第119話 行動を開始する前に、職業付与!
結果として、《黄金の道》には協力してもらう事になった。
しかし、恐らく《
「そんなのは百も承知だぜ。オレ達は今、口で言い返すんじゃくて、行動で判断してもらわなきゃいけない立場なんだ」
本当にこいつらがあの《黄金の道》なのか? と思う位の変わりようである。
逆にあのダンジョンアタックでの出来事が強烈過ぎて、ショック療法になったのかもしれない。
リュートは彼等の言葉を信じて、明日皆に紹介する事にした。
翌日。
『《ジャパニーズ》帰還大作戦』と名付けられた今回のダンジョンアタックの参加者が、ギルド内の個室に勢揃いとなった。
《
「俺は《烈風》というパーティのリーダーをやっているガンツだ。
ガンツがパーティの代表として先に名乗る。
そこでリュートに衝撃が走る。
今初めて、ガンツ達のパーティ名を知ったのである。
「おめぇ達、《烈風》ってパーティ名だったんか!」
「あぁぁ、そういやぁお前には名乗ってなかったな。すまんすまん」
そしてリックとカズネが自己紹介をしたのだが、エリーがカズネに対して敵対心が籠った視線を送っていた。
カズネも負けずに視線を送り返し、両者の間には見えない火花が散っていた。
((こいつ、絶対彼狙いだ!!))
恋する乙女の勘はすさまじく、正解である。
見えない所で恋の駆け引きが始まっていたのだ。
当のリュートは、そんな事は全く知らないが。
次に自己紹介をしたのは、ガンツ達が連れてきたパーティだ。
「俺は《
ディーはオールバックの赤髪で、顔中が古い傷跡だらけだ。
しかしその傷が歴戦の冒険者という雰囲気が出ており、風貌だけで頼もしいと感じられた。
頑丈そうなライトアーマーを身に付けており、自身の丈よりも長い銀色の槍を背に担いでいた。
「次は私だね。副リーダーの《エンデ》だよ。私も
エンデはショートカットの銀髪の女性。
しかし全体に筋肉質で、腹や胸など露出が多い服装をしている。
肌が見える箇所におびただしい切り傷が残っており、それらは彼女が女性としてではなく、戦士として生き抜いてきた証拠となっている。
また口を大きく開いて笑うので、活発な印象を抱いた。
「次は自分ですね。
トルバランは右目に
ディーとエンデに比べると筋肉量は無く細身の印象を抱くが、役割としては参謀といった立ち位置なのかもしれない。
表情の起伏はあまり感じられなく、淡々と無表情で自己紹介を進めた。
「最後は吾輩だな! 吾輩は《アルフォンス》で
《
全身を隠せる程の大盾に、片手斧を担いでいる。
この大盾は所々が痛んでいる所を見ると、なかなかに酷使されているのがわかる。
だが、それでも尚壊れていないという事実から察するに、予想以上に頑丈なのだろうと推測できる。
ガンツが連れてきた《
リュートの印象としても良く、実力相応の自信が感じられた。
それに特に偉ぶっているような様子は一切無く、他のメンバー達も彼等なら大丈夫だと安心しているようだ。
が――
「なぁ、リュート。何で《黄金の道》がいる訳?」
ショウマがあからさまに不機嫌そうにリュートに訊ねる。
ショウマの気持ちはもっともである。
ショウマだけじゃない、リュートと《黄金の道》を除いた全員が、《黄金の道》に対して良い感情を抱いていないのが表情で丸わかりなのだ。
彼等の所業は冒険者界隈にも相当広まっているし、更にはこの集まりには実際彼等の所業による被害者もいる。
嫌悪感をまるで隠そうともしない。
「今は猫の手も借りてぇ程に急がなくちゃなんねぇ。だから、こいつらに協力してもらうだ」
「……いやでも、あんな事をした《黄金の道》だぜ? また傲慢な態度を取ってくるかもしれないじゃん」
ショウマの言葉に、商人であるカズキですら首を縦に振って頷いている。
商人にまで悪名が広まっているようだ。
「こいつらは腐っても元 《超越級》だべ。きっと役に立つだよ」
「でも前回のダンジョンアタックの時、全然役に立たなかったじゃんか!」
ショウマの言葉に表情が暗くなる《黄金の道》の三人。
「もし役に立たなかったら、オラが責任を以て――」
リュートは《黄金の道》の面々に視線を送る。
だが、ただ視線を送っただけではない。
非常に濃厚で息苦しくなってしまう程の殺気が籠っていた。
「こいつらを、射殺す」
大事な友達が元の世界に帰還できるかどうかの大事な作戦だ。
もし、前回と同じ失態を見せるようなら、頼ってしまった自分自身が責任を以て処分する、そう心に決めていたのだ。
人生で一度も感じた事がない程の殺気に、三人の全身から汗が滲み出てくる。
そして足が震え始める。
(こいつ……思った以上に激情家だっ)
リュートの殺気を全身で感じて、クールに見えて実は違うと感じるラファエル。
想像以上に仲間思いで、今回は仲間の為に命を賭けてダンジョンアタックをしようとしているのだ。
クールな人間なら、冷静に損得勘定で動くのだろうが、リュートはどうやら違うようだ、と彼に対する認識をラファエルは急いで修正した。
「お、オレ達からは、な、何も言えねぇ。だから、こ、こ、行動で、示す」
ラファエルは何とか口を開いて言葉にする事が出来た。
ゴーシュとトリッシュはそんな余裕はないので、ラファエルの言葉に首を辛うじて縦に振って、同意を示す。
「だ、そうだべ。思う所はあると思うけんど、馬車馬のように働かせるべ」
「……そうだな」
納得はしていないが、納得するしかない。
今は時間との勝負だ、こんな事で貴重な時間を浪費する訳にはいかない。
ショウマは自身の両頬をばしんと叩き、気持ちを切り替える。
「皆、今回は『《ジャパニーズ》帰還大作戦』に参加してくれて、本当にありがとう。報酬は俺達のこの世界での全財産になるんだけど、正直それでも心許ない量だけど……」
「大丈夫だ、大きな報酬は前払いで貰えるって話だからな」
ガンツが自身の胸を叩いて答えた。
実は、リュートは事前に報酬の話は大雑把にしていた。
その報酬とは《職業付与》なのだが、スキルの話はせずに「おめぇ達の力を底上げできる報酬」とだけ伝えていた。
「なら話は早い。これから、その報酬の前払いを行う。まず今から話す事は絶対に秘密にしていてくれ。どうか、頼む」
ショウマは皆にそうお願いすると、全員が同意したように頷く。
「では、報酬の内容は私から説明しましょう」
カズキが一歩前に出て、《職業付与》の説明を始めた。
全員に説明が終わると――
「はは、マジか。やっべぇ報酬じゃないか」
ディーが冷や汗を垂らして乾いた笑いをする。
既に職業を付与した《ジャパニーズ》のメンバーとリュート以外は、ディーと同様の反応をしている。
「今以上に強くなれるのは間違いありません。これが、流れ人である私達から贈れる、最大の感謝の気持ちを込めた報酬です。お気に召しませんか?」
「ははは、馬鹿言え。これで気に入らないとか言ったら、俺がそいつをはっ倒してやる!」
「よかったです。さぁ、時間もありませんし、さくさくと職業を付与しましょう。全員順番に並んでくださいね」
こうして、カズキが丁寧に希望の職業を聞き出しながら、長時間かけて全員に職業を付与する事が出来たのだった。
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