ネタはどこから降りてくる?



 先日、おもしろい近況ノートを見つけました。

 あの書きかたからすると、たぶん、その人自身の見解ではなく、もともとネットか何かで一定数の人が盛りあがった話ではないかと思う。


 どういう内容かというと——


 まず、ネタが湧くとき、何から思いつくかって話です。


 たいていは、キャラクター、世界観、場面の三択のうちどれかから思いつくのでは?

 という内容でした。


 そう言われてみると、そうかもなぁ。

 僕の場合、シリーズ作品なのか、読み切りの新作なのか、短編なのか、あたりでも違ってくるんですが、ここでの思いつきとは、たぶん、完全に新作のことなんでしょう。無から新しい話を思いつくときのこと。


 それでいくと、たいてい世界観かなぁ。SFとかホラーとか、まず、世界が浮かんできて、そのなかでどんな人たちが生きているのか考えていくうちにキャラクターが誕生し、その人たちが動くことによって、書きたい場面もいくつかパパッと浮かび、それによって世界観がより精密になる。そんな感じですね。

 この前で解説したグールゲームなんかも、まさにそう。

 ていうか、読み切りの長編で、世界観以外から思いついて完結まで書いたことあったっけ?


 じつは、この近況ノートを書かれてた人じたいが、自分の場合、どこから湧くとその後が書きやすいか、というのを記されてました。


 その人は場面から思いつくと書きやすいと言われてましたね。世界観やキャラクターから思いついても、展開がまったくないから肉付けしようがないと。


 んん、僕の場合は世界観さえあれば、そこから展開は出てくるけどな。世界観から思いつくと、それを守るとか、それを崩壊させるとかの方向にベクトルが向かい、壮大な物語になりますね。SF作品はもうここで成功するかどうか決まる。


 場面。場面か。

 つまり、キャラクターの具体的な案の前に、キャラクター同志のシチュエーションとか、またはさっきの世界が崩壊するところとか、そういうのを思いつくってことですね。


 みなさんはそういうことありますか?


 ある日とつぜん、ああ、こういうシチュエーションが書きたい! となること。

 僕はあんまりないかなぁ?

 その場合は世界観→キャラクター→場面ってなるので。またはキャラクターと場面の順番が逆。


 もちろん、いざ書きだすときには、いくつか場面は頭に浮かんでることが多いけど。ちなみにグールゲームは「この場面書きたい!」っていうシーンは一個もないまま書きだしましたね。そこらへんは人によって、頭のなかでの話のふくらませかたが違うのかも。


 ただ、その近況書かれてた人と一つだけ一致することがあって。

 いわく、一番ストーリーにならないのが、キャラクター。キャラクターから思いついても世界観も展開もないので、なんにも起こらずに終わってしまう。


 ああ、なるほどねぇ。それは言えてる。

 僕もほとんどは世界観から思いつくんですが、ごくまれにキャラクターからのときがあって、とても魅力的なキャラなので、どうにかして形にしたいけど、どうしてもそれに付属する世界やストーリーが思いつかない……というときがあります。


 これまでに三回くらいだけ、そんなことがあったかな。高校のときなんか、主役やそのまわりのメインキャラ、敵対するキャラ、脇役まで浮かんだけど、ストーリー展開がどうしても思いつかなくて、そのまま没になった。一人ずつキャラ絵まで描いてたんだけどなぁ。


 現在、一人、そういうキャラがいて、なんとか彼を使ってやりたいと思うけど、なんか、それに見合う話が浮かんでこない。


 詩織や神崎くんなんかはキャラクターとしては個性薄いけど、ストーリーありきで思いついてるから完結まで書けた。やっぱり、ストーリー性が重要ですね。


 じゃあ、世界観とかストーリーを思いついたときに、その使われてないキャラを使ったらいいと思われるかもですが、キャラのイメージにあう話かそうでないかってのもありますからね……。


 さて、ここまでは、どこから思いつくことが多いのかなって話なんですが、これを応用して、発想の役に立てられないかなと。


 つまり、キャラクターをことこまかに考えてても、おもしろい小説は書けないってことですよ。


 もちろん、魅力的なキャラクターは大事。とくにラノベにおいては最重要。

 だけど、キャラの可愛さだけでは一冊10万字ぶんは続かないじゃないですか。読者だって「キャラは可愛いんだけど、つまんない」とか思うと、じょじょに離れていくだろうし。


 だからエロか!

 可愛い女の子がいて、ただ毎回エッチするだけの話……まあ、ラブコメはこれで成り立つ、と。

 発想としてはキャラクターからの場面ですね。または場面からのキャラクター。場面をどのていどの量で思いつくかによって、ちゃんと完結できるかどうかが決まる。


 たぶん、一冊の本として完結させるに足る要素って、ジャンルごとに違ってくるんだと思う。


 前述のとおり、SFは世界観。一にも二にも、世界観さえしっかり決まってれば、その設定を利用して話は作れる。その過程で魅力的なキャラをどんどんなげこんでいけば、おのずとストーリーは生まれる。


 ホラーは……これもある意味、世界観なのかな。どこそこに呪われた地があって……とかね。または場面。最後にこんなやつが出てきて、その前でこうなる人がいて……みたいなのが重要だと思う。


 ミステリーは特殊。

 ミステリーだけは例の三要素以外から話を思いつく可能性がある。

 それは、謎です。あるいはトリック。こういう密室ってどうだろうとか、アリバイくずしとか、斬新な殺しかたから思いつく場合がある。これはミステリーにとってはかなり重要。大きなくくりで言えば、場面に該当するのかもだけど。シチュエーションと論理はちょっと違う気がする。

 あとは世界観かな。世界観から来ると現代物ではなく、SFミステリーになりますね。世界観じたいに仕掛けがある形。


 ファンタジー。世界観+キャラクターかな。今は世界観はテンプレのナーロッパを共有というので成立してますが、手のこんだオリジナリティのある話にしたければ、世界観を作りこんだほうがいい。


 キャラクターから思いついてもすんなり書けそうなジャンルって、さっきも書いたように、恋愛、ラブコメ。

 けど、第一に青春物かなと思わなくもない。部活動とか進学とか恋愛とか卒業とかからめれば、一冊ぶんは書ける。病気とか転校、ちょっと重たくイジメとか、親との反目、親の死とか友達の死とか、挫折。学園祭とか修学旅行とか行事も多いし、学校で起こりうることなら、なんでも詰めこめる。


 ただ、よく「ネタがつきたので休載します」という、あれにおちいりやすいのも、キャラクターから考えてる話でしょうね。


 場面で思いついたやつなんかも「書きたい場面を書いてしまったら、モチベがなくなりました。中途半端ですがここで完結にします」とか、よく見かける。


 自分が何から思いついたのか、それによって、一冊ぶん書ききるために補うべきものはなんなのか、などは見えてきます。


 どこから思いつくかは、その人、そのときで違うけど、その後、一作として構築するには、けっきょく三要素をバランスよく組みたてるのが大事。そういうことですね。

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