第53話 ダンジョンアタック前の打ち合わせ


 その後、ハーレィの部屋を出たダンジョンアタック参加者達は、ギルドに併設された酒場にて集まっていた。


「……超常的存在を討伐する目的のダンジョンアタックは、通常は《超越級》で統一するもんなんだがな」


 頬杖をついて愚痴をこぼすのは、《超越級》の冒険者パーティのリーダーだ。


「仕方ねぇさ、どうやら《超越級》は他の依頼で出払ってるようだしな」


「《ステイタス》持ちの金等級と流れ者はまぁわかる。が、《ステイタス》を持っていない銀等級パーティがいるっていうのが気に入らねぇ」


 愚痴をこぼした冒険者が、更なる悪態を付く。

《鮮血の牙》のリーダーであるウォーバキンは、本当は言い返したいがぐっと堪えている。

 何故なら、彼の愚痴も理解できるからだ。

 そもそも、超常的存在を討伐する際は、《ステイタス》がないと非常に厳しいと言われている。

 超常的存在は魔物とは全く違い、人間と同等の知性を持ち合わせている。

 更に、彼等の力を借りて放つ魔法をポンポン放ってくるのだ。

 そうなってくると、超常的存在と渡り合うには《ステイタス》は必須であり、過去の討伐記録でも犠牲を出して辛勝だったようだ。

 つまり、《ステイタス》を持っていない《鮮血の牙》とリュートは、討伐で足を引っ張る可能性が高いのである。


「……さて、愚痴タイムは終了だぜ。やるからには命ぃ賭けてもらうぜ」


 先程まで愚痴をこぼしていた冒険者が立ち上がる。


「んじゃ、気を取り直して自己紹介と行こうか。オレは《黄金の道》のリーダーの《ラファエル》だ。魔法金ハイミスリル等級パーティで、オレの位階レベルは五十三だ」


 おおっとざわめきが起きる。

 超越級で位階レベルが五十代なのは、相当高い。

 位階レベルには壁が存在しており、丁度五十が境目になっている。

 この壁を超えるのは相当苦労するようで、ラファエルは壁を何とか乗り越えた優秀な冒険者なのだ。


「スキルはパーティ全員が揃った時、改めて紹介した方がいいと思うから、今は割愛するけど戦闘タイプのスキルを持っているぜ。よろしくな」


 ラファエルは着席すると、別の冒険者が立ち上がる。


「次は俺だな。《栄光の剣》のリーダーを務めている《ギャロウズ》だ。魔法銅ローミスリル等級で位階レベルは四十七だ。俺自身のスキルは戦闘タイプだが、パーティメンバーはどの戦局でも対応できるバランスタイプだな。よろしく」


「私も紹介しておくか。《運命の叛逆者》のリーダー、《カシウス》だ。魔法銅ローミスリル等級で位階レベルは四十である。私のスキルは――少しここでは言いにくいものだが、役に立つものだ」


「《超越級》ではうちが最後かな。《伝説の存在》っていうなかなか痛いパーティ名のリーダーをやってる《ケイン》だよ。《超越級》では一番下の白金等級で、位階レベルは三十七だね。スキルは戦闘タイプぶっぱだから、討伐向きだね。よろしく!」


《超越級》の冒険者の自己紹介が終わった。

 

「どうやらオレが一番等級が上だから、わりぃが《黄金の道》が今回の依頼を仕切らせてもらうぜ。んじゃ、《超越級》以外の冒険者も自己紹介頼むわ」


 ラファエルが立ち上がり、この場を仕切り始める。

 基本的に冒険者の中では、等級が高いものが自動的に隊長の役目を背負う。

《超越級》は低い順から白金等級、魔法銅ローミスリル等級、魔法銀ミスリル等級、魔法金ハイミスリル等級、金剛宝石アダマンタイト等級、そして最上位の伝説合金オリハルコン等級となっている為、今回はラファエルが隊長である。


 そして、《超越級》以外の冒険者の自己紹介になった。

 ハリーはあれから修行を重ね、位階レベルが十二に上がった。

 また、新たなスキルが発現し、より攻撃に磨きがかかったのだ。

 ウォーバキンはもうちょっとで目標資金に手が届くので、《ステイタス》持ちになる一歩手前。

 ショウマはあの地獄の集落のショックから多少の間が空いてしまったが、仲良くなったリュートとウォーバキンとハリーのおかげで、何とか遅れを取り戻し、位階レベルは十八にまで上がった。

 最後にリュートは体力が向上しており、戦闘面においても走りながら矢を射る技術を習得しており、命中精度は発展途上ながらも胴体なら確実に命中させられるようになった。

 現在は走りながらでも四肢や頭部等、ピンポイントな射撃が可能に出来るように猛特訓中だ。


《超越級》以外の冒険者の自己紹介が終わるが、やはり《超越級》の面々は不安が隠せないようだった。

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