文士の腹の中

向日葵椎

こころ

 文士を志す奇天烈きてれつな人間としては、「心」を動かさなくてはいけない。だが最近の我が心大先生はといえば、ほとんど躍動せず、ほとんど熱を帯びることがない。心ここにあらずであれば再帰を願うところだが、ここにいるのに動かないものだから困る。興味をくネタがふと浮かんで筆をっている時はまだいいものの、それ以外では何をしていても大した動きは見せない。

 これは思うに、身の回りの環境の変化(誰にでもあるようなもの)で一時的に心が節約モードに入ったきり、まだ通常モードやパワフルモードに戻れていないためである。その変化については本題から外れるので割愛するが、心の目と鼻と耳と口を塞いでおかなければ社会生活に支障が出るような、誰にでもあるようなものである。


 さて、冒頭の通り心を動かさなければいけないので、そのために現在遂行中の計画や、それに至ったまでの経緯いきさつについて触れることが本文の主題である。


【計画】

 胃袋を拡げる。

 何を言っているのかと思われるかもしれないが、もっともその通りである。以下は奇天烈な人間の考えた愚策として、ご笑覧いただければ幸いである。


【経緯】

 二年ほど前には心が躍動していたはずなので、その頃と現在を比較して、何が異なるのかということを考えた。その結果、胃袋の大きさというものが著しく変化していたことに気づいたのである。

 二年ほど前は心が躍動しすぎていたくらいで、あらゆる存在にキラメキを感じていた。紙に書かれた一本の線を見て時間をつぶすこともできたほどである。そしてそれは食べ物についても同様で、あらゆるものがうまそうに見え、そして食った。その頃の胃袋の大きさは、休日に白米四合と唐揚げ五〇〇グラムほどにマヨネーズをかけたものを二度食えるほどだった。運動にも興味を持っていた頃なので体脂肪率は高くなかった。思えば小説を書き始めたのもその頃で、やはり心の躍動が活動に影響を及ぼしているように感じる。

 それが数か月前には白米一合のみでも苦しく感じるようになっていたのである。食事回数についても、一日一度だけ白米一合を食べればそれで足りていた。心を節約モードに入れたため、当時はエネルギーが摂れればそれでよかったのである。

 そして逆転の発想をもって、心を戻すために胃袋を戻そうとなった。


【経過報告】

 白米二合であれば、卵や調味料で味をつけて食べきれるようになった。おかずを食べる余裕はない。だが一合で苦しんでいた頃から一か月ほどの成長としてはまずまずと言える。食事回数も一日二度まで増やし、一日一合時代から考えて四倍の白米を食べている。お米の妖精である米村も大喜びなのではないだろうか(※小説「私は米村を食べる」の超絶可愛いヒロイン。不定期更新中)。体脂肪については、おかずがほとんどないためか増えている気がしないが、目立って増えるようであれば運動を取り入れることを考える。

 肝心要の心については、胃袋の余裕ができたためか、いろいろ食べてみようと思えるようにはなっている。つまり動き出しているような感はある。


【予定】

 現状はおかずなしで白米ばかり食べているので、少しでもキラメキを感じるものから手を伸ばす。唐揚げなどの揚げ物がよさそうだ。


 以上が主題についての概要と報告である。

 計画遂行についてはこれからも続行する考えだが、報告については現状行うことを考えていないので一度【完結済】とさせてもらう。

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文士の腹の中 向日葵椎 @hima_see

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