40 道中の稼ぎと不吉な予感

 光が丘公園ダンジョン、二層。

 一層からは少し敵のレベルが上がった程度。

 なんの問題もない。

 4体編成より5体編成が増えたのは、俺にとってはありがたい。

 「逃げる」一回あたりの効率が上がるからな。



《「逃げる」に成功しました。》


《経験値を得られませんでした。》


《SPを408獲得。》


《65340円を獲得。》


《「メイジスタッフ」を手に入れた!》


《58806円を落としてしまった!》



 今倒した(逃げた)のはシールダー1、メイジ2、トレジャーホビット2という珍しい編成。

 メイジはSP15で、トレホビ(Lv59)はSP19。

 トレホビは別格としても、メイジはホビット亜種の中ではSPが多い。

 つまり、俺にとって最良の編成だった。


「これは稼ぎどころだな」


 ちょうどダンジョンの枝道に入ったところで、羅漢の探索者に追いつかれることもないだろう。

 まあ、追いつかれても「索敵」でわかるのだが。


 同じ編成でメイジ2トレホビ2撃破シールダー残し逃げをくりかえす。

 前逃げではなく、信頼と実績の後ろ逃げだ。


 40セットくりかえしただけで、SPが15000以上も貯まった。


「スキル取得:『MP強化』と『魔力強化』をレベル4に!」


《SP14800を消費して「MP強化2」「MP強化3」「魔力強化4」を取得します。よろしいですか?》


「よろしいぜ!」

 

《スキル「MP強化2」「MP強化3」「MP強化4」「魔力強化4」を取得しました。》



「いい稼ぎ場なんだけどな……そろそろ進むか」


 この狩り場の唯一の不満は、トレジャーホビットのレベルが59なことだな。

 もしこれが61ならレベル差補正で獲得SPが7倍になったんだが。


「それは贅沢の言い過ぎか」


 三層に進めばレベル61のモンスターも出るかもしれない。

 今日中にボスまで終えたいし、ここでの稼ぎは終えて、さっさと二層を踏破しよう。


 ステータスを見ながら、ミニマップに従って二層の本筋へと戻っていく。



Status ──────────────────

蔵式悠人

レベル 1

HP 35919/35919

MP 11414/11414

攻撃力 1014

防御力 18145

魔 力 20475

精神力 15556

敏 捷 10784

幸 運 28115


・固有スキル

逃げる S.Lv1


・取得スキル

【魔法】火魔法2 風魔法1 水魔法1 氷魔法1 雷魔法1

【特殊能力】忍術1 暗殺術1 毒噴射1 地割れ1

【戦闘補助】MP回復速度アップ2 強撃魔法2 古式詠唱2 高速詠唱1 魔法クリティカル1 魔法連撃1 MP節約1 属性増幅1 思考加速1 致命クリティカル1 バックスタブ1 回避アップ1 ノックアウト 渾身の一撃1 凶暴化1 自己再生1 分裂1 サバイブ 奇襲1 先制攻撃1 先手必勝1 先陣の心得1 追い払う 天誅1 絶対防御

【能力値強化】 HP強化5 防御力強化5 MP強化4 魔力強化4 精神力強化4 敏捷強化1 幸運強化1 身体能力強化1

【耐性】麻痺耐性1 石化耐性1 睡眠耐性1 即死耐性1 混乱耐性1 沈黙耐性1

【探索補助】鑑定 簡易鑑定 偽装 窃視 アイテムボックス1 索敵1 ミニマップ 隠密1 ステルス 罠発見1 罠解除1


・装備

防毒のイヤリング

クローク・オブ・サンダーストーム

守りの指輪


SP 73221

────────────────────



 攻撃力だけ一桁間違ってるんじゃないの?って感じだが、残念ながら正確な値だ。


 HPと幸運は既に凍崎純恋を超え、懸念のあった防御力も「防御力強化5」で見える形にはなってきた。


 逆に、俺の強みだった敏捷が他に比べて低くなってるが、これから他のスキルを強化すればすぐに他の能力値を抜くだろう。

 「逃げる」の敏捷への補正は+200%もあるのだから。


 装備品は二枠が芹香からの貰い物で埋まってる。

 ありがたいような、情けないような。


 芹香がくれたクロークに「雷属性半減」が付いてるのは……まさか、凍崎純恋の得意魔法(というか唯一の魔法)を見越してのことなのか?

 さすがに偶然だと思うけどな。



 さて、枝道から二層の主要線に戻ると、かなり後ろのほうに他の探索者の気配があった。


「羅漢のパーティか」


 六人パーティが六つ……いや、遅刻してきたのを合わせて七つあったな。

 そのうちの一つが追いついてきたようなのだが、


「……『索敵』の光点が五つしかないな」


 一人遅れているだけだと信じたい。

 でも、それはきっと望み薄だ。

 七つの班を競わせた結果、先頭の班で犠牲者が出た、といったところだろう。


「『逃げる』だと倒したモンスターが復活するからな」


 俺が普通にモンスターを倒していたら犠牲者は出なかったのかもしれない。


「いや、それはおかしい。連中は俺がいることを知らないんだし」


 知ってたとしても、他の探索者が間引いてることを期待してダンジョンに潜るのは間違ってる。


 羅漢がそういう探索をすると予測してつゆ払いをしておくべきだった……なんてのは、いくらなんでも気の回しすぎだ。


 犠牲者が出たのは、彼らの問題だ。


 そうとわかっていても、今も後ろで人が死にかけてるかもしれないと思うと落ち着かないな。


 俺は苦い気持ちを噛み殺してダンジョンを進み、無事三層へのポータルに飛び込んだ。

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