第61話 ダンジョンアタック当日 其の二


「次は私達と行こうか。《運命の叛逆者》のリーダーをやっているカシウスだ。位階レベルは四十で、スキルは……《ライフドレイン》《パワードレイン》《スピードドレイン》だ」


 長い金髪を後頭部で纏めており、理知的な印象を抱くカシウスの口から何やら不穏なスキルが出てくる事に、リュートを含めた冒険者達は不審な眼を向ける。

 スキルは聞き覚えがないので、恐らくユニークスキルなのだろう。


「……スキルの効果を教えてくれ」


 この場を仕切るラファエルがカシウスに質問をする。


「……その前に、私達 《運命の叛逆者》は所謂欠陥と言われるスキルを持っている者同士で集まったメンバーだ。私が持っているドレイン系は、敵味方問わずに対象から力を吸い取って、一時的に自分の物にするというスキルだ」


「敵味方、問わずに?」


「そうだ。《ライフドレイン》は生命力を、《パワードレイン》は腕力を、《スピードドレイン》は素早さを吸い取る。ただ永久的ではなく、吸い取られた相手も、吸い取った私も効果は短時間だ」


「……そのスキルは、オレが合図するまで使うなよ?」


「了解した」


 カシウスが使うスキルは、使い方によっては非常に便利だが、味方にも影響を及ぼしかねないものだ。

 敵に使えば非常に便利だが、味方に使われてしまったらとんでもない。

 ましてや、何かをきっかけで裏切る可能性もある。

 ラファエルは、カシウスを警戒する事に決めた。


「次は俺だ。《運命の叛逆者》の副リーダーの《レント》だ。位階レベルは四十で、スキルは《生命力弱化》に《火事場の糞力》だ」


 レントは赤い短髪を立たせており、顔に切り傷の跡が無数にある強面だ。


「また聞き慣れないスキルが出たな。説明をしてもらっていいか?」


 ラファエルがまた首を傾げる。


「《生命力弱化》は文字通り生命力が弱くなっている。つまり、俺は死にやすい。が、瀕死に近ければ近い程、《火事場の糞力》の効果で俺の攻撃力は上がっていく」


「……これまた、まぁ癖が強いスキルだな」


「まあな。だからカシウスは俺に対して《ライフドレイン》を使って、生命力を減らしてもらったりしている」


「……そうか」


《運命の叛逆者》のスキル説明を聞いて、頭が痛くなってきたラファエル。

 よく《超越級》になれたものだと感心する。


「じゃあ最後は私だね。《運命の叛逆者》の《レミ》だよ。位階レベルは四十で、スキルは《魔力総量弱化》、《黒魔法効果超向上》だね」


 銀髪の長い髪を結って、黒いトンガリ帽子とローブを着ている、魔法使いというのが一目でわかる彼女は、前の二人よりかはわかりやすいスキルだった。

 しかし、魔法使いなのに《魔力総量弱化》は非常に手痛い。

 その代わり、黒魔法の威力が上がるのはありがたい。


 そんな彼等を見て、リュートは思う。


(……《運命の叛逆者》と言ってる割にゃ、かんなりだらけてるみてぇだな。運命にボロクソ負けてる気がするだよ)


 パーティ名とは裏腹に、思いっきり運命に負けている彼等の行動は、資料を見ても相当酷かった。

 特にカシウスは、護衛の依頼を出した依頼人に《ライフドレイン》をし、自身の生命力を回復させるなどの暴挙に出たとの噂だった。

 しかし、この《ライフドレイン》は見た目に大きな変化はなく、物的証拠は一切ない。証拠とはなり得ないが、依頼人の「急に体が気怠くなった」という言葉のみだった。

 十中八九 《ライフドレイン》を使用しているのだろうが、確証はない。


(何でこいつら、冒険者クビになってねぇんだか? ……これだっちゅう証拠がなかったのかもしれねぇな)


 実際ギルド側も証拠がないので、《運命の叛逆者》に対して処罰を与える事が出来なかった。

 何かしらスキルを使ったかもしれないが、ドレイン系の効果は短時間。

 もし効果が一生残るのであればギルド側も動けるのだが、短時間で元通りとなると証拠もなくなるので無理だ。

 だからハーレィは、今回のダンジョンアタックを利用して、リュートを含む《超越級》以外の冒険者に《超越級》の監視を依頼したのだろう。

 まぁこちらから何も言わなければ、ハーレィは通常のダンジョンアタックの報酬だけで済ませようとしたみたいだが。


(……今回の依頼の内容によっちゃ、五倍じゃ安すぎる……。安いどころか責任追及させるべよ)


 リュートはより《超越級》に対して不信感と警戒を強め、冷静に行動する事を誓う。


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