第144話 ボス撃破の報酬確認
「……ぷはぁ、しんどかったぜぇ!!」
殲滅を確認した後、ウォーバキンはその場に座り込んで息を切らす。
今回のボスはとんでもない数で押してきていたので、正直五人だけでのボス攻略はスタミナ的に厳しいものとなった。
加えて《ステイタス》を持っているパーティの中で一番
その為、五人だけでボスを攻略できたのは大金星と言える程の功績だったりする。
ちなみにウォーバキンだけでなく、カルラ達もスタミナ的に限界だったようで、息を切らして地面に座り込んでいた。
「はぁ、しんどいけどオレ様達の評価を見ないとな」
ウォーバキンは宙に浮かんでいるウィンドウに視線をやると、『A』という文字が浮かび上がっていた。
どうやらS判定には届かなかったようだ。
「くっそ、殲滅速度が足りなかったか」
「かもねぇ」
最高評価を得られなかったのは残念だが、それでも達成感はあった。
しかし火力不足が課題なのは明白である。
(ちっ、オレ様とレイリがもっと殲滅速度を上げる程の力があれば――いや、今後冗談抜きで黒魔法を扱える魔法使いを入れるのを検討しねぇといけねぇかもな)
頭の中で火力向上をどうするべきか一瞬考えたが、今は目の前にある報酬を確認する事が大事だ。
出現した宝箱は二つ。
どうやら評価で宝箱の数が変わるらしい。
Sの時は三つ、Aは二つと来たら、順当にいけばBは一つでC以降はゼロという事になるだろう。
「うっし、カルラ。左の宝箱を開けてくれ。オレ様は右を開ける」
「了解」
ウォーバキンとカルラは宝箱に手を掛け、そしてゆっくりと開ける。
宝箱に手を突っ込むと、手に物が触れた感触があった。
それを掴んで確認してみると、ウォーバキンはイヤリング、カルラは指輪を手にしていた。
「んだ、これ?」
「さぁ。これはラファエルに確認してもらうしかないね」
二人が宝箱から中身を取り出すと、進行を妨害していた光のカーテンが消滅した。
ウォーバキンは《黄金の道》を手招きし、入手したイヤリングと指輪を確認してもらった。
トリッシュはバッグから《鑑定の眼鏡》を取り出して装着し、イヤリングと指輪を凝視する。
数拍程凝視した後、紙を取り出して鑑定結果をさらさらと書き記す。
「これが二つの装飾品の鑑定結果です」
トリッシュの鑑定結果は、このように記されていた。
まずはイヤリング。
----------------------------------------------
名前:感覚強化のイヤリング
等級:
〇詳細
耳に装着する事で、全ての感覚が研ぎ澄まされる。
まるで背後にも目があるかのように、気配も察知しやすくなる他、《念動力》の同時操作可能個数が一つ増える。
人間も製作が可能だが、ほんの一握りの人間しか製作不可能。
----------------------------------------------
これはまさにリョウコの為にある装飾品と言えるだろう。
そして指輪。
----------------------------------------------
名前:魔力増幅の指輪
等級:
〇詳細
装着者の魔力を増幅させ、黒魔法の威力を底上げする。
人間でも製作可能だが、狙って製作するのはまさに神業の腕前がないと不可能。
----------------------------------------------
こちらも黒魔法使いのチエが持つにふさわしい装飾品だ。
ウォーバキンは一切の名残惜しさを見せずに、チエとリョウコに戦利品を渡す。
「ほら、二人共これを身に付けて、絶対に目的を達成してくれ」
「……本当、ありがとね、ウォーバキン」
「ふっ、いいって事よ」
リョウコの礼に掌を振って応えるウォーバキン。
しかし、心中は決して穏やかではなかった。
何故なら、今までの戦利品はどれもこれも帰還を願うカズキと《ジャパニーズ》のメンバーを敢えて強化させているようなものばかりだ。
となると、もしかしたら――と、いくつかの予測が立った。
一つ目は、純粋に超常的存在が彼等との戦いを望んでいる事。
超常的存在にとって、彼等を強くする事にどんなメリットがあるかわからないが、きっといくら考えても結論は出ないだろう。
二つ目が、超常的存在と戦うには実力不足の為、少しでも対等に戦えるように敢えて強化しているという予測だった。
これに関してはここのダンジョンの主が強者との戦いを望んでいる、という前提の元になってしまうのだが、帰還組が満足出来る実力には達していないと判断している為、急遽強化を施したのではないか。
つまり、これらの装備品を身に付けて、やっと良い勝負が出来るかどうかという所なのだろう。
(もし後者だったら、ちょっとやべぇ相手かもしれねぇな)
超常的存在の考えは、人間の思考とはかけ離れている為、奴等の思考を正確に読み取る事は不可能に近い。
正直ここまで予測を立てても無駄なのだが、どうしてもそう思えて仕方ない。
(皆に共有するべきか、黙っておくべきか)
共有するとメンバーの士気が落ちる可能性がある。
黙っておけば士気を保ったまま、ボス戦に挑める。
ウォーバキンが悩んでいると、ふと左肩を叩かれた。
左肩の方に視線をやると、カルラがいた。
そして無言のままに首を横に振る。
(……オレ様の考えが見透かされてるなぁ)
流石、物心ついた時から共に行動しているだけあって、思考は見透かされているようだ。
ここはカルラに従って、ウォーバキンは黙っている事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます