81 今回のリザルト(Aランク)承前 

 「鑑定」系のスキルは出揃ったが、今回はAランクダンジョンの初回踏破。

 そう簡単には終わらない。



《特殊条件の達成を確認。スキル「ダンジョントラベル」を手に入れました。》


Congratulations !!! ────────────

特殊条件達成:「Aランク以上のダンジョンをレベル5以下かつソロで踏破する」(初回のみ)

報酬:スキル「ダンジョントラベル」

────────────────────

Skill──────────────────

ダンジョントラベル

踏破したことがあるダンジョンの入口のポータルから、別の踏破済みのダンジョンの入口へと転移することができる。転移には距離に応じたマナコインが必要。

────────────────────



「うおっ、すごいな!」


 クリア済みのダンジョン同士のあいだでファストトラベルができるってことか。

 マナコイン(金)が必要なのはネックだが、移動に時間がかからないのは大きいよな。



《特殊条件の達成を確認。スキルセット「からくり文明の破壊者」を手に入れました。》


Congratulations !!! ────────────

特殊条件達成:「種族:からくりを400体連続で倒す。うち1体以上ボスモンスターを含む。」

報酬:スキルセット「からくり文明の破壊者」

「からくり文明の破壊者」を入手したことにより、セットに含まれる以下のスキルから、三つを選んで取得できます。

「片手持ち」

「電撃」

「チャージ」

「自爆攻撃」

「指揮」

「データリンク」

「砲撃」

「銃撃」

「ロックオン」

以下のスキルが取得可能になりました。

「片手持ち」

「指揮」

「銃撃」

────────────────────



「うーんと……?」


 「片手持ち」「指揮」「銃撃」は、スキルセットでも取得できるし、あとでSPを使って取得することもできるみたいだな。

 それなら、スキルセットの貴重な枠を使う必要はない。

 

 となると、候補は「電撃」「チャージ」「自爆攻撃」「データリンク」「砲撃」「ロックオン」。

 

「『電撃』はいらないな」


 自分の周囲に弱い電撃を放って触れたものを感電させるスキルだが、それなら「忍術」の下位スキル「紫電地走り」のほうが範囲も広い。

 自分の周囲を攻撃するモンスター系のスキルでは、すでに「毒噴射」も持ってるな。

 その「毒噴射」も、使用頻度はいまひとつ。

 役割が重複するスキルをもうひとつ取る意味はないだろう。

 

「『データリンク』も微妙だな」


 味方のからくり系モンスターと情報を共有できるスキルだが、俺にとっては使える状況が限られる。

 からくりドクター(名付けはまだ)を「シークレットモンスター召喚」で呼び出したときくらいだろう。


 でも、「シークレットモンスター召喚」で喚び出したばあい、このスキルがなくてもある程度の意思疎通はできるんだよな。

 しかも、からくりドクターの単体での戦闘力はかなり微妙だ。

 わざわざからくり系専用スキルを取得してまでコミュニケーションを改善してもしかたがない。


 残るは、「チャージ」「自爆攻撃」「砲撃」「ロックオン」。

 この中から三つだ。

 

「『自爆攻撃』なんて生身の人間が使えるか? ……いや、そうでもないのか」


Skill──────────────────

自爆攻撃1

自分の身を顧みない爆発攻撃により、通常攻撃の(5+S.Lv)倍のダメージを与える。ただし、与ダメージの(200-S.Lv×20)%のダメージを受ける。

────────────────────


 スキルレベル1なら、敵に6倍のダメージを与え、その与ダメージの180%のダメージを受ける。

 通常攻撃の与ダメが1000だとすると、「自爆攻撃」の与ダメが6000で、自分は6000の180%――10800のダメージを受ける。

 スキルレベルを5まで上げると、敵に10倍のダメージを与え、自分はその100%(同じ)のダメージを受けるようになる。

 通常攻撃の与ダメが1000なら、与ダメも被ダメも10000になる計算だ。

 

 最初に思いつくのは、

 

「『賢者の石のかけら』で被ダメを削除すればデメリットなしで与ダメ10倍にできるよな」


 とはいえ、貴重な「かけら」をそこに使っていいものか。

 爆発攻撃とあるから、攻撃のモーションが特殊で扱いにくい可能性もあるよな。

 道中のからくり突撃兵の「自爆攻撃」は、槍の先に仕込んだ爆薬を爆発させるというものだった。

 ひょっとしたら対応武器が限られるのかもしれない。

 逆に、「強奪」のように弓でも使えるなんて可能性もないことはない。

 現実寄りの実装なのか、ゲーム寄りの実装なのか。

 そういうとこはスキルの説明文を読んだだけじゃわからないんだよな。

 

 だが、他にも活用方法があるのに気づく。


「『サバイブ』や『リバイブ』で生き返るのを前提に使う手はあるか」


 気の進まない方法だが、ここぞというときの火力アップには使えそうだ。

 スキルコンボに組み込めば、コンボ全体の火力を爆発的に上げられるかもな。

 

 「自爆攻撃」を取るなら、残りは「チャージ」「砲撃」「ロックオン」の中から二つの選択だ。

 

 「チャージ」は威力も隙も大きい突進技。

 「砲撃」は大砲を扱う技術。

 「ロックオン」は、

 

Skill──────────────────

ロックオン1

一度捕捉した敵を自動で捕捉し続ける。捕捉した敵に対する攻撃に誘導効果が発生し、命中率・クリティカル率を(S.Lv×20)%向上させる。

────────────────────


 スキルレベル1当たりクリティカル率が20%も上がる。

 「暗殺術」「致命クリティカル」(クリティカルヒット時に即死攻撃の発動率が上昇)との相乗効果も見込めるな。

 三つの中でいちばんほしいのはこれだろう。

 

 最後は「チャージ」と「砲撃」の二択。

 

「大砲がドロップするって話は聞かないんだよな」


 ついでにいえば、銃もドロップしないらしい。

 地上の銃火器はダンジョンのモンスターに効きづらいという話をだいぶ前にしたと思うが、ダンジョンのアイテムとして銃火器が出たこともないという。

 道中に出たからくり戦車は大砲を撃ってきたが、こいつのドロップにも銃火器はなかった。

 ガトリングガン装備のからくりドローンでも、ドロップするのは連射弓だ。

 

 「チャージ」のほうは、


Skill──────────────────

チャージ1

突進の勢いを乗せた強力な攻撃。通常攻撃の(200+50×S.Lv)%のダメージを与えられるが、攻撃を回避されると体勢を崩し、(7-S.Lv)秒間硬直する。

────────────────────


 スキルレベル1なら、2.5倍の威力で、外したさいの硬直は6秒。

 戦いでの6秒は長すぎる。

 スキルレベル5まで上げきれば、4.5倍の威力で硬直1秒。

 高度な戦いになれば1秒の硬直も命取りではあるが、状況次第では使えなくもない……か?


 俺は悩んだ末に、

 

「『自爆攻撃』『ロックオン』『チャージ』だ!」



《スキル「自爆攻撃1」「ロックオン1」「チャージ1」を取得しました。》



「……打ち止めか?」


 しばらく待ってみたが、「天の声」は聞こえてこない。

 残念。おかわりはなかったようだ。


「さて、これからどうするかだが……」


 忘れないうちに「片手持ち」を覚える……のはあとでいいな。

 取得やレベルアップを延期していたスキルを上げたいが、これも今すぐやることではない。


 今やるべきは、早く地元に戻ることだ。


「『ダンジョントラベル』が入手できてよかったな……」


 結果的に、ボスを倒さずに帰るよりも早く地元に戻ることができそうだ。

 ホテルの部屋は明後日分まで予約してしまったが、荷物は全部アイテムボックスに入れてある。

 地元に戻ってからキャンセルの連絡をすればいい。

 キャンセル料と食いそびれたホテル飯のことは忘れよう。

 

「っと、その前に気がかりを潰しておくか」


 気がかり、というほどでもないかもな。

 

 せっかく「看破」「再鑑定」というチートなスキルを手に入れたんだ。

 あのハイヒューマン様――エルフのクローヴィスの本当のステータスを見てやろうじゃないか。

 あのハリボテの偽装ステータスからどのくらい見劣りするか見ものだよな。

 

「『アーカイブ』で前回の『鑑定』結果を開いて……『窃視』『再鑑定』『看破』っと」


 一瞬だけ表示されたハイヒューマン様のステータスが、パリーン!と小気味いい音を立てて砕け散る。


 気持ちいい!

 

 と思ったのもつかの間、俺はその奥から現れたステータスを見て硬直した。

 

 背筋が凍り、俺の顔がこれ以上ないほど真顔になる。



「――ヤバい!」



 俺が血の気の引いた顔で叫ぶのと同時に、スマホから着信音が鳴り出した。

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