第3話 天才プログラマー(美人JD)
「急にすまない。斎藤さん」
大学二年の
栗色の緩やかなセミロングの髪が特徴だが、スタイルは双葉先輩をも凌駕する美人女子大生である。
俺が彼女と知り合ったのはゼミだ。そこの飲み会で趣味も合い意気投合。さらに俺が愛用しているアプリのメインプログラムを組んだのが彼女と知り、そのアプリの完成度とセンス、技量に感服した。
直感した。彼女のエンジニアとしての腕があれば俺や先輩の企画を自在に実現してくれると。彼女はゲームとの相性が抜群にいい。そして彼女は既に光輝くダイヤだ。だが彼女が最も輝くのは俺たちと一緒にモノ作りする時に違いない。そう思ったのだ。
だからこそ全力で口説いた。俺たちのプログラマーを担当して欲しいと。
最初は断られた。彼女は既にプロてして活躍してるので忙しい。彼女ぐらいの腕になれば仕事を選べる立場なのだから。
だが諦めなかった。何度も何度もプレゼンした。ゲームを、そして俺自身を。
何とかようやく口説き落としてメインプログラム並びに演出の外注にこぎ着けたのだ。
「うーん、忙しいけど、少しならいいよ。いま請け負った企業のプログラム作業の追い込み中なんだけどね〜」
「実はね、見て欲しいシナリオがある。
斎藤さんも発注時に渡したシナリオを読み込んでくれたから、これを見てもらうのが早いと思う」
改変されたシナリオシーンだけを斎藤さんに手渡す。その後、問題のゲームシーンをムービーにしたものを斎藤さんに見せる。
斎藤さんは無言で、シナリオそしてムービーを見ている。
そして、さきほど友里に描いてもらったラフイラストをはめ込んだムービーを見せる。先程まで違和感のあったムービーは、ラフながらもシーンに合ったイラストに差し替えられたことで、段違いの完成度に引き上げられた。
「……なるほどねぇ、シナリオは段違いに良くなってる。さらにこのラフイラストの完成版がハマれば劇的に良くなるわね。
このシナリオ、そして新たに描き起こされるイラストにあった演出と動きを私につけて欲しい。そういうことかしら?藤堂くん」
「無茶を承知でお願いするよ、斎藤さん。明日イラストが順次納品されるので、そこから1日で作業をお願いできないだろうか」
「……明日から1日ねぇ~私なら不可能じゃないけど、いま私が抱えてる仕事の納期も考えると余裕はないのよね。
それとも私を口説き落とす材料はあるのかしら?私は学生だけどプロよ?その私に仕事を無理にねじ込むのは難しいわよ?」
イチかバチか、俺の秘策をここで用意する。既にプロとして仕事をする彼女には、友里と同じような口説き文句は通用しない。
「体験版最高でした。シナリオもイラストもエロ抜きでも最高です。でも、エッチシーンは神を超えています。静止画版でも何十回もイケましたが、動きのついたβ版はテスト版とは思えなかった。最高クオリティのアニメを見ているかのようでした。体験版だけで何百回もイケました」
「シナリオ序盤だけで泣けました。それにエロは男性向けと思ってましたが、女の私も何百回もイケました。彼氏が欲しくなってしまいました。静止画版だけでも買いでしたが、動きのついたβ版を見たら布教用も兼ねて買いまくります」
「あと298程同じような感想がある。次は……」
「ちょ、ちょ、ちょっと、待って、待ってそれは何?」
「何って『君のうたごえ』の体験版の感想だよ。ダイジェスト版を限定300配布して、基本は静止版なんだが、動きのついたβ版も少しだけ収録してある。反響はさっきの通りさ」
「えっと……イクって……」
「当然オナ……」
「わ、分かった。もう言わなくていいわ。
……クッ、天才プログラマーと言われた私が抜き演出で神評価とは……」
「ようするに静止版だけでも何十回も抜ける作品が、君の演出が加わり神エロゲーへと昇華されたんだ。β版なのにね。ここからシナリオも、イラストもさらに期待値を超えたものを用意できる。これに演出が加わるとどうなる?
君はプロだ。だからこそこの先が見たくはないか?既に同人レベルの評価には収まらない。俺たちはこれから世界に打って出る。これが最初の一歩なんだ。
これはエロありの恋愛ゲームだけど、俺たちはジャンルを問わず世界に通用する作品を送りだす。そして世界に名を残そう俺たちの名を」
「君の時間と人生を俺に預けてくれないだろうか?
俺に君をプロデュースさせてくれないか?世界へ名を残すために」
「……世界ね、でも私一人でも世界へ名を残せると思わない?」
「君なら残せるだろう。ゲーム分野以外ならね。でもゲーム分野で伝説を作るなら仲間が必要だろう?俺には君がゲームプログラマーに興味があると思っていたんだが、違うかな?」
「一流会社でもまだない同人サークルのあなたが、私をゲーム分野でプロデュースできるのかしら?そ、それに流しちゃったけど人生って……」
「君は既に自分で輝けている。今は俺よりも君をプロデュースできる人材はいるだろうさ、でも俺はここから伸びていく。5年で俺は君の最高のプロデューサーになる。一緒に人生を預け合って同じ夢を見よう、美穂!」
「!?」
斎藤さんの顔色が赤い……あれ?俺の説明が分かりにくかったのだろうか?
「か、確認するわ。と、藤堂くんは私の人生をプロデュース(プロポーズ?)したい……それで合ってるかしら?」
「合っているぞ。君の人生(エンジニア人生)をプロデュースさせてくれ」
「せ、責任は取るのね?」
「当然だろう。俺は君をプロデュースするんだ。責任取るに決まっている。
世界へと踏み出す第一歩はここからだ!」
「……いいでしょう。あなたに乗りましょう。藤堂くんの本気に応えましょう女として」
「ありがとう。斎藤さん」
「さっき美穂と呼んでくれたじゃない。ね、洋一?」
「え……と、美穂、よろしく頼む」
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