36話 新生文芸部
最悪な船出だった新生文芸部も、次の日からは何事もなかったかのように盛り上がる。
先輩たち討伐の噂を聞きつけて、ドミノゼミだった2人の女子も復帰したし、今まで部活にあまり来ていなかった1年もどんどん部室に来て、賑やかな部室になっていた。
1年は10人以上いるので、全員来ると人口密度が大変なことになってむさ苦しい。部室には大まかに位置取りが決まっていて、女子は大抵ホワイトボード前の畳みに、役職持ちはソファーに、その他男子は椅子と机ゾーンに集まるという傾向がある。
別に決まっているわけでもないが、毎度こうなる。
文芸部の新たな企画として、主に盛り上がったのは『創作ゲーム』と呼ばれることになるゲームだった。
これはLINEを用いたワンライ企画といえばわかりやすい。
流れとしてはこんな感じ。
・ゲームマスターを決める。
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・お題を決めて、1時間くらいで短い小説を書く。
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・書いた人はゲームマスターの個人LINEに小説を送る。
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・ゲームマスターはグループを作って、そこに匿名で小説を一つずつ流していく
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・小説を読んだら、何人かに当てて、「これはファンタジーものだから〇〇さんかな?」「この文体は〇〇くんっぽい」などと推理してもらって、1番の小説は〇〇さんかも?それぞれ予想を立てていく。
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・全部小説を流し終わったら、予想をゲームマスターに送る。
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・ゲームマスターの結果発表!意外な人が意外な小説を書いていたり!?
ちなみにゲームマスターは、予想を当てっこするのには参加できないが、小説は書いて流せるので、十分に楽しめる。
これを18時以降の活動時間で、やりまくっていた。ゲームの特性的に、書く練習にも読む練習にもなるし、何より推理が人狼ゲームのようで楽しい。ゲームマスターは書いた本人に「これ誰のだと思います?」と突撃することもあるので、うまく演技してなすりつけたりと、ゲーム要素もある。
最初は書き慣れていない人は500字程度の小説になっていたけれど、回数を重ねると徐々に1000字を越える小説が書けるようになったりしていた。
また、予想を外すために他人の文体に寄せることで、勉強になったりもした。ぼくは透明ちゃんがいる時は透明ちゃんになんとか文体を寄せようと試みたりしたけど、ちょっと上手すぎて難しい。透明ちゃんは一度ぼくに寄せようとしたことがあったらしいが、上手すぎてぼくじゃない。
個人的には、透明ちゃんのような目標にできる文体があると、楽しめるなぁと思う。でもぼくは上級生だし、パクられるような文体を目指さなきゃなぁとも思っていたが、そんなに速く書ける方でもないなぁと思っていた。なんなら文字数もみんなと比べて少ない方だ。1時間も与えると、軽く2000〜3000字書いてくる1年もいて、才能が恐ろしい。いや、訓練の賜物なのかもしれない。
いずれはぼくも1時間で2000〜3000字書けるようになるのだがそれは文芸部を引退してからのお話。
人によって書く話に個性は出るけれど、中でも多田師は個性的なフックをつっかけてくることがあった。ヌルッチャメッチャヌンというわけのわからん生物が出てくる小説とか、印象に残りすぎている(みんな一発で多田師とわかった)
また、女子部員が部室をもっと清潔感溢れるところにしよう!部室改造しましょう!という案を出してくれたので、新副幹事のゼロ太郎やらと相談しながら、畳を捨てて床タイルにしよう!部室を華やかにしよう!という話になって、どんどん部室改造計画は進んでいく。
先輩たちはあの日以来全く来る気配もなく、新生文芸部はこれまでにない平和を手に入れた。
以前のようなピリピリした空気はまるでなく、活動時間前まではゲーム、活動時間になったら創作ゲームという日々の繰り返しで、冬を越えていく。
そしてまた春が来る。
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