小さな誇り
雨世界
1 初めて、君と出会った日。
小さな誇り
登場人物
篠塚ホリー 好奇心旺盛なブロンド髪のハーフの女の子 十二歳
宝塚飴玉 額に小さな傷のある無口な男の子 十歳
プロローグ
初めて、君と出会った日。
本編
傷だらけだね。大丈夫?
まぶたの奥が熱くなった。そう感じた次の瞬間、篠塚ホリーは泣いていた。ホリーの青色の目から自然と涙が溢れてきた。
自分の涙に触れて、ホリーは、私はどうして泣いているのだろう? とそんなことを疑問に思った。
今日は十二月二十四日。クリスマスイブの日。
電車の窓の外は雨。
……雨を見るとホリーは遠い昔に出会った一人の孤独で無口な、でもとても誇り高い、誰よりも優しくて、温かい心を持った一人の男の子のことを思い出した。
額に小さな傷のある男の子。
その男の子の名前は、……おそらく本当の名前ではないのだと思うけど、宝塚飴玉といった。
飴玉とホリーが出会ったのは、十年前の、とても寒い日の十二月二十四日のクリスマスイブの日だった。
その年、ホリーは十二歳で、今年の夏に(雨の日の多い、台風もたくさんやってきた、初めて経験するとても蒸し暑い日本の夏だった)イギリスの田舎から日本に引越しをしてきたばかりであり、その(友達をたくさんつくるために一生懸命になって勉強した)片言の日本語や、ハーフであるブロンドの髪や青色の目のことなどをからかわれて、いつものようにひとりぼっちで泣いていた。
ホリーには友達が一人もいなかった。
……ホリーはずっと、孤独だった。
ホリーが飴玉と出会ったのは、ホリーの秘密の隠れ場所である人気のない小さな古い公園の中だった。
いつものように小学校でいじめられて落ち込んでいたホリーは、いつものように(勝手に決めた)自分専用の隠れ場所にくると、慣れた動きで、その存在をこの世界の中から誰の目にも見えないように(誰にも見つかりませんように、と願いを込めて)隠そうとした。
そうして、ホリーが大きなピンク色をした象さんの遊具の中に隠れると、そこには一人の先客がいた。
「きゃ!」
と声を出してホリーはとても驚いた。
自分だけの居場所(あるいは、聖域)に自分以外の人がいた。
そのことにホリーはひどく驚いたのだった。(ホリーの心臓はすごくどきどきとしていた)
小さな誇り 雨世界 @amesekai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。小さな誇りの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます