171 枯渇解消


《「葛沢くずさわ南ダンジョン」のダンジョンステータスを表示します。》



 「天の声」に続いて、俺の視界にウインドウがポップアップする。



Dungeon────────────────

葛沢南ダンジョン ランクC(枯渇中)

管理者 蔵式悠人


現在DP -201742

直近14日の平均自然産生DP(日) 1116.75

枯渇解消までの推定残り時間:197日6時間54分44秒


ダンジョンの管理機能:停止中

DPへのリソース変換:可能

────────────────────



《DPが不足しているため、ダンジョンの管理機能を使用することができません。》



「うーん……」


 思ったより情報が少ないな。


「ひょっとして枯渇してるせいか?」


 枯渇によってダンジョンの管理機能がダウンしてるせいで、表示される情報が少ないのかもしれない。


「DP……まあ、ダンジョンポイントだよな、常識的に考えて」


 つぶやきながらDPの項目を凝視すると、



Dungeon────────────────

DP:Dungeon Point、ダンジョンポイント

ダンジョンを運営するために必要となるポイント。

現在存在するダンジョンからは、ダンジョンの活動に応じてDPが自然に産生される。

また、DPは、MP、マナコイン、SP、アイテム、モンスターその他の有効なリソースを変換することで得ることができる。

────────────────────



「……そういう仕組みか」


 MP、マナコイン、SPね。

 要は手持ちのリソースをDPに変換できるってことだよな。


 と、俺が情報の整理をしてると、



《秘匿情報の公開条件を満たしていることを確認。》


Secret──────────────────

「DP」秘匿情報の公開条件:「世界の狭間に存在/非存在する  に接触したことがある」

報酬:「DP」追加詳細情報の公開。以下の情報が公開されます。

────────────────────

info──────────────────

DPは、  を変換することでも得ることができる。

────────────────────



「ああ、そりゃそうか」


 ダンジョンを作成するときには  ブランクが必要なわけだからな。

 その  ブランクをDPに変換できるのは自然だろう。


「DPへのリソース変換はできるんだよな?」



《手持ちのリソースをDPに変換しますか?》



「ああ」



《変換するリソースを指定してください。》



「リソース……SPかマナコインかMPかアイテム、だったな」


 モンスターも挙げられてたが、貴重なシークレットモンスターをDPに変えるつもりはない。

 消費しても取り返しがつくのは残りの四項目に限られる。


 じゃあ、その四つの中で、俺がいちばん溜め込んでるのは何か?


 それは言うまでもなく、


「SPで」



《SPからDPへの変換レートは現在1:1となっています。何ポイントのSPをDPに変換しますか?》



「一対一か」


 それなら話はわかりやすい。


「今のこのダンジョンのDPのマイナス分ちょうど――201742だ」


 SP20万は世間的にはとんでもない額だが、今の俺にとってはそこまで痛い出費じゃない。

 【ダンジョン管理】の仕様を把握するほうが優先順位として上だろう。



《蔵式悠人の所有するSP201742をDP201742に変換します。よろしいですか?》



「ああ、やってくれ」



《「葛沢南ダンジョン」の現在DPが0になりました。》


《「葛沢南ダンジョン」の枯渇状態が解消されました。》


《「葛沢南ダンジョン」の管理機能が使用可能になりました。》



Dungeon────────────────

ダンジョン管理メニュー

・フロア管理

  既存フロアの状態(1)

  既存フロアの拡張

  新規フロアの生成

・モンスター管理

  配置済みモンスターの状態(0)

  モンスターの生成

  モンスターの配置

  モンスターの自然発生【現在の状態:ON】

 

現在DP 0

────────────────────



「おお! いろいろできるんだな!」


 とりあえず「既存フロアの状態」を選んでみる。

 ホログラフのような半透明の立体映像が浮かび上がった。

 ジョブ「ダンジョンマスター」のユニークボーナスで見られるのと同じものだ。


 次に、「配置済みモンスターの状態」をポチッと。


 ……変化がないな。


「あ、そうか。今はモンスターがいないんだったな」


 メニューにも「配置済みモンスターの状態(0)」とある。

 いないものは表示されようがないわけだ。


「そうだな……モンスターの自然発生ってのは、OFFにしといたほうがよさそうか」


 俺の管理するダンジョンにモンスターが自然発生し、ダンジョンに入り込んだ探索者が死んだりしたら、俺の管理責任が問われそうだよな。

 まかり間違ってフラッドなんて発生しようものなら大変なことになる。

 ……まあ、このダンジョンが俺の管理下にあることを知る手段なんて多分ないとは思うのだが。


「とはいえ、モンスターとダンジョンの関係は気になるとこだ」


 管理者のいない他のダンジョンでは、おそらく、この「モンスターの自然発生」によってモンスターが自動的に補充されてるんだろう。

 補充にはDPがかかり、そのDPは自然産生するらしい。


 おそらくだが、探索者がモンスターを倒すと、経験値やSPやマナコインといった形でDPを奪われるんじゃないか?

 実際、このダンジョンはそうして枯渇させられたわけだしな。


 逆に、ダンジョン内で探索者が死ぬと、そこから何らかの形でリソースとしてのDPが回収されるんだろう。


 以前はこのダンジョンをうっかり枯渇させてしまったが、今後Aランクダンジョンを攻略する時に、どこまでやったら枯渇するのか、ある程度予想できるようにしておきたいよな。


 となると、


「――作ってみるか。モンスターを」

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