第4話 クリスマスの夜(処女と童貞)

 アクシデントはあったが順調だ。


 特に最初の顔合わせの際に友里と美穂が何故か睨み合い、しばらく二人で離れた場所で話し合いが行われた。

 戻ってきた二人からは強烈なジト目で睨まれた。


 意味が分からず不安になっていたら、溜息を吐きながらも二人は作業に入ってくれた。

 アレは何だったのだろう?


 そして俺たちは、一緒に作業することにした。

 友里がイラストを仕上げ、シナリオと合わせてそこに美穂が演出を加えていく。

 最高のモノにすべく、次々とクオリティが上がっていく。それは気になっていたシーンだけに限らず他のシーンにも及ぶ。

 シナリオに合わせて、イラストも演出もさらに最適化されていく。


 この二人は天才だ。一緒に仕事をしているとよく分かる。ただし、尖り過ぎているから自分の仕事を中心に据えてしまう。

 でも、そこはこちらが指揮を取れば良い。プロデュースさせてくれとまで言ったのだから、それを果たすのは俺の役割だ。


 他メンバーはデバッグ作業や、販売準備などを対応中だ。懸念だったデバッグも美穂の作ったオートデバッグツールが活躍、凄まじい効率で作業終了していた。


 そして、ついに全ての作業が完了した。


「友里、美穂本当にありがとう。自信を持ってユーザーの期待値を超えられた」


「洋一さん、これからが始まりなんでしょ?」


「洋一、私と世界に名を馳せるなら、これで満足しちゃダメよ?」


 これでマスターアップのデータを納品すれば完了だ。

 先輩のご褒美発言から、三日で調整からデバッグまで完了。明日の午前中までが納品デッドだったのでキッチリ仕上がった。


「本当に姉さんの最終チェックを待たずに納品して大丈夫ですか?」

 工藤飛鳥くどう あすかさん。

 名前の通り先輩の妹であるが、姉とは違い容姿は腰まで届く煌めくような漆黒の髪に、瞳は鮮やかな赤い瞳。そして姉と同じく抜群のスタイルを誇る美女。姉が勝気な性格なのに対して、冷静沈着な性格である。

 このサークルではアシスタントディレクター。つまり俺のサポートを担ってくれた。

 各業者への連絡や、コミケ会場での段取りや大学側との折衝までサポートしてくれている。


「えぇ、大丈夫です。先輩からも最終クオリティに問題なければ俺が締めて良いと聞いてます。だからこれでマスターアップです」


 さあ、先輩を唸らせることが出来るか勝負だ!



 ――――翌日、今日クリスマス当日。

 先輩からLIINEで呼び出されたのは、あるマンションの一室。ここは普段先輩が住んでる部屋ではなく、仕事用に用意したマンションらしい。


 ゲームの審判が間もなく下る。クオリティには自信がある。期待値も超えただろう。でも、先輩が認めるレベルに達したか、それは分からない。


 オートロックを抜け、部屋に到達。

 先輩から通されたリビングには……


 豪華な料理が並ぶそこは、先輩と俺の二人だけのクリスマスパーティ会場だった。

「ゲームのことはあとにして、いまは二人でクリスマスを祝いましょう」


 そして夢のような時間が過ぎていく……

 女の子と二人だけのクリスマス。しかもそれが想い人にして絶世の美女。

 ゲームのマスターアップも終えて、俺にとって至福の時間だった。


 傾けるグラス、微笑む先輩の最高の笑顔。先輩の手作り料理の数々に舌鼓をうつ。俺は今日死ぬんじゃないか、そう思った。


 そして至福の時間が過ぎていき……


「さて、そろそろゲームについて話をしましょうか。

 あなたも気になるでしょう?」


「……はい。お願いします」


「……素晴らしい出来だったわ。最後に私がチェックした時とはまるで別物。

 このクオリティで発売する同人ゲームはない。家庭用や商用PCタイトルでもお目にかかれないレベル。本当によくやったわ」


「……で、では……えっと、その……」


「でも、私の想定内。最高レベルで考えていた想定内だった。

 私の想定は越えてはいない。……つまりそう言うこと」


「……そ、そうですかぁ~」


「あまり意外そうでもないわね?あなたはベストを尽くしきれなかったの?」


「いえ、限界を超えたベストを尽くしました。あと1日猶予があってもこれは越えられない。自信を持って言えます。これが今の俺の最高の作品です。

 でも、先輩の想定を越えたかはちょっと自信なくて。だから先輩の答えは予想内と言えば予想内でした」


「……洋一、目隠しなさい。そして私に従って動きなさい」


 ?……俺は目隠しをされ、先輩の手により移動を促される。

 通された部屋で数十分待った。そのままでいるようにと言われたから。



「お待たせ、洋一。目隠しを取っていいわよ」


「は、はい……」

 俺は目隠しを取り……前を見る……


 そこには女神がいた。白磁のような白い肢体をタオル一枚だけに包んだ美女が……

「……俺は夢を見ているのでしょうか?」


「喜びなさい。現実よ」


「で、でも、先輩の想定を超えた結果は出せなかった……」


「えぇ、だからね、私の処女をあげるのではなく『あなたの童貞を頂くわ』」


 ……ゆ、夢を見てるのだろうか

 ゆっくりと先輩の顔が近づいてきて……俺たちは口づけを交わした。


 俺たちは結ばれた。


 恋人としてではない。

 でも、先輩と後輩ではなく、として俺は双葉を抱いた。


 彼女の柔らかな肢体を、何度も何度も俺の手と口が優しく激しく愛撫し、彼女に自分を刻んだ。


 彼女の柔らかな手が俺の身体を抱きしめ、彼女の柔らかな唇、その小さな口からのぞく柔らかな舌が、俺を甘美な快楽へと誘っていく。


 俺たちは何度も何度も身体を重ねた。




 クリスマスはずっと一緒に過ごした。

 この日が終われば俺たちは先輩と後輩に戻る。俺たちの夢が現実となり、双葉ふたばが恋愛に踏み出しても良いと思えるその時まで。


 そして、俺と双葉は夢へと踏み出した。


 俺と双葉の物語はここからだ。

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私の処女が欲しいか?ならばくれてやる。このゲームを完成させたらね!〜金髪美女の処女は1億円の価値!?〜 鷹匠 @hawk99

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