第60話 ダンジョンアタック当日 其の一


 各々が腹に一物を抱えた状態で、ついにダンジョンアタック当日になった。

 現在はまだ日が昇り切っていない早朝。

 ダンジョンアタックに参加する冒険者達は、王都正門前に集まっていた。

 彼等の中で一番等級が高い《黄金の道》のリーダーであるラファエルが、この場を仕切っていた。


「全員集まっているようだな。今回ギルド側が馬車を用意してくれたが、到着はまだのようだ。その間に、全員のスキル等を把握したいから自己紹介をしてくれ」


 こうして各々の自己紹介が始まる。

 

「まずはオレ達 《黄金の道》から行かせてもらうぜ。今回隊長をやらせてもらうラファエルだ。武器は片手剣を使わせてもらっている。位階レベルは五十三、スキルは三つで《パワースラッシュ》《俊足》《体力向上》だぜ」


《パワースラッシュ》とは、剣を扱う者が覚える代表的なスキルだ。

 使用者の斬撃を数倍の威力に跳ね上げるというもので、使用者の能力次第では鉄の剣で大きな岩を真っ二つに出来る。

 ありふれたスキルとは言え、非常に汎用性が高いスキルだ。


「同じパーティの副リーダーのゴーシュだ。得物は槍で、位階レベルは五十一。スキルは三つ所持している、《大旋風》《パワースロー》《刺突向上》だ」


《大旋風》は槍をとてつもない速さで回す事で暴風を生み、敵を吹き飛ばすスキル。

《パワースロー》はその名の通り、投擲威力を数倍に跳ね上げる汎用スキル。

《刺突向上》も突き刺す攻撃の威力が高くなるというものだ。

《大旋風》においては移動しながら使用可能で、乱戦でかなり重宝されるスキルだ。


「次はあたしだね! あたしはキンバリー! 位階レベルは五十、スキルは自慢の戦斧で敵を潰す《破裂撃》に《超剛力》と《威嚇》だよ!」


 キンバリーの大きな背と同じ位の巨大な戦斧によって、敵を文字通り叩き潰して破裂させる《破裂撃》は、威力は物凄いが敵の内臓等も飛び出てしまうので、非常に不人気だ。

《超剛力》は元々 《剛力》というスキルがあるのだが、それが進化したものだ。

 文字通り常時人間離れした怪力を使用者に与える《常時発動型》だ。

《威嚇》は大きな声を張り上げる事で、相手をひるませる事が出来る。

 だが、全力の大声を出さないといけないので、喉の関係上打てて一日三回程度だ。


「私は《黄金の道》のサポーターのトリッシュです。位階レベルは五十二でして、《アイテム効果広域化》《身体向上付与》《縮地》です」


 大人しめな印象を持ちながら、雰囲気に似合わない大きな胸を携えているトリッシュは、徹底的なサポータースキルとなっている。

特に《身体向上付与》は、対象の身体能力を上昇させる効果を与えられるといったもの。味方に使って補助に使うもよし、敵に敢えて使って変に向上してしまった身体能力に振り回されて混乱させる目的で使うもよし。

 そしていつでも逃げられるように《縮地》が使えるようになっている。


「そしてあっしですね。あっしはバーツ。位階レベルは四十九でして、見た目通り戦闘能力がありませんが、その代わり斥候をやらせてもらっておりやす。スキルは二つで、《超広範囲索敵能力 レベル2》と《超感覚》でさぁ」


 今回ダンジョンアタックする冒険者の中で一番身長が低いバーツは、非常に斥候としては優秀なスキルを持っている。

《超広範囲索敵能力 レベル2》は、最大レベルは5まで確認されているが、レベル2でも相当強力なスキルだ。

 索敵範囲は約五十メートルミューラと言われており、その精度は小さなゴキブリも探知できる程だ。

 そして《超感覚》は、五感を常人離れした状態まで引き上げる。

 ただ、弱点としては痛覚等の触感も強化される為、使用中にダメージを負うと痛みも数倍になってしまったりしてしまうのだ。ちょっとしたかすり傷でも致命傷レベルの痛みとなり、ショック死してしまう危険性がある。


「次は俺達 《栄光の剣》だ。リーダーのギャロウズだ。うちは全員剣を使うパーティで、位階レベルは四十七。スキルは《疾風剣》《飛剣》《体力向上》だ」


 全員が剣士という一風変わったパーティのリーダー、ギャロウズのスキルはほぼ剣のスキルだ。

《疾風剣》は目にも止まらぬ速さで突進し、すれ違いざまに斬り捨てるスキル。

《飛剣》は斬撃を飛ばす飛び道具だ。

 シンプルではあるが、遠近両方こなせる非常にバランスが取れたスキルとなっている。


「では私だね。私は副リーダーの《アイナ》だよ。位階レベルは四十五で、《連撃》に《疾風突き》を持ってるよ」


 副リーダーのアイナも剣士としてふさわしいスキルを揃えていた。

 ショートカットの茶髪で華奢な印象を受ける彼女は、速さと手数を売りにしたスキルを身に付けていた。

《連撃》は複数の斬撃を目にも止まらぬ速さで見舞うスキル。

《疾風突き》は《疾風剣》の突きバージョンだ。


「次は俺だな! 俺は《ランディ》! パーティの中で唯一魔法が使えて、得意なのは回復魔法と補助魔法だ! 位階レベルは四十九でスキルは、《魔力向上》と《補助効果向上》と《連撃》だな。よろしく!」


 ランディの立ち位置は剣士ではあるが、味方の補助と回復を専門とするメンバーだ。

《魔力向上》は魔法全ての効果や威力が向上し、そこに上乗せして《補助効果向上》が来る。

 補助魔法においては、非常に強力な効果を与えてくれる。


「じゃあ最後に僕が紹介かな。僕は《レイス》って言うよ。位階レベルは五十、スキルは《縮地》と《切れ味向上》に《一撃》だよ、よろしく、女性方」


 見た目からして女性に受けが良さそうな容姿をしているレイスは、速さと一撃に重きを置いたスキルとなっていた。

《縮地》で移動をし、《切れ味向上》と《一撃》というそのひと振りに全ての威力を乗せる斬撃を放つスキルを組み合わせ、一撃の元、敵を屠るのだろう。


 リュートは密かに思った。


(……こいつら、スキルとか聞いてるとすっげぇ強力なんに、何でここまで性根が腐っちまったんだか? よくわからねぇだよ)


 自己紹介とスキル紹介は、まだ続く。










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〇スキルについて

《ステイタス》で得られるスキルは、《ステイタス》を得る前の行動で与えられるものと、得た後の行動で後から付与される二種類が存在する。

 ちなみにスキルは任意で選ぶ事は一切出来ないので、流れ者曰く「ガチャじゃん、そんなの」という訳の分からない言葉を残しているとか。

 スキルは最大三つまで付与され、どのタイミングで付与されるかは不明。

 全ては運と行動次第だ。


 どうやら、スキルを奪い取る敵や位階レベルを吸い取る魔物も存在しているみたいだが、国も冒険者ギルドでも把握していないので、一種の都市伝説的な扱いになっている。

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