第148話 辛勝


 ヨシュアの《太陽の城キャッスル・オブ・ザ・サン》がゴーレムに直撃。

 魔法耐性を持ち合わせているミスリルゴーレムであれど、流石にこの大魔法はひとたまりもなかったようで、全身が赤熱化している。

 更に両太腿部分も赤熱化して非常に柔らかくなったおかげで、ゴーレムの上半身の重さに耐えきれなくなり、崩れ落ちている。

 自由を奪われたゴーレムは何とか腕の力で足掻こうとするが、動けば動く程、柔らかくなった身体が曲がって状況は更に悪化するだけであった。


 当然ハリー達は見逃す筈はなく、重ね掛けされた《闘争か逃走かファイト・オア・フライト》でハリーとエリーはゴーレムをひたすらに攻撃する。

 空気による冷却で徐々に赤熱部分も冷えてきてしまうので、ここからはスピード勝負である。


「おおおおおおおおおおっ!!」


 ハリーがまるで獣のように咆哮しながら攻撃を加える。


「ああああああっ!!」


 エリーは短剣の利点を活かして、攻撃力ではなく手数でゴーレムの赤くなっている部分をひたすらに叩く。


 そこに更にニーナが参戦。

 同じく《闘争か逃走かファイト・オア・フライト》で強化されたメイスで、力一杯に攻撃を加える。

 三人の総攻撃により、身体のあらゆる箇所が欠けていくゴーレム。

 動けば身体が崩れていくので、攻撃を耐えながら体表が冷えるのを待つしかなかった。

 残念ながら、それは悪手でしかなかったが。


 三人の総攻撃のおかげで、ついにゴーレムの核が露出した。

 これに流石のゴーレムも慌てており、何とか抵抗しようとするのだが、ついに腕がぼろりと崩れてしまい、防ぐ手段は無くなってしまった。


「終わりだぁぁぁっ!!」


 ハリーが大剣を核に突き刺し、見事核を砕いた。

 その瞬間、ゴーレムは一切動かなくなり、人の形を保てなくなりボロボロと身体が崩れていく。

 ゴーレムの最期は、ただの鉱石に成り果てるものであった。

 そしてゴーレムに勝利したという瞬間でもある。


「「「「……はぁぁぁぁぁぁ」」」」


 ハリー達はその場にへたり込む。

 怪我はヒーラーであるニーナが回復してくれているので、目立った外傷は皆無なのだが、体力が限界であった。

 ヨシュアに関しては魔力が切れかかっており、顔色も宜しくない。

 四人共限界で、これ以上動くのは無理だというのは、誰の目で見ても明らかであった。


 三十階までの中ボスは皆そこまで手こずる事無く勝利してきたのに、この四十階の中ボスに関しては急に難易度がぐんと上がったように感じた。

 その為、《竜槍穿りゅうそうせん》の結果は辛勝であり、ハリーは内心この結果に情けないと感じていた。

 しかし本来ミスリルゴーレムは《超越級》相当の実力者パーティが最低でも二組での討伐が推奨されているので、まだ《超越級》ではない《竜槍穿りゅうそうせん》のみで討伐出来たのだから、非常に素晴らしい戦績とも言える。

 

竜槍穿りゅうそうせん》が地面にへたり込んでいると、ウィンドウが表示された。

 この中ボス戦のランクが表示されるウィンドウである。

 結果はCであった。

 どのような評価基準になっているかは不明ではあるが、この結果に不満の声は出ない。

 それ程までにギリギリの戦いだったからだ。

 そして戦利品は、予想通り何も出なかった。


「くそっ、何もなしか……」


 ハリーは悔しそうに顔を歪ませる。

 中ボス撃破時に貰える戦利品は、大抵が《ジャパニーズ》の面々を強化出来る装備品だ。

 それが一つも得る事が出来なかったのは、正直痛い結果である。

 他のメンバーの表情も悔しそうであった。






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お久しぶりです!

また体調が悪化しておりましたが、更新を再開します!


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