第3話
血に酔った匂いが集を蹂躙しながらもそれを止める者や物は無く、周辺の木々でさえこの濃厚な血の匂いで若干げんなりとしているのではないかと錯覚に囚われる程だ
そして唐突に開かれた地面に酔って捕食されたアジトットは細切れになりながら死んだ
「おぉん?」
そしてまたゴブリンの脳髄が破裂したシーンえと戻る訳だが今度は訳が分からなかった、前を得てして選んだ死に結果を経験として勝負ごとに勝ってきた…
くじ引きや宝くじもその死に経験値に含まれるが此度のはソレに能わず未知による死だったのだろう、専門知識がないと分からない形の死に様や殺し方だ。
アジトットサヴェージも独自的に繰り出した業や技術や科学により相手を倒してきたという経験に基づいてそれだろうと判断した、つまりは状況証拠となる何かが必要なわけだがそれは分かりやすくそこに存在していた
血と臓物の匂いが鼻につく、先程殺した筈の緑小人がせめて自身の士を記憶させようと発している匂いだ、濃厚な酒に酔う様に頭の中を暴虐一色にするのは人間としての生き物としての生命保護的本能なのだろうか?
「あぁこれか…ふむ試してみる価値はあらァなァ…?」
緑ゴブリンの死体に近づき胸倉をつかむと適当な尖った棒を突き刺しまくり棘棍棒と化した死体を回数は忘れた死の予感がした箇所に投げつけると
gyaruruauruauauuruuaaaaaaaaaga
という耳をつんざくほどの悲鳴が上がりそして唐突に止まった、恐らくは自身と同じ死に方をしたのだろうと目を付けてそこに向かえば案の定である、地面が切り開かれたかと思えば土に喰われて死んでいたという状況に緑小人たちがなっていた
大きさも太さも横幅も認識するのが面倒くさい程に巨大な土の塊はそのアギトを開くと三匹ほどの緑小人を土と共に咀嚼しているのが見え隠れしている偶々避けれたのであろう残った三匹に意識を向ける
だがその前に緑小人は既に逃げの体勢だった為に先に行動するに成功したのは小人の方だった、驚愕で身を動かすこと能わずというよりは最早ヤバレカバレ的な逃走本能なのだろうか?クソと小便を漏らしながら逃げる姿は滑稽だが生きる事に必死な姿を笑えぬ身であるアジトットサヴェージは爆笑しながらもその動作の続きを眺める。
まぁ展開は変わらず瞬間的な躍動感と共に木々と小人と土のミックスジュースを喰らうっていう訳である、何の意外性も無くさっさと殺された小人を見るにあの四足歩行の土の塊が付いた何かしらはこの山の主とかそこん所なのだろう
そういえば自分も昔、それも少年時代の時に山の中で慈悲と言いながら襲い掛かり転がってきた大木の様な何かを投げ飛ばしてドタマをショットガンでぶち壊した事があったなと思い出した、あれ絶対山の主とかそんな奴だわと確信に至った思考回路はじっと此度の山の主を睨む事に集中する
きょろきょろと外を眺める土塊の山の主は周りを見えていないであろう眼で確認すると静かに小山を作りながら地面へと潜っていった、はてさてと考え自身の据わっている地面が小刻みに揺れておりあぁそういう事かと理解するとすぐさま前転を三回ほど繰り返すと生えてきたアギトを避ける事に成功した事が命があるという事実で理解した
「よりによってかよおい、俺ぁお前と言うギミックをよけるつもりでやったんだがなァ!?」
手に巻きつけずにただ纏っているレインコートと私服、ホームセンター産の斧は最後の自爆トラックの運転手に投げつけた故に無し、木こりの斧は先ほどゴブリンと山の幸のミックスジュースの材料だ、つまりは今手元にある武器はいい感じの棒のみである。
ひのきのぼうでボスキャラ攻略とかクソゲーかマゾゲーの縛りプレイでしか見たことがない居場所に自身がいるという状況を認識する、実に絶望的だがアジトットにとってはこれが日常である、あの無双こそが夢想であり絶望こそが我がゴールだ!あぁ畜生なんて人生なんだ素晴らしい!これもまた超えるための絶望だ!
「ヒーハアッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!かかって来いよ!糞塗れ野郎!」
見様見真似のファイティングポーズは滑稽にも思われるかもしれないが実のところは何人もの悪人の手首足首を折り続けてきた由緒ある殺人技術ポーズだ、あくまで殺害できる技術は人並みのモノのみである為幾らの効果があるかなんぞ分かる事ではないだろう、何せ今それが分かるのだから。
殺人技術の素手は熊も象も超える巨大生物に通用するのか、まるで夢物語でしか語れない様な夢のタッグマッチがここに達成されるのだ!あぁなんという人間本能を刺激する力と技術の対抗戦だろうか!?なんと素晴らしい事だろうか!アジトットは歓喜しているのだ!自身の限界点は未だ遠くにあるのだと!
「まずは邪魔な土ぼこりの洗濯からだァッ!!!!!」
真っすぐ行ってぶん殴る、口で言ってしまえば、文字で書いてしまえば短文章で済むそれだが実際はアマチュアからプロまで果てには化け物から神様まで全ての生命が愛用する暴力方法だ、跳躍し空気を踏みしめながら行われる一連の動作は師匠をして【人間技じゃねぇや】と半笑いで言われたアジトットの殺人業の一つだ、ちなみに師匠は方法を教えたら半日で同じ技の威力さらに上乗せをやられて肋骨が十八本折れたという思い出がある由緒ある素晴らしい業だ。
そんな技が現実じゃ見たことも経験もしたことがないサイズの化け物に効くのか、それはぶつかる瞬間まで互いに分からないだろう、だがこの山の主は強者特有の油断も慢心もなく逆にこっちに突っ込んでくるという一種の愚考を果たした、接触時の衝撃は周辺の木々の全体を弱く揺らすが一部分のみ違った、DOGANという音が文字にすら書けるであろう音の後に起きた事はすさまじい物だった。
そう、アジトットの殴りかかった場所から反対方向までの木々はまるで暴走列車でも突っ込んでいったようにほとんどの木が力任せに折れており更に向こうの岩盤にはアジトットが突き刺さっていた、ぶっ飛ばされた際に木々の通り道となった場所に立っていた緑小人数人を犠牲にしてクッションにしなければ間違いなく岩盤全てに自身の血と臓物を塗りたくる古代的な生贄儀式めいていただろう。
「あーいってぇなぁおい痛くねぇって強がりたいくらいにはいてぇな」
得てして選んだ選択肢、その全てが正解だった為に奇跡的な無傷の状態で岩盤に突き刺さったアジトットは静かに起き上がり掴んだ緑小人たちの得物から誰かが持っていた鋤と鍬とピッケル選び、拾い、腰のベルトにピッケルを引っ掛けながら左右に鋤と鍬を握りしめると遠く大股歩き五十歩の距離にいる土煙を認識すると静かに、だが確かにほっと息を吐いた、どうやら力の相殺では無かったが手傷を負わせなかったという訳ではなかったらしい、それが土塊を吹っ飛ばしたのみであっても傷がつくならばどうにか殺せるというのが彼の持論だ。
さて、最早雪崩と錯覚するほどの土煙の後に現れたのは赤色の大角の生えたサンショウウオだった、厳密には違うだろうがシルエットは現実でもいくらか見た事あるソレだ、だが大きさが違いすぎており最早常識と言う非常識に当てはめることも不可能な程だ、土塊を吹っ飛ばし小さくなったはずなのに更に大きく見える巨躯は山の主としてのカリスマかオーラ的な物だろうか?
だが実際の大きさとして存在している以上それは現実でありこれから自身が妥当しなければいけない壁なのだ!トラックダンプ車の横幅縦幅五倍以上の化物でありこれには流石のアジトットも面をくらった!あまりにデカすぎるだろうと、これは転生前にぶっ殺した事のある化け物のどれにも当てはまらない程の始めて見る大きさだった
あのゴム皮膚を持つクラゲ熊の十倍は軽い目安として映っているそれは体中に生やした鉄よりも硬いであろう鱗を全て逆立てながら正に殺意の塊として相応しい荘厳さを誇っている、山の主というより山の神というに相応しいのでは無いだろうか、選択肢をミスったかな?と今更ながら考えるがこれから出来る事などコイツを殺し尽す一点だけという希少性のある選択肢しか存在していない。
「さぁショウタイムだ馬鹿野郎、お前の相手はこの俺だ!殺し尽して見せろ化け物ヤロォ!!!」
異世界転生したSAVEポイントの擬人化の話 @akuamu717
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