後書きのようなもの
「ねえ」
「どうした?」
「サンタさんっているじゃん」
「うん。いるね」
「私最近思うんだけどさ、サンタさんってだいぶ重労働じゃない?」
「ああ・・・言われてみればそうかもな」
「でしょ。毎年12月24日と25日のたった2日間で全世界の子供たちに、各々が欲しいと思ってるプレゼントを配るんだよ?もし私だったら絶対投げ出してるよ」
「確かに。俺もそんなのはいやだな。どうしてそんなことわざわざしてるんだろう」
「私思ったんだけど、それって罰ゲームなんじゃない?」
「罰ゲーム?」
「うん」
「え、でもそうしたらサンタさんは悪い事をしたってことになるよ?」
「うん。そうなんじゃないかなって」
「ずいぶん思い切った考えだなあ」
「そうかな。私はだいぶ筋が通った考えだと思うけど」
「どういうところが?」
「まずさ、二日間で世界中の子供たちにプレゼントを配るっていうのは絶対大変じゃん。でも、実際にサンタさんはそれをやってのけてるわけでしょ?これってどういう事なのかなって。物すごいお人好しって可能性もあるけど、さすがにたったそれだけでこんな重労働を、それこそ数百年数千年と続けられるとは私は思わない」
「それには俺も賛成。なにかやらなければいけないっていう状況に置かれているのかもな」
「そこなの、私が考えてたのは。もしサンタさんが善意で動いていないんだとしたら、そこにはこんなにも大変な事を毎年する動機が必要になる。それでね。私は、もしかしたらサンタさんは過去に犯してしまった罪を償うためにこういう事をしてるんじゃないかって思ったの」
「でも、そしたらそれこそ最初言ってた『善意』みたいに動機が『罪悪感』っていう感情論になるから話がまとまらなくならないか?」
「その通り。だからね、私はこうも考えたの。サンタさんは『自身の罪を罪と思ってない人がサンタクロースの呪いにかかって自分でも気付かない所で善行を積んで贖罪をしている』んじゃないかって」
「・・・・・・ちょっと待った。話が飛躍しすぎて付いていけない」
「ああ、ごめんごめん。ちゃんと順々に話すね」
「頼んだ」
「えーっと、そう。さっき言った通りサンタさんは過去に悪い事をやってしまった人なんじゃないかなっていう考えは同じなの」
「うん」
「でも、過去にしてしまった悪行を悪いって思う心がある人なら、わざわざサンタさんになって世界中を飛び回ったりなんてする必要はなくない?」
「それはそうだな。もし自分の過去の行いに罪悪感を抱けていたのなら、自分なりにその罪を償うために行動をすることが出来るだろうし、それが本人にとっても一番良い筈だ」
「そういうこと。でもさ、世の中には一定数さ、自分の起こした悪行に罪悪感を覚えない人がいるじゃん」
「ああ、サイコパスとか言われてる連中のことだろ?」
「そう。私はね、そういう人たちが自身の罪滅ぼしのためにサンタさんを無理やりやらされてるんじゃないかって」
「・・・サンタクロースの呪いってやつか?」
「うん。・・・ああ、それの説明はしてなかったね。私はちゃんとした――最初からの根っからのサンタさんはいないと思っていて、今世界中でプレゼントを配ってくれてるのは、サイコパスとか呼ばれてる自分の悪を認識できない人たちが何らかの方法でサンタクロースの呪いにかかって自分でも気付かないうちにやってるんじゃないかって」
「その呪いにかかる何らかの方法とは?」
「うーん、しっかりとは考えてはいないんだけどね。よくさ、『良い子にしてないとサンタさんからプレゼントがもらえない』って言うじゃん。要するに良い子にしてた子がプレゼントを貰えて悪い子はプレゼントを貰えないって事なんだけど。例えばその『悪い子』は今年はプレゼントもらえなかったねチャンチャンで終わるんじゃなくて、その年にした悪い事の分だけそれを償ってもらうんじゃないのかな」
「その『悪い子』っていうのが、サイコパスとかの?」
「うん。私が思うに、サンタさんにとっての良い子は『自分のしてしまった悪いことを悪いとして反省できる子』で、悪い子はそうじゃない人の事を言うんだと思うの」
「確かに、そうすれば筋は通るな。じゃあそういう悪い子はどうやってその罪を償うの?」
「そこで、さっき話したサンタクロースの呪いなんだよ。ここもまた憶測なんだけど、そういった悪い子はサンタさんに捕まって、サンタクロースの呪いにかけられるんじゃないかな。そして、その呪いにかかった人は、サンタさんのお手伝いをして、各地の良い子にプレゼントを配る」
「その手伝うのは、例えばトナカイとか、ソリとか?」
「あり得そうかもね。呪いをかけられた人はトナカイとか、ソリに変形してお手伝いをする。・・・ちょっとグロいかも」
「そう考えると、かなり現実的になってきたな。悪い子はたった二日間とはいえ世界中を飛び回って善行を重ねるのだから、客観的に見れば善悪の均衡は取れるし。それに、筋肉痛ってほどじゃ済まないほどの痛みに体中が襲われるんだから良い気味じゃないか。なんてったって、トナカイやソリに『変形』するんだからな」
「ちょっと言い方が怖いよ・・・・・・」
「ああ、ごめんごめん。・・・あ、でもさっきの話だとサンタさんも、根っからのサンタさんはいないんでしょ?ってことはそいつも・・・」
「うん。たぶん大抵の悪い子はそこまで重症度は高くないから、ソリとかトナカイとかでその年のお勤めで解放されると思うの。でもさ、この世の中にはごくごく僅かだけど、サイコパスとかそういうの以上に気味の悪い、怖い人間がいるじゃん。そういう人たちがサンタさんになっているんだと思うの」
「サンタさんとその他だと、労働量に重みでも変わるのか?ソリとかの方がはるかに重労働だと思うんだけど」
「ソリにしろトナカイにしろ、そういうのはただ動くだけじゃん。でもさ、サンタさんって誰が何が欲しくて、どうすれば喜ぶのか、って、徹底的に『相手の幸せ』の事を考えるでしょ?それって他と違ってもっと大変な事だと思うの」
「ああ、確かに。知りもしない誰かの幸せのためだけにずっとこうどうするって結構きついかもな」
「そう。それに、サンタさんは年周期で交代するもんではないのかなって私は思うのね。サンタさんはトナカイを操って、世界各地の子供の場所を把握してって覚える事がいっぱいだから年交代だと収拾がつかない気がする」
「いきなり現実的だな」
「・・・うるさいっ。それに、サンタさんをやるのは大悪人だから、これで『善悪の均衡が取れる』んでしょ?」
「むっ。・・・・・・まあいいや。でもさ、もし本当にそうなんだとしたら結構怖いよな。毎年家にプレゼントを届けてくれる人が、実は自分を悪としない大悪党なんでしょ?」
「そこは、サンタクロースの呪いが効いて、記憶を飛ばしてくれるんじゃない?」
「有能だな、サンタクロースの呪い」
「・・・・・・それにしても、今日がそのクリスマスなんだよね。だからこそ、この話題が頭をよぎったんだけど」
「だな。お前はプレゼントもらったのか?」
「うん。前から欲しかったお人形。そっちは?」
「それがさ」
「うん」
「もらえてないんだよね」
サンタクロース Autumn @Autumn_small_forest
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