第三章 まだ《現界》の誰もが知り得ない、世界の真実
第85話 とある超常的存在の始まりの話
彼は、非常に頭の良い子供だった。
家はとある大手グループ企業を纏める会長の一人息子。
会長に似て、その頭脳は子供の頃から優れており、周囲も驚く程だった。
そんな彼が特殊な性癖に目覚めたのは、八歳の頃だった。
彼の祖父が心臓の病に侵され、のたうち回って死んだのだ。
祖父が苦しみ、そして死ぬまでの一連の流れを見ていた彼は、何故だか興奮をしていた。
祖父が苦しみもがく姿を見て「あぁ、なんて素敵な表情なんだ」と、気持ちが高揚していたのだ。
彼は、苦しんだ末に死んでいく様を見る事に興奮してしまう、非常にサディスティックな性癖を幼いながらに見出してしまったのだ。
そこから二年の月日が経って十歳になった頃、彼はその頭脳を以て社会勉強がてえら株に手を出し、有り得ない程の個人資産を手に入れていた。
しかし彼は、二年経っても祖父の死に顔が忘れられず、どうやったらまたあの素敵な表情を見れるのかをずっと考えていた。
また二年の月日が経って十二歳になった。
既に彼の貯金は億単位を超えていた。
どうやってこの無駄に貯まった金を使おうかと考えていた、その時だった。
彼の頭に、悪魔の計画が思い浮かぶ。
そうだ、この有り余る金を使って、死のゲームを開催すればいいんだ!
彼は早速行動に移す。
誰にも使われていない郊外にある倉庫を丸々買い取り、そこに秘密の地下室を作った。
地下三階まで用意された、とても広い地下室だ。
建築基準法なんて完全に無視している作りだ。
最初注文を頼んだ建築会社は「こんな違法な仕事は出来ない」と断っていたが、金を積んだ途端に掌を返し、喜んで工事を引き受けてくれた。
当然この事は誰にも言わない事を条件とし、破った場合は違約金が発生するとまで脅しておけば、口を紡ぐだろう。
そして十三歳になった頃、ついに地下室が完成した。
非常に待ち遠しくてじっとしていられなかった彼は、地下室が完成するまでの一年の間、自己流でゲームに必要な仕掛けをこつこつと製作していたのだ。
そして地下室が完成してから仕掛けを箱に封入し、業者に頼んで倉庫へ運んでもらった。
この後から、初となる死のゲームが始まった。
まず彼はダークウェブで人攫い等を専門に行う仕事人を雇った。
仕事人にゲームのプレイヤーを攫ってきてもらう為だ。
依頼内容は、そこら辺の半グレを十人攫ってきて欲しい、というものだった。
仕事人は忠実に仕事をこなしたので、仕事料金以上の金を渡した。
仕事人は非常に喜び、今後も贔屓して欲しいと言い残し去っていく。
さて、彼は攫ってきた半グレをどうしたかと言うと――
『君達には仕事をして貰う。そこに置かれている装置を地下室の指定の場所に設置したまえ。時間通りに設置出来たら生きてここから出られる事を約束しよう』
自身が作った仕掛けを、彼等に設置する事を強要したのだ。
半グレ達の首には拙い作りのチョーカー式爆弾が付けられており、遠隔で起爆可能なものだった。
あまりにもコードや基盤が剥き出しの作りだったので、半グレの一人が調子に乗って分解した瞬間、爆発して首が綺麗に吹き飛び死んだ。
半グレの死により、指示に従えば生かしてくれると思った彼等は、指示に従って装置を設置していく。
こうして半グレ達に装置を手伝わせた後、「ご苦労様」と声を掛けた後にスイッチを押し、半グレ達全員の首を爆発させて吹き飛ばした。
その死に顔を見て、彼は何度も
こうして、悪魔のゲームは何度も開催される。
最初は犯罪に手を染めている者達を仕事人に攫ってきてもらっていたが、その内物足りなくなり、平和に暮らしている人達を無差別に攫うように指示を出していた。
目を覆いたくなる程の残酷なゲームを密かに繰り返し、上手く警察にも家族にもばれないように巧妙にアリバイ作りを行っていき、ついに十九歳を迎えた。
彼は自身の誕生日の日に、大掛かりなゲームを仕掛けたのだ。
しかしまさかそのゲームが、自身の最期に繋がるとは予想出来なかっただろう。
彼はとある《勇者》に、殺されたのだった。
その《勇者》は、一緒にゲームを乗り越えようとした仲間の死に直面しても心を折らず、ずっと彼を殺す方法のみを考えていた。
《勇者》はゲームの仕掛けから武器を得た、自分の右腕を犠牲にして。
そして、何とか彼の元に辿り着き、《勇者》は隠し持っていた武器を彼の心臓に突き立てた。
彼は死に行く中、こう思った。
(ああ、絶望から藻掻いて叛逆を成し遂げる。これもまた、素晴らしい)
彼は満たされる思いを抱きながら死んだ。
「……ここは、何処だ?」
この空間こそ《魔界》と呼ばれる場所だと知るのは、もう少し後の話だ。
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さて、ここからは新章スタートです!
リュート君はお休みですが、暫くお付き合いください。
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