おまけ 最弱王決定戦

 その日ウルルスは外出していた。

 ティアはローガンとロイにボコボコにされ自室に引っ込みベットで寝ていた。フェイは読書を楽しみ、ローガンは武器の手入れ。ロイは料理の練習中だった。


「ねぇ、カードで遊ばない?」


 自身も本も読み終わり、暇を持て余していたメルティアは声を掛ける。


 近くに居た三人はそれを無視した。


「聞いてる?」


 挑まれの勝負はしない。それはウルルスの教えだった。金銭のやりとりだとしても家庭内の金銭がどうしようとそれは家族間の問題だ。争う理由にはならない。


「メル、勝てない勝負はしない事ね」


 フェイは本から目を逸らさずにそう告げる。他の二人もうんうんを頷いている。


「ものすごく馬鹿にされている気がしているのだけど?」

「あなたは勘違いしているのだけれど」

「なにを?」

「私達は事あるごとにウルルスに挑んでいるのよ」

「……」


 世界最強に挑み続ける理由は知らないが、自分が優位に立つとメルティアはおもっていた。


「暇だし、いいわよ? かかってらしゃい」


 瞬殺だった。ブラフは看破され手札も強い。勝てない、メルティアは降参するしかなかった。


 続いてローガンにも負け、いよいよロイとの対戦。前回お付きに負けたロイには勝てると思っていたロイにも負けた。


「なんでなんですかぁぁぁ!」


 天に吠え、突っ伏したメルティア。


「ウルルス相手にたまに勝負してるのよ私達、あなたより弱いはず無いじゃない」


 勝ち誇るでもなくそう告げるフェイに怒りすら湧かない。


「そうだ、ティアさん。ティアさんを呼んで下さい」

「…………。いいけど一勝負にしてあげてちょうだいな。ボロボロだから」


 満身創痍まんしんそういのティアが身体を震わせながらリビングにやってくる。


「私が寝ている間に何が起こっているんです……」

「メルティアがカードで勝負して欲しいそうよ」

「へぇ」


 ボロボロなのに目だけ爛々とさせるティアをみて。自分は飛んでもない事を提案していたと思うメルティア。


「やりましょうか」


 カードが配られ。ティアは薄く笑う。


「この勝負に私はご主人様の膝に乗る権利を賭けます」

「は?」

「メルティアさんは何を賭けるんです?」

「い、一ヶ月オムレツ争奪戦に参加しないわ」


 ティアは笑みを深める。


「レイズ。私はご主人様との同衾する権利を賭けます」

「!? それは一人で寝るって事?」

「いえ、私の分の睡眠時間を賭けるという事です。お望みなら外でも寝ましょう」


 家のみんなはピンときた。しかし、メルティアは知らない。


「レイズ。私は一ヶ月ウルルスに話かけない」

「レイズ。私は帰ってきたご主人様のお酒をねだらない事賭けます」


 ビックんとメルティアの身体が跳ねる。


「どうします?」

「サレンダー…………」


 勝負を降りた。賭けから降りた。こんな強気な攻めなど想定外だ。よほどいいカード引いたのだろう。


 カードを放って天井を仰ぐ、ウルルスの関係者は強すぎる。


「やっぱりねぇ」


 二人のカードを確認したフェイため息を付いた。


「やっぱり」

「ですよね」

 

 二人の手札を見てっ二人はため息を付く。

 疑問符のメルティア。


「知らない方が身の為よ」

 

 そう言ってカードを片付ける。メルティアは知らなかった。カードが不利な程ティアは無謀なレイズをすると。


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魔法士殺しと奴隷少女 神城零次 @sreins0021

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