103 かけら返せ

 エメラルドの光は、無数の小さな爆発を繰り返しながら周囲の空隙ブランクを喰っていく。

 「草薙剣」が刻み込んだ斬線は、既にエメラルドの色を失いつつあった。

 そこにあるのは、なにもないただの空間だ。

 もう、「ある」でも「ない」でもないとかいう謎空間じゃない。

 単にものが存在しないだけの空間が、そこには確かに存在している。

 見た目は星のない宇宙空間といった感じだが、認識をすり抜けられることはなくなった。


『おお……見ろ、悠人! シュプレフニルの「繊維」が滅んでいくぞ!』


 クダーヴェが翼の先で周囲を指す。


 俺の一撃によってこの世界の一部となった空間は、「穴」を覆うように円盤状に広がっている。

 「穴」を見えない蓋で塞いだような感じだな。

 

 その結果、シュプレフニルの「繊維」の多くが「穴」との接続を失った。

 根本で引きちぎられた「繊維」の切れ端が、力なく空間を漂っている。

 切れ端といっても、それぞれがクダーヴェを軽く上回る大きさなんだけどな。

 エネルギーの供給がなくなった切れ端は、糸がほつれるようにして消えていく。

 クダーヴェから聞いてたとおり、「繊維」は異世界にいるシュプレフニル本体から独立して動くことはできないようだ。


「終わった……のか?」


『クハハハハ! 俺様たちの大勝利だな!』


「うわっ、暴れるなって……落ちるだろ!」


『小生意気なシュプレフニルめに一泡吹かせてやったのだ! こんなに痛快なことはない!』


 と、はしゃぐクダーヴェ。

 その様子を見て、ピンときた。


 ……隕石と海、なんて喩えをしてたが、ひょっとしてあっちのほうが格上だったんじゃないか?


 本当に勝算があって挑んだんだろうな……?

 まあ、言わないでおいてやろう。

 十分力を尽くしてくれたからな。


「ダンジョンのほうはどうなったんだ?」


 上を見ると、ダンジョンの底側はまだ黒い。

 前ほどの重圧は感じないが、それでもAランクダンジョンのレベルじゃない。


『世界に「穴」を空けた時点で、崩壊のエネルギーの大半は世界の狭間に流れたはずだ。その「穴」もふさがった以上、地上を呑み込むほどの力は残っておるまい』


 クダーヴェのセリフにかぶせるように、「天の声」が聞こえてきた。



《勇敢な探索者の介入により、奥多摩湖ダンジョンのダンジョン崩壊が阻止されました――!》



 今回の「天の声」には、なんとエコーがかかっていた。

 れました、ました、した……

 たっぷり十秒くらいは反響したな。



《奥多摩湖ダンジョン崩壊による緊急避難勧告は現時点をもってすべて取り消します。》



「……なんとかなったみたいだな」


 俺はクダーヴェの頭の上にへたりこむ。

 いくら探索者がダンジョン探索に必要なスタミナをもつとはいえ、今日は本当に働き詰めだったからな。

 久留里城ダンジョンの攻略、天狗峯神社でのクローヴィス緒戦、奥多摩湖ダンジョンの踏破、クローヴィスからのはるかさん奪還戦、崩壊した奥多摩湖ダンジョンへの突入と、シュプレフニルの侵入阻止。

 Aランクダンジョンソロ踏破が霞んで見えるほどのボスラッシュだ。

 ……Aランクダンジョンのソロ踏破だって、Sランク探索者でも難しい偉業のはずなんだけどな。


 ……さて、苦労のあとはお楽しみだ。

 今回はどんなことになるんだろうな?

 あんまりスキルが取れすぎてもステータスがごちゃついて困るなー(棒) こんなにスキルがあっても使い切れないぜ! ……なんてな。


 さあ! 期待の一個目だ!



《特殊条件の達成を確認。スキル「ダンジョン生成」を手に入れました。》


Congratulations !!! ────────────

特殊条件達成:「ダンジョン崩壊を阻止する。」

報酬:スキル「ダンジョン生成」

────────────────────

Skill──────────────────

ダンジョン生成1

ダンジョンを生成する。生成には  が必要。生成できるダンジョンの規模はS.Lvと消費した  の量によって決まる。

────────────────────



「うおっ!?」


 と、手に入ったスキルを見て驚く俺。


 いや、ダンジョンの崩壊阻止に特殊条件があるのは予想通りではあった。

 でもまさか、ダンジョンを造れるスキルが手に入るとは思わなかった。

 使うのに空隙ブランクが必要だってのは厄介だけどな。

 説明文にまで空隙ブランクが侵入してるせいで、読むのに無駄に時間がかかった。


「よし、ここからはボーナスタイムだな」


 以前光が丘公園ダンジョンのフラッドを収めたときには、ダンジョンの踏破ボーナスはなかったんだよな。

 フラッドが起こるとダンジョンのランクが一時的に上がるが、一時的に上がったランクでは「○ランク以上のダンジョンを踏破する」系の特殊条件は満たせない。

 奥多摩湖ダンジョンは元々Aランク。その前に同じAランクの久留里城ダンジョンを踏破してしまってるので、今回はダンジョンランクがらみの特殊条件はないはずだ。

 っていうか、そもそも今回、俺は奥多摩湖ダンジョンを踏破はしてないんだよな。

 奥多摩湖ダンジョンの本来のボスであるミヅチはクローヴィスが倒して儀式魔法に利用してしまったし。

 崩壊後のダンジョンにもひょっとしたらボスがいたのかもしれないが、スルーして「穴」のほうを埋めてしまったからな。

 ダンジョンを攻略したというより、力づくで壊したと言ったほうが近いだろう。

 このやりかたではいつもの踏破系ボーナスは得られないはずだ。


 ……とはいえ、これだけの事態を収拾したんだ。

 他の条件を満たせてもよさそうだろ?


 俺は期待に逸りながら「天の声」の続きを待つ。


 だが、



《スキルシステムに深刻なエラーが発生しました。》



 「天の声」は予想外のことを告げてきた。


「えっ?」



《スキルシステムの問題を特定しています......》


《エラーの原因を特定。スキル「スキルバースト」の想定外の過剰重複使用によるスキルシステムの部分的なクラッシュと判明。》


《エラーの解消方法を検討しています......》



 と言ったきり、しばし沈黙する「天の声」。


 ……なんだか嫌な予感がするな。


 数秒ほど経ったところで、



《スキルシステム保全のため、スキル「スキルバースト」をスキルライブラリから抹消します。》



 「天の声」がいきなりそんなことを言い出した。


「えっ、ちょっと待てよ!?」


 「スキルバースト」を消すってことだよな!?


 そんなのありか!?

 苦心惨憺の末にたどり着いた最強コンボの核なんだぞ!?


 が、もちろん「天の声」は俺の反応なんかに頓着しない。



《スキル「スキルバースト」の所有者を検索......》


《スキル「スキルバースト」の所有者は全世界で 1 名です。》


《スキル抹消による影響は限定的と判断。スキル抹消シーケンスを起動します。》



「おおいっ!? 所有者が少ないからってそんな勝手な……!」


 思わず抗議の声を上げる俺。


 だって、そうだろ。

 「スキルバースト」はもともと特殊条件のボーナスで手に入れたスキルだ。

 しかも、デメリットの削除に「賢者の石のかけら」も使ってる。

 このスキルを使って世界の危機を解消したってのに、その結果が「おまえのスキル強すぎだから削除するわ」では報われないにもほどがある。

 これがオンラインゲームだったら大炎上不可避の対応だ。


 そんな俺の抗議が耳に届いたわけではないだろうが、



《スキル「スキルバースト」の所有者がスキルの抹消によりこうむる逸失利益を計算します......》



 と言って、再び沈黙する「天の声」。



《計算完了。スキル抹消による逸失利益を補填するため、計算された逸失利益に基づき、所有者に補償の選択肢を提示します。》


《システム側の都合によるスキル「スキルバースト」の抹消に伴い、当該スキルの所有者である あなた には、以下のいずれかの補償を受け取る権利が発生しました。》


《① 経験値による補償。経験値30,450,973,441を受け取る。》


《② SPによる補償。SP80,443,251を受け取る。》



「……詫び料ってことか」


 スキル削除して後は知りません、なんて無責任なことは言わないらしい。


 もちろん、答えは決まってる。


「SPでくれ」



《所有スキルの抹消に伴う補償として、 あなた はSP80,443,251を受け取りました。》



 ステータスをチェックすると、たしかにSPが鬼のように増えていた。

 そして、「スキルバースト」のスキルがなくなってる。

 他にもバーストで失ったスキルの表記がなくなったせいで、スキル欄がちょっと寂しい(当社比)感じになってるな。


 これだけやってSP8000万ってのは、正直割に合うかどうか微妙なところだ。

 使ってしまった「かけら」は戻ってこないし……。


 ……次に「かけら」が手に入るのはいつだろうな。


 下手をすれば、Sランクダンジョンの初踏破までお預けだ。

 だが、Sランクダンジョンを完全踏破した探索者はいないとされている。

 Sランク探索者という呼び方は、「Sランクダンジョンに挑戦中の探索者」という意味合いから、「Sランクダンジョンの中ボスを倒したことがある探索者」という意味合いまで、あいまいに使われているのが現状だ。

 これがAランク(以下の)探索者なら、「Aランク(以下の)ダンジョンを踏破した探索者」という以外の意味はないんだけどな。

 Sランクダンジョンを完全踏破した、真の意味での「Sランク探索者」は、世界に一人もいないということだ。


「『かけら』とSP8000万じゃ『かけら』のほうが貴重だったんだけどな……」


 それでもまあ、ありがたいことに変わりはない。

 一度失ったスキルを揃え直しても十分お釣りが来る額だからな。


「まあ、ぶっ壊れスキルだってことは否定できないか……」


 コストの安いスキルを毎回「スキルバースト」して使えば、実質的にSPの消費だけで毎回スキルの効果が100倍だ。

 「切り札化」までつければ200倍……いや、「切り札化」を5まで上げきれば250倍まで持っていける。

 たとえば、取得SP100の「剣技」を5まで上げるのに必要なSPは合計34100。

 レベル1縛りの俺がこの先高レベルモンスターと戦うことを想定すると、レベル差補正でその程度のSPはわりと簡単に稼げる計算だ。

 スキルコンボで複数のスキルを重ねれば、「スキルバースト」の効果は等比級数的に膨らんでいく。


 その有用性を考えれば、補償として与えられたSP8000万は過小評価に思えるよな。

 ……まあ、レベル1で格上補正をバリバリに利かせてSPを爆稼ぎしてるのは、世界でも(たぶん)俺だけだ。

 俺が普通の探索者だったなら、8000万というSPは十分すぎる補償だっただろう。

 普通の探索者が「スキルバースト」を取得できたとしても、使う機会は滅多になさそうだしな。

 問題なのは、俺が普通の探索者ではないってことなんだが。


「インフレでシステムがクラッシュするから削除ってのはわからなくはないけどな……」


 「スキルバースト」を使うにしても、普通は、よほどのピンチのときに、スキルをひとつだけ選んでやむなく使うものだろう。

 「スキルバースト」の対象になったスキルは再取得できなくなるんだからな。


 「スキルバースト」に「賢者の石のかけら」を使うのはシステムの想定外だったってことか?

 でも、そこまで織り込んでスキルを設定してほしいもんだよな。

 「天の声」は全知全能ってわけじゃなかったんだろうか。


 だが、俺にとっての悲報はまだ続く。



《システムクラッシュの再発防止のため、システムの脆弱性を利用してスキルを重複使用する裏技グリッチに制限を設定します。》



「えっ、それって、まさか……」



裏技グリッチ「S474-A92Z」の使用状況を検索......》


《「S474-A92Z」の常習使用者による呼称から、当該裏技グリッチを「スキルコンボ」と命名します。》



「……それ、絶対俺のことだよな!?」


 常習使用者って。

 チーターみたいに言わないでくれよ。



裏技グリッチ「スキルコンボ」の使用者を検索......》


《「スキルコンボ」の使用者は、全世界で 791 名です。》



「……こっちはそこそこいたんだな」


 まあ、発見が難しいわけじゃないもんな。

 一般的には、効果の重複するスキルを複数取るのはSPの無駄だとされている。

 でも、それを知らずに「剣技」と「剣術」を両方取ってしまい、いっぺんに使ってみようとしたら偶然にもうまくいった……なんて例はありそうだ。


 とはいえ、その後二つ(以上)のスキルにSPを振り続けられるかというと微妙だろう。

 「剣技5」「剣術5」なんてやつはまずいなくて、「剣技4」「剣術1」みたいな感じで補助的に運用してるんじゃないだろうか。



裏技グリッチ「スキルコンボ」への対策を検討しています......》


《「スキルコンボ」の全面禁止は探索者による創意工夫を阻む弊害あり。次善策として、「スキルコンボ」に上限を設定します。》


裏技グリッチ「スキルコンボ」によるスキルの重複使用は 2 つまでとします。》


《ただし、これには事前のバフ効果や、事後的に追加効果を発揮するスキルは含まれません。》



「ああ、なるほど……『剣技』『剣術』みたいなコンボは二つ重ねまで。でも、『身体強化魔法』で事前にバフをかけたり、『強奪』や『ノックアウト』みたいな追加効果系のスキルはコンボとしてはカウントしないってことか」


 それでも俺にとってはかなりの弱体化ナーフだよな。

 しかもそのナーフがほとんど俺を狙い撃ちにしてるってのがひどい。

 これがゲームだったら運営にブチ切れてやめてるとこだ。


 でも、さっきまでの流れだと、



裏技グリッチ「スキルコンボ」への対策によって逸失利益が生じる探索者を検索します......》



「まあ、救済措置はあるよな」


 またSPか?

 でも、いくらSPをもらってもスキルコンボ規制の影響は打ち消せない。

 いくつスキルがあっても同時に二つまでしか相乗できないってことだからな。


 ボーナスタイムだと思ったのに、蓋を開けてみればまさかの弱体化ナーフタイム。

 しかも、ほぼほぼ俺だけを狙い撃ち。


 ……ひどすぎんだろ、これ。


 苦い顔を通り越して真顔になってる自覚がある。


裏技グリッチ「スキルコンボ」への対策により逸失利益が生じる探索者は、全世界で 23 名です。》



「へえ、俺以外にも『スキルコンボ』を活用してるやつがいたんだな」


 「天の声」による裏技グリッチへの対策は「スキルコンボを二段までにする」というものだ。

 この対策で損をする23人の探索者は、スキルコンボを三段以上重ねて使ってたってことなんだろう。

 人によっては切り札だったかもしれないよな。

 その切り札を失ったばかりか、この「天の声」によって「スキルコンボ」の存在が周知されてしまった。

 「天の声」は内容によって届く範囲が変わるが、今回のこれはどこまで届いてるんだろうな。



裏技グリッチへの対策により逸失利益が生じた探索者には、新スキル「スキルコンボ」が与えられます。「スキルコンボ」の初期スキルレベルは、算定された逸失利益の額に基づいて決定されます。》



 そのアナウンスに続いて、



《スキル「スキルコンボ5」を取得しました。》



 これは俺だけに聞こえる声だろう。

 さっそくDGPを開いてみると、


Skill──────────────────

スキルコンボ5

物理攻撃スキルの重複使用可能数がS.Lv個増加する。ただし、重ねたスキルの効果は本来の効果より減衰する。スキルをn個重ねた場合、各スキルの効果は発動順に1/2の(n-1)乗倍となる。

「スキルコンボ」非使用時の物理攻撃スキルの重複使用可能数は2。

────────────────────


 ……となっていた。


「最初からスキルレベル5なのは温情か」


 通常の重複使用可能数2+5で、俺のスキルコンボ上限は7ってことになる。

 「切り札化」をこの「スキルコンボ」につけて増やすこともできそうだが、7以上となると重複しうるスキルの候補を探すだけでも大変だ。

 だから、数の制限の影響は思ったほどではなかった。


 だが、


「……効果減衰が痛すぎるな」


 「スキルコンボ」で7つのスキルを重複使用したとしよう。

 二つ目のスキルは1/2、三つ目のスキルは1/4、四つ目のスキルは1/8、五つ目のスキルは1/16、六つ目のスキルは1/32、七つ目になると実に1/64にまで効果が落ちる。


 たとえば、七つ目のスキルが「渾身の一撃5」だったとする。

 「次の物理攻撃の威力が(S.Lv×20)%上昇する」という効果だから、以前ならスキルレベル5で攻撃力が+100%になっていた。

 六段目までのコンボの威力をさらに2倍にできたわけだ。

 それが、この仕様変更によって、効果が+100%の1/64……およそ+1.5%にまで落ちてしまう。

 前なら2倍になってた攻撃が、1.015倍にしかならないってことだ。

 しかも、同じようなことが六つ目以前のすべてのスキルに当てはまる。

 スキルコンボ全体の威力低下は壊滅的だ。


 今の「天の声」でスキルコンボという現象が知られてしまったことも痛いよな。

 「スキルコンボ」のスキルがなくても、「剣技」「剣術」みたいな二段コンボは練習すれば誰にでもできる。

 あとから乗せたほうのスキルの効果は半分になるが、それでも便利な小技だろう。

 使い手はまちがいなく増えるはずだ。


 スキルコンボが正式な「スキル」になったことも、スキルコンボの希少性を薄める結果になりそうだ。

 俺の強みは豊富なスキルとその組み合わせによる高威力の「わからん殺し」だと思うんだが、その一角を「天の声」に暴かれたようなものだ。


 もうしばらく待ってみるが、「天の声」に続きはなかった。


「マジか……これで終わりなのかよ?」


 今回のボーナスタイムは散々だ。


 いや、これをボーナスタイムと呼んでいいものか?


 たしかに、最初の「ダンジョン生成」だけは強力なスキルだった。

 でも、「ダンジョン生成」には空隙ブランクが必要で、いつでも使えるようなスキルじゃない。

 というか、この先使える機会があるんだろうかってくらい使い所が限られそうなスキルだよな。


 「スキルコンボ」のスキルは、これまで当然のようにできてことにキャップをはめるだけのものでしかない。

 スキルを取得したといえば聞こえはいいが、実質的には弱体化だ。


 「スキルバースト」消滅の補償としてもらったSP8000万も、俺なら時間さえかければ十分稼げる程度の額でしかない。

 しかも、スキルコンボが弱体化した結果、「スキルバースト」で失ったスキルを再取得するうまみも薄くなった。

 バーストさせたスキルは、どれもスキルコンボに組み込むことで初めて生きるスキルだったからな。

 スキルコンボの威力が減衰するなら、「投げナイフ」みたいなスキルをわざわざ取り直す意味はあまりない。


 スキルシナジー――魔法にバフ等のスキルを重ねがけするテクニックのほうは規制されずに済んでいるが、武器系スキル活用の屋台骨であるスキルコンボがなんちゃって「スキルコンボ」に成り下がったのは痛すぎる。


 「スキルコンボ」に「かけら」を使ってデメリットを削除する?

 でも、その「かけら」が今は品切れだ。


 それに、もし「かけら」があったとしても、「スキルコンボ」に使うのは微妙だろう。

 「かけら」で「スキルコンボ」のデメリットを削除し、在りし日のスキルコンボを再現することはできる。

 だがそのばあい、システムがまたクラッシュする可能性がある。


 そうなったら……今度は「スキルコンボ」が抹消されるんじゃないか?

 「スキルバースト」の抹消でも、使った「かけら」は戻ってこなかった。

 同じパターンで「かけら」を無駄にするのは避けたいところだ。


「……これは想定外だな」


 俺は思わず、険しい顔でつぶやいていた。

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