3話 二人はフォロワー!?




 結局、カザマ先輩はなんとか誤字を直して部誌に載せてもらえることになった。

 今日の活動は手作りで部誌の作成。季節は五月に差し掛かって、もうすぐ学祭の季節。今回の部誌はそこで出すのだそう。タカギ先輩は「30部くらい売れたらいい方」と言っていた。売れると言っても無料だけど。

 今は一年で集まっていそいそと部誌の作成に励んでいる。一年の入部者は結局4人(もう5人くらい居たけど批評の雰囲気の悪さに脱落して来なくなった)。残った精鋭は、ぼく、多田くん、雄平くんに、Kさん。Kさんは女性で、メガネに、服のカラーは決まって黒。なんだか仕事が出来そうな雰囲気。写真部と兼部していて、トークが面白い。高校でも文芸部に入っていたらしく、部のことを聞いたら、


「『恋人が死にました!』

『ああ、国が滅びましたー!』

『ああ、星がなくなりましたー!』

じゃねえよ!お前ら簡単に人を殺すなぁー!人の命をなんだと思ってんだー!」


 と連日のように叫んで大変だったと楽しそうに言う。個性的な小説を書く部員ばかりで、とても愉快そう。ここの文芸部なら、


「恋人が死んだって書くより亡くなったって書く方が適切な気がする」

「こんな設定ありえないでしょ」


 とか先輩たちが言い出しそうだし、そんな言葉を恐れて部員も奇抜な小説は書かない。実際、「攻めた」小説は少なくて、無難な小説を書いている人ばかり。それが面白さに繋がればいいのだけれど、はっきり言うと偉そうなタカギ先輩や、タカギ先輩の同期にあたる一個上の先輩は小説が特に面白いわけではない。

 二個上の先輩は普通な感じなのにな。小説も普通だけど……。


 なんなら一番実力が下に思われているカザマ先輩の小説が一番好きかもしれないなぁ、と思っていた。誤字さえなければね。誤字は直そうね先輩。



 そろそろ解散しようか! という雰囲気の頃、ホワイトボードに書かれた締め切りを見ていた。タカギ先輩から読書感想文的なものを学祭で載せるから書いてと言われていた。どんな本を読んでいるか、どう読んで感想をどう表現するのかっていう名刺がわりの重要なイベントについて悩んでいると「それ……」と多田くんがこちらを指さす。さしていたのはホワイトボードではなく、ぼくのスマートフォンの待ち受け画面だった。待ち受けにしていたのは、フォロワーさんが描いてくれたTwitter創作企画関連の絵。企画に参加しているのは世界で50人くらいで、完全な内輪ネタにあたる絵である。


「これがどうかした?」


 素敵な絵やね、素敵でしょお友達が描いてくれた絵なんよ、のやりとりを想定してすまし顔を向けると、


「それ……Twitterの創作企画のやつよね」














 ーーえ?







「えぇー!!!!」



 と思わず大声が出てしまうほどの衝撃。画面外から聞こえるタカギ先輩の「池添どうした?」の声も無視して「お、お前誰や!なぜこの絵を知ってる!」「フォロワー!?」「あのテントウ虫か!?年齢偽ってたとか!?」と多田くんに質問をたたみかけた。多田くんは気圧されたのか、お手上げといった感じで、とつとつと溢すように告白した。


「実は自分もその企画に参加してるんよ。チー鎌って名義で」


 チー鎌くん!? あんまり絡んだことはないけど、知ってる……。


「……ナトリウムと申します」


「ああ、ナトさんか……知っちょるわ……」


 ぼくらはなんと、フォロワー同士であった。

 

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