思うところがあったのか、普段より幾分か張り詰めた雰囲気を醸し出していた。
六者六様に考え方は異なれど、此度の異世界騒動で得られたものは決して少なくない。
「…ともあれ、もう終わったんだ。いつまでも殺し合いみたいな空気にするのはやめよう」
「そだな。くっそ長かった気もするが話が終わったんならほれ、酒盛りの続きやろうや」
「アンタ最初っから対策なんて考える気なかったものね」
「だから言ってんだろ、その方が面白ェって」
「すまない迅兎、そこにある日本酒を取ってこの皿に開けてくれるか」
「まだ飲まれるのですかカナ殿…!?」
『その辺にしておかないと酒気だけで白埜が参ってしまいますよ』
かつて一つの世界に大喧嘩を吹っ掛けた彼ら同盟は、こうしてまた、人知れず異なる世界との交戦を終え。
そしてまたこの世界の中で静かに騒がしく、何事も無かったかのように明日を迎える。
突貫同盟の番外勤務 (自主企画用) ソルト @salttail
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