80 今回のリザルト(Aランク)

 ボス部屋にひしめく歯車が止まっていく。

 木の軋む音が静まっていく中で、俺の頭は逆に、期待ではちきれそうになっている。

 

 さあ、お楽しみのボーナスタイムだ。

 今回はAランクダンジョンの初回踏破。

 なにもないということはありえない。



《特殊条件の達成を確認。スキル「スキルバースト」を手に入れました。》


Congratulations !!! ────────────

特殊条件達成:「一回の攻撃に異なるスキルの効果を10個以上相乗させる。」

報酬:スキル「スキルバースト」

────────────────────

Skill──────────────────

スキルバースト

そのスキルを失う代わりに一度だけスキルの効果を100倍にする。

失ったスキルは二度と取得することができなくなる。

────────────────────



「いきなりいかついのが来たな……」


 追い詰められてもなるべくなら使いたくないスキルだよな。


「スキル、10個も乗ってたっけ?」


 いちばん多かったのはからくりドクターへの初撃だよな。

 「弓術」の下位スキル「連射」、「弓技」の下位スキル「ショット」、「狙撃」、「ブルズアイ」、「強奪」、「ノックアウト」。

 「先陣の心得」、「暗殺術」、「致命クリティカル」と……ああ、「天誅」か。

 ちょうど10個になってるな。

 


《久留里城ダンジョンを踏破しました!》



《特殊条件の達成を確認。「極意書」を手に入れました。》


Congratulations !!! ────────────

特殊条件達成:「Aランク以上のダンジョンをレベル45以下で踏破する」(初回のみ)

報酬:「極意書」

────────────────────

Item──────────────────

極意書

使用すると固有スキル以外の任意のスキルのスキルレベルの上限が6になる。

────────────────────



「うわっ、そんなのあるのか」


 スキルレベルの上限は5というのが探索者の常識だ。

 まさか限界突破アイテムがあるとはな。

 これもまた、どのスキルに使うか悩みそうだ。

 


《特殊条件の達成を確認。「秘伝書・急の巻」を手に入れました。》


Congratulations !!! ────────────

特殊条件達成:「Aランク以上のダンジョンをレベル25以下で踏破する」(初回のみ)

報酬:「秘伝書・急の巻」

────────────────────

Item──────────────────

秘伝書・急の巻

使用するとSPを100000獲得。

────────────────────



「これは普通だな」


 ……いや、よく考えたら全然普通じゃないけどな。

 使うだけでSPが10万も手に入るアイテムだ。

 普通の探索者からしたら垂涎の的なんてレベルじゃない。

 売れば間違いなく億単位の金が動くだろう。

 入手経路を明かせないから売らないが。



《特殊条件の達成を確認。「奥義書・破の巻」を手に入れました。》


Congratulations !!! ────────────

特殊条件達成:「Aランク以上のダンジョンをレベル15以下で踏破する」(初回のみ)

報酬:「奥義書・破の巻」

────────────────────

Item──────────────────

奥義書・破の巻

使用すると一部の秘匿されたスキルを取得可能状態にする。

────────────────────



「これはあとでチェックしないとだな」


 前々回、天狗峯神社ダンジョンのクリア時に手に入れた「奥義書・序の巻」で開放されたスキルの中には「武器投げ」もあった。

 他にもマイナーめの武器スキルを取得できたのは大体「序の巻」のおかげである。

 

 そういえば、「武器投げ」の説明文って見せたっけ?


Skill──────────────────

武器投げ5

武器を投げつけることで大ダメージを与える。与えるダメージはその武器の攻撃力のS.Lv倍に比例する。

命中したかどうかにかかわらず、投げた武器は砕け散る。

────────────────────


 武器を消費するだけに、与えるダメージはかなり大きい。

 「その武器の攻撃力のS.Lv倍に比例」とあるが、武器の攻撃力とスキルレベルだけではなく、攻撃力や敏捷といった能力値も加味されてるようだ。

 たぶん、武器の攻撃力×スキルレベル×俺の能力値から計算される何か、みたいな感じだな。

 

 

《特殊条件の達成を確認。「賢者の石のかけら」を手に入れました。》


Congratulations !!! ────────────

特殊条件達成:「Aランク以上のダンジョンをレベル5以下で踏破する」(初回のみ)

報酬:「賢者の石のかけら」

────────────────────



「おっ、やったぜ!」


 これは嬉しい!


 二度目の入手となる「賢者の石のかけら」は、

 

Item──────────────────

賢者の石のかけら

使用することで取得済みのスキルのデメリットを一つ削除する。

────────────────────


 というアイテムだ。

 前回のかけらでは「逃げる」の攻撃力へのマイナス補正(-50%)を削除した。

 順当に行くなら今度は「逃げる」の防御力へのマイナス補正(-60%)だろうか。

 「逃げる」成功時の所持金落としを削除する手もあるが、現状資金難なわけでもない。

 

 ただ、他のスキルのデメリットの中にも使い勝手が上がりそうなものはいくつかある。

 「魔神化」の、発動中に最大HPが20%になるというデメリット。

 「切り札化」の、切り札設定が24時間に1回しかできないというデメリット。

 「魔法障壁」の、展開中はMPを消費し続けるというデメリット。

 「疑似無敵結界」の、MPが最大値でないと使用できないというデメリット。

 「ショートテレポート」の、ダンジョンの壁は通り抜けられないというデメリット。

 「エバック」(ダンジョン脱出)の、戦闘中は使用できないというデメリット。


 これから覚えるスキルの中にも、かけらを使いたくなるものがあるかもしれない。

 現状戦力に不安がないなら保留でもいいだろう。

 

 あ、そうだ。

 さっき覚えたばかりの「スキルバースト」に使うのも手だな。

 「失ったスキルは二度と取得することができなくなる」というやつだ。

 まあ、そのデメリットを消したばあいでも、使ったスキルを一度失うことにはなるのだろうが。

 

 ちなみに俺は、RPGではパラメーターを上げる種のたぐいをつい袋の肥やしにしてしまうタイプである。

 固定値でパラメーターが上がるなら低レベルのうちに使ったほうが相対的に効果が高いと、大きくなってからわかったけどな。

 「賢者の石のかけら」も「極意書」も、さっさと使ってしまったほうが、強化されたスキルの恩恵をそれだけ早く受けられる。

 でも、あとでもっといい使い方を思いついたらと思うと、な。



《特殊条件の達成を確認。スキル「隠しポータル発見」を手に入れました。》


Congratulations !!! ────────────

特殊条件達成:「Aランク以上のダンジョンをレベル45以下かつソロで踏破する」(初回のみ)

報酬:スキル「隠しポータル発見」

────────────────────

Skill──────────────────

隠しポータル発見

ダンジョン内に存在する隠されたポータルを発見できる。隠されたポータルの中には地上と行き来可能なものも存在する。

────────────────────



「えっ、すごいな」


 隠しポータルなんてもんがあるとは初耳だ。

 しかも、地上と行き来可能なものなら、ダンジョンの途中脱出とそこからの再開が可能になる。

 脱出だけなら「エバック」があるが、ダンジョンを途中から再開する手段はなかったからな。



《特殊条件の達成を確認。スキル「看破」を手に入れました。》


Congratulations !!! ────────────

特殊条件達成:「Aランク以上のダンジョンをレベル25以下かつソロで踏破する」(初回のみ)

報酬:スキル「看破」

────────────────────

Skill──────────────────

看破

対象のステータスを見ることができる。

「偽装」等のスキルによるステータスの改ざんを無視できる。

────────────────────



「きたっ!」


 「鑑定」の上位互換といっていいスキルだよな。

 幻竜クダーヴェが召喚直後に俺の実力をはかるのに使ってたスキルだ。

 でも、あいつが「Aランクダンジョンをレベル25以下のソロで踏破」したとは思えない。

 あいつがこっちの世界に来たときに、向こうでのあいつの能力が「翻訳(byクダーヴェ)」されてスキルという形に落ち着いたという感じだろうか。

 

 このスキルがあれば、偽装されたステータスを見抜くことができる。

 優先的にほしかったスキルの一つだ。

 

 このスキルが手に入ったのは偶然に思えるかもしれないが、そうでもない。

 「窃視」(相手に気づかれずに「鑑定」できる)のスキルを手に入れたのは、特殊条件「Bランク以上のダンジョンをレベル15以下かつソロで踏破する」の達成ボーナスだったからな。

 同じ「〇ランク以上のダンジョンをレベル×以下かつソロで踏破する」シリーズの景品が「看破」なのは、むしろ自然なことだろう。

 もしこの条件が「Sランク以上のダンジョンを~」だったら今回は無理だったわけだけどな。



《特殊条件の達成を確認。スキル「再鑑定」を手に入れました。》


Congratulations !!! ────────────

特殊条件達成:「Aランク以上のダンジョンをレベル15以下かつソロで踏破する」(初回のみ)

報酬:スキル「再鑑定」

────────────────────

Skill──────────────────

再鑑定

一度でもステータスを見たことがある対象の現在のステータスを見ることができる。ステータスを見たことは対象に感知される。

────────────────────



「おおっ、便利じゃないか?」


 いや、そうでもないか?

 モンスターのばあいはステータスを見たらほぼ確実にその場で倒す。

 他人のステータスを覗き見るのは探索者のタブーだから、おおっぴらに他の探索者のステータスを見ることはできない。

 

 まあ、俺には「窃視」があるから、バレずに覗くことはできるのだが。

 でも、ステータスを覗いて得た情報をうっかりしゃべったりしたら怖いよな。


 それに、俺の知らないスキルで「窃視」すら察知できる探索者がいるかもしれない。

 「鑑定」されたとまではわからなくても、おかしな視線を感じた、みたいな形で察知されるおそれもある。

 強力な固有スキルの持ち主はその性能を隠す傾向にあるからな。

 どこで地雷を踏まないとも限らない。

 

 以前、凍崎純恋に「窃視」「鑑定」をかけたことがあるが、本来はあれすら慎重であるべきだったのかもしれないな。

 「ステルス」「隠密」で身を隠し、すぐにポータルに飛び込める体勢だったからできたことだ。


 実際、あの女は「誰かが怯えたような気がした」などと言って、察知されないはずの「窃視」に気づきかけたからな。

 他人からの搾取で得たレベルとはいえ、腐っても高レベル探索者ということか。

 

 とはいえ、あそこで「窃視」「鑑定」をすべきじゃなかったとは思わない。

 俺にとっては宿敵というべき因縁の相手で、芹香とも対立関係にあるようだった。

 いずれ衝突する可能性があるのなら、リスクを取ってでも敵の情報を得ておくべきだろう。



《秘匿情報の公開条件を満たしていることを確認。》



「ん?」



Secret─────────────────

「再鑑定」秘匿情報の公開条件:「偽装」等、ステータスを改ざんするスキルを取得している。

報酬:「再鑑定」追加詳細情報の公開。以下の情報が公開されます。

────────────────────

Info──────────────────

再鑑定

対象が現在までのあいだに「偽装」等のスキルによりステータスを改ざんした場合、現在のステータスは見られず、改ざんされたステータスが表示される。

────────────────────



「……ややこしいな」


 こういうことだろうか?

 前回の「鑑定」で対象のステータスを見てたとしても、そのあとに相手が「偽装」を取得するなどしてステータスを隠すようになったら、現在のステータスは見えないよ、と。

 そりゃそうだろう。それができてしまったら、一度でも過去にステータスを見られていた相手には「偽装」が効かないことになってしまう。

 まあ、「再鑑定」なんていうレアなスキルを持ってるやつ限定の話ではあるが。

 


《秘匿情報の公開条件を満たしていることを確認。》


Secret─────────────────

「再鑑定」秘匿情報の公開条件:「看破」等、ステータスの改ざんを見破るスキルを取得している。

報酬:「再鑑定」追加詳細情報の公開。以下の情報が公開されます。

────────────────────

Info──────────────────

再鑑定

それまでに「偽装」等のスキルにより改ざんされたステータスのみを見せられていた場合、「再鑑定」で現在のステータスを見ることはできない。対象が改ざんを継続していた場合には、現在の改ざんされたステータスが表示される。

────────────────────



「まだあるのか。えーっと……?」


 さっきの情報とちがうのは、最初に見たステータスが本物か偽物かってことだな。

 

 さっきのは、最初に本物のステータスを見てたとしても、そのあと相手に「偽装」されてしまったら、「再鑑定」しても改ざんされたステータスが表示されますよ、という話だった。

 

 今度のは、最初に偽物のステータスを見せられてたばあいだ。

 最初に偽物のステータスを見せられてたばあい、「再鑑定」で表示されるのは(現在の)偽物のステータスになる。

 これも納得はいく。もしそうじゃなかったら、「再鑑定」は「看破」を兼ねることになるからな。


 理解するのに頭を使わされたが、わかってみれば「なんだそんなことか」って感じだな。



《秘匿情報の公開条件を満たしていることを確認。》


Secret─────────────────

「再鑑定」秘匿情報の公開条件:スキル「アーカイブ」を取得している。

報酬:「再鑑定」追加詳細情報の公開。以下の情報が公開されます。

────────────────────

Info──────────────────

再鑑定

「偽装」等のスキルにより改ざんしたステータスを見せられていた場合でも、「アーカイブ」と「看破」等ステータスの改ざんを見破るスキルを併用することで、現在における改ざんされていないステータスを見ることができる。

────────────────────



「まだあんのかよ」


 思わず言ってしまったが、これがいちばん重要そうだ。

 前二つの情報はこの情報の前フリだったのかもしれないな。

 

 過去に偽物のステータスを見せられたばあいでも、「アーカイブ」と「看破」を組み合わせることで、現在のステータスを見抜くことができるということだ。

 

 言い換えれば、過去に見せられた偽のステータスを後付けで「看破」できるってことだよな。

 俺には「窃視」もあるから、対象に察知されることもない。

 

 ――これまで俺に「偽装」を使ってきた相手は一人しかいないな。

 

 その答え合わせはしておきたいが、まずは怒涛のボーナスラッシュをさばききろう。

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