14 「鑑定」ゲット!
半日でSP10000を稼いだ俺は、念願の「鑑定」スキルを手に入れた。
レベル差が20あったトレホビから得られるSPは、予想通りの3倍だった。
一セットでSPが33も稼げるとは。
最初は「古式詠唱」「強撃魔法」「先制攻撃」「先手必勝」「先陣の心得」「魔法クリティカル」のロマン砲全部乗せセットで攻撃したが、冷静になってみるとそこまでやる必要はない。
「先制攻撃」「先手必勝」に「魔法クリティカル」が乗れば、トレホビは安定して一撃確殺だ。
幸運の値が高いから、「魔法クリティカル」は体感95%は出てる感じだな。
「鑑定」の取得可能SP10000を仮目標としていたが、そのあいだに「逃げる」のスキルレベルアップが可能になるようならそっちにしようと思ってた。
結局、SPが10000貯まるまでのあいだに「逃げる」のスキルレベルアップができるようにならなかったが。
10000でダメなら12000、16000、いや、20000という線もあるだろうか。
「いつレベルアップ可能になるかわからないと貯めにくいな」
いくら稼ぎがはかどってるとはいえ、どこまで稼げばいいのかわからないのはさすがにつらい。
当面は少ないSPで取得できるスキルを優先し、攻撃手段と能力値を増やしていくのがいいだろう。
万単位の稼ぎは、さらに効率のいい狩り場を見つけてからでよさそうだ。
その余勢をかって、俺は水上公園ダンジョンを奥に進む。
もちろん、ダンジョンの踏破を目指すのだ。
雑木林ダンジョンは一階層しかなかったが、この水上公園ダンジョンは四階層。
ただし、一階層の広さはさほどでもない。
途中、トレホビを見かけるたびに狩って、SPを着実に稼いでいく。
《特殊条件の達成を確認。スキル「奇襲」を獲得しました。》
「おっ?」
Congratulations!!!─────────────
特殊条件達成:「スキル『先制攻撃』を500回成功させる。」
報酬:スキル「奇襲」
────────────────────
Skill──────────────────
奇襲1
こちらに気づいていない敵に攻撃をしかけた場合、敵の全能力値が(S.Lv×5)秒間、(S.Lv×10)%低下する。
────────────────────
「あって悪くないスキルだな」
現状、「隠密」と「索敵」の忍者セットのおかげで、ほとんどの場合で敵に先制攻撃をかけられている。
スキル「先制攻撃」の効果は「こちらに気づいていない敵に対する与ダメージが(S.Lv×20)%増加する」というものだから、「奇襲」とはシナジーがあるわけだ。
一層の最後に、二層へと降りるポータルを見つけた。
ダンジョンの入口にあるのと同じ黒い鏡のようなものが浮いている。
いつもどおりそれを潜ると、あたりの様子が少し変わった。
ダンジョンの造り自体は同じだが、壁の色が一層よりも黒ずんでいる。
出現する敵のレベルが上がったのだろう。
「索敵」でモンスターを探すると、俺は手に入れたばかりの「鑑定」をさっそく使ってみる。
Status──────────────────
トレジャーホビット
レベル 24
HP 168/168
MP 338/338
攻撃力 120
防御力 120
魔 力 194
精神力 216
敏 捷 2980
幸 運 720
・生得スキル
盗む2 遁走2 土魔法1
撃破時獲得経験値168
撃破時獲得SP11
撃破時獲得マナコイン(円換算)7920
ドロップアイテム 金塊 魔法の大入り袋 盗賊の小手
────────────────────
「こりゃ便利だな!」
さすが、SP10000だけのことはある。
しかも「鑑定」スキルの場合、他のスキルとちがって、取得に要したSP分の能力値ボーナスが発生しない。
「簡易鑑定」や「アイテムボックス」なんかも同じ仕様だな。
SP10000を使って普通のスキルを取りまくっていたら、10000もの能力値ボーナスがついてたはずで、それが「鑑定」の取得者が少ない大きな理由でもある。
それはさておき、トレホビのステータスにはいくつか見ておくべきところがあるだろう。
まず、敏捷の高さ。
これは、素の能力値に加えて、持っているスキルの補正が大きいのだと思われる。
「盗む」「遁走」、ネーミングからしていかにも敏捷にボーナスがつきそうなスキルだ。
次に、その「盗む」と「遁走」だ。
Skill──────────────────
盗む2
対象の所持品を盗むことができる。アイテムボックスに入っている装備・アイテムも確率次第で盗めることがある。
成功率は(S.Lv×10)%に彼我の敏捷の比による補正がかかる。ただし、成功率は80%を超えない。
また、彼我の幸運の比が高いほど、レアリティの高いアイテムを盗める確率が上がる。
────────────────────
Skill──────────────────
遁走2
戦闘からただちに逃げ出すことができる。自分の(S.Lv×敏捷)が相手の敏捷を上回っていれば、相手から行方をくらませることができる。ダンジョンボスには無効。
────────────────────
《秘匿情報の公開条件を満たしていることを確認。》
info──────────────────
「遁走」秘匿情報の公開条件:「『遁走』以外の逃走系スキルを所持している。」
報酬:「遁走」追加詳細情報の公開。以下の情報が公開されます。
────────────────────
info──────────────────
「遁走」で逃走した場合、当該戦闘で得られたはずの経験値、SP、マナコイン、ドロップアイテムは得られない。「盗む」で手に入れたアイテムは持ち逃げ可能。
────────────────────
「盗む」は、RPGでイメージする通りの性能のようだ。
敏捷と幸運が高い俺が手に入れられたら、レアアイテムを盗み放題になりそうだな。
「遁走」に関しては、当然、「逃げる」とどう違うのか? という疑問が浮かぶよな。
俺が「逃げる」を持っていたことで詳細情報が得られ、「遁走」ではSPその他が得られないことが判明した。
ただ、「遁走」には逃げエリアや逃げタイマーの指定がない。使ったらその場で逃げられるってことか? なにそれずるい。
これも、敏捷が高い俺が手に入れたら、いざというときの便利な逃走手段になりそうだ。
トレホビのドロップアイテムの欄もおもしろい。
これまでのトレホビ狩りで、俺は金塊をかなりの量と、魔法の大入り袋をいくつか手に入れている。
金塊はその名の通りの換金アイテム。金欠の俺にはありがたい。
魔法の大入り袋は、いわゆるマジックバッグというやつだ。
見た目よりはるかに容量があって、アイテムボックスを持ってない探索者には重宝される。
これも、売れば結構な儲けになりそうだ。
ただ、「盗賊の小手」というアイテム(装備?)は今のところドロップしていない。
ドロップアイテムに列挙された順番から考えると、いちばん確率が低いのだろう。
あるいは、「盗む」でしか手に入らないのかもしれないな。
いろいろと発見はあったが、ダンジョン内で考え込むのは危険だろう。
稼ぎに時間をかけたこともあって、時間もかなり押している。
さっさと進んで、ダンジョンボスを倒し、奥のポータルで脱出したい。
Cランクダンジョンのほとんどには罠がないことが知られている。
この黒鳥の森水上公園ダンジョンも、罠はないとWikiに明記されていた。
もちろん完全に鵜呑みにはできないが、実際、今のところ罠のたぐいには出くわしてない。
俺は「索敵」で敵の動きを探りながら、その動きの流れや配置から次の階層へのポータルの位置を予測する。
昔、蟻の巣を横から観察できるというキットを使って夏休みの自由研究をしたことがあるのだが、ダンジョンの構図はそれに似ている。
じゃあ、ダンジョンはモンスターの巣なのか? というと、そうとも言い切れないようなのだが。
ともあれ、途中出くわすトレホビを狩り、ロックゴーレムをスルーしながら、俺は三層へのポータルへ。
ポータルを抜けると……俺は予想外の空間に現れた。
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