178 To Doリスト
Aランクダンジョン周遊の目的は結構ある。
語り出すととめどなくなりそうなので、自分用に作ったTo Doリストを見てみよう。
<Aランクダンジョン周遊・To Doリスト>
① 【君だけの世界】の検証
② 「逃げる」のスキルレベル4
③ 「勇者」の二つ目のアビリティ
④ 政府からの監視対策
⑤ 人を穏便に無力化する方法
⑥ ミニスライムを育てる
⑦ シークレットモンスター探し
⑧ 未知の特殊条件探し
⑨ 同種族モンスター400体連続撃破によるモンスターのスキル取得
⑩ 金策
⑪ 「簒奪者」の技能でレアアイテム収集
⑫ 「魔王」の技能で魔法開発
⑬ ブレインイーター対策
⑭ 長寿のエルフの精神的摩耗を防ぐ方法
⑮ ギルドへの貢献
⑯ 人生を楽しむ(努力をする)
①【君だけの世界】についてはもういいだろう。
次の②「逃げる」スキルレベル4だが、実はこれはとある理由から先送りすることに決めている。
「逃げる」がスキルレベル3になったことにより、「(戦闘から)逃げる」は使いやすくなった。
タイマーが短くなって、逃げエリアが広くなったからな。
スキルレベル3で追加された能力「困難から逃げる」は、普段の探索では使う機会がないだろう。
因果を遡行してまでやり直すような「困難」にそんなに出くわすようでは困るからな。
で、問題含みなのが、「現実から逃げる」なんだよな。
Skill──────────────────
S.Lv2「現実から逃げる」
使用条件:
(5-S.Lv)秒間、現実から逃れたいと強く念じ続ける。
特記事項:
「現実から逃げる」で入ることができる異空間では、自分の意思によって現実と異空間の時の流れの相対速度を変化させることができる。変化させられる幅は(0~S.Lv)倍まで。
元の現実に戻る意思を失った場合には、異空間から出ることができなくなる。
連続して使用するほどに元の現実に戻りたくなくなる。
────────────────────
「逃げる」のスキルレベルが上がったことで、「現実から逃げる」の発動に要する時間は、3秒から2秒に短縮された。
発動には現実から逃げたいとかなり強く思い込む必要があるから、時間の短縮はいざというときには大きいだろう。
だが、「現実から逃げる」にはデメリットもある。
「連続して使用するほどに元の現実に戻りたくなくなる」。
過去に使った感覚からすれば、二度目まではなんとか、三度目は相当キツいだろう、という感触だ。
今は発動が2秒だからまだいいが、「逃げる」のスキルレベルが4になったら、「現実から逃げる」はわずか1秒で発動するようになる。
以前、芹香の不意の告白に動揺して「現実から逃げる」が暴発したことがあったよな。
3秒でも暴発したんだ。
多少は扱いに慣れてきたとはいえ、発動猶予が1秒になるのはさすがに怖い。
……ていうか、もし「逃げる」のスキルレベルを5にまで上げたら、「現実から逃げる」はどうなるんだろうな?
一瞬たりとも現実から逃げたいと思ってはならない――そんな状態になってしまうなら、「逃げる」のスキルレベルを5に上げるのは危険すぎる。
いや、一瞬の猶予が残されてるならまだマシだ。
0秒が文字通りに0秒なら、現実から逃げたいと0秒思う――つまり、何も思わなくても発動してしまう、なんて可能性もあるんだよな。
そうなると、「逃げる」のスキルレベルを5に上げたその瞬間、「現実から逃げる」が発動して亜空間へ→亜空間から現実に戻る→即座に「現実から逃げる」が発動して亜空間へ→亜空間から現実に戻る→即座に「現実から逃げる」が発動して亜空間へ→……という死のループが発生する。
ループ一回ごとに「現実に戻りたくなくなる」のだから、いずれは心がぽっきり折れて、俺は亜空間に永遠にひきこもるハメになるだろう。
「逃げる」の追加能力は「現実から逃げる」「困難から逃げる」と順調にスケールアップしてるから、スキルレベル4、スキルレベル5の能力も強力なはずだ。
でも、スキルレベルを上げること自体に危険が伴うというのは予想外だった。
とまあ、そんなわけで当面は「逃げる」のスキルレベルを上げるつもりはない。
5まで上げるのはもちろん、4にするのも既に怖いからな。
まあ、怖い話はここまでにして、to doリストに戻ろうか。
リストの③、「勇者」の二つ目のアビリティ。
これは「【―未習得―】」となってる例のやつで、ユニークボーナスには「・超常的な存在から授かる特殊な系統の魔法をまだ習得していない/error!ジョブ「勇者」の定義を満たしていません」という項目もある。
要は、「超常的な存在」を見つけて「特殊な系統の魔法」を覚えろってことだよな。
「超常的な存在」と聞いて最初に思い浮かぶのは神様だが……どうなんだろうな?
今度ダンジョン神社に出たら訊いてみよう。
もし神様ではダメとなると、ちょっと他の候補は思いつかない。
次。
④。
政府からの監視対策。
実家が監視されてたのは前に話した通りだが、今の俺にも監視がついてる。
うっとうしいとは思うが、かといって手を出すわけにもいかない。
素性くらいは把握しておくべきだろうか?
実家には一応、「ダンジョンマスター」で作成したミニスライムのアトロポスを置いてきた。
まあ、監視者がこの国の政府なら、いきなり危害を加えてくることはないと思うのだが。
俺からすれば監視だが、彼らからすれば護衛のつもりなのかもしれないしな。
ただ、他国の諜報員や工作員にちょっかいをかけられる、という可能性もないとはいえない。
いきなり襲われたとしても負けるとは思わないが、特殊な固有スキルなんかを使われると厄介だよな。
さいわい、「簒奪者」の技能やユニークボーナスにより、俺の索敵能力はかなり高いと言えるはずだ。
ひょっとしたら現時点で並ぶものがいないレベルなんじゃないかとも思う。
でも、どんな抜け道があるかわからないからな。
対策となるようなスキルを増やせると安心だ。
敵意を自動的に感知するとか、指定した対象をリモートで監視できるみたいなスキルがあれば理想だな。
何かとてつもなくひねくれた特殊条件を探り当てる必要がありそうだ。
その次の⑤、「人を穏便に無力化する方法」は、④の監視対策とも関連してる。
ただ、その必要性を痛感したのは昨日の出来事があったからだ。
昨日はお隣の弟君を勇者のユニークボーナスでノックアウトしたわけだが、ちょっと荒っぽすぎる方法だからな。
からまれるたびに同じ方法で撃退してたら、お姉さんが心労で倒れてしまうだろう。
それに、この方法でノックアウトするためには対象のHPを一撃で0にする必要もある。
耐久力に優れた探索者が相手だったら、ただダメージを与えるだけで終わるかもしれないんだよな。
想像をたくましくすれば、固有スキルや未知のスキルでダメージを一律半減するだとか、装備アイテムで一回だけダメージを無効化するだとかいった手段を持ってる探索者だっているかもしれない。
ノックアウト以外の方法では、魔剣士や簒奪者の技能による状態異常攻撃、魔王の状態異常魔法などがあるにはあるが、メジャーな状態異常はアクセサリ等で対策されてることもある。
そうでなくても、これらの状態異常攻撃・状態異常魔法は、今の俺の魔力と幸運を持ってしても、百発百中とはいかないのだ。
具体的なアイデアは今のところないが、モンスターの持つスキルやレアアイテムが鍵になるかもしれないな。
⑥の「ミニスライムを育てる」は、さほど優先順位は高くない。
レベルアップできない身体になった俺の代わりに育ててみるのもおもしろそうだと思っただけだ。
ちなみに今も、俺の左肩の上にラケシスが乗っかってる。
⑦、「シークレットモンスター探し」。
ピーキーな性能の奴が多いシークレットモンスターだが、強力な戦力であることに変わりはない。
【ダンジョン管理】で作ったミニスライムと違い、召喚できる中の最高レベルが自動的に適用されるのも便利なところだ。
ただ、今回のAランクダンジョン周遊でそんなに都合よく見つけられるかは疑問だな。
シークレットモンスターの出現条件は不明だが、過去の経験からすると傍から見て無謀すれすれの探索をしてるときに出くわしやすい印象だ。
世間的にシークレットモンスターという存在が知られてないらしいことから考えても、そう滅多やたらに遭遇できるものではないだろう。
出会えればラッキー、くらいに思っておくべきか。
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