推敲のコツ
推敲は大事ですね。
誤字脱字が減るだけでも読者をつなぎとめることができますし。
ほんとはこのエッセイを読もうという人は、すでに推敲はしっかりされてると思います。むしろ、こういうのを読まない人にこそ読んでほしいんですが……。
推敲と言えば、ふつう誤字脱字のチェックですよね。スマホやパソコンで打っていれば誤変換とか。濁点ぬけもけっこう多い。
でも、誤字脱字だけをなおすわけじゃない。僕の場合はこのとき、文章のリズムを整えるので、言葉の重複なんかも注意してます。
同じ言葉を近いところでくりかえし使わない。これは小説の鉄則。これがなくなるだけで、ぐんと文章がプロっぽく見えます。
この重複には主語や述語も入っていて、僕は、僕は、僕はと一文ずつについてると、くどい。三人称なら視点人物の名前。つい龍郎は、龍郎は、龍郎はと主役の名前を連呼してしまいがちだけど、僕は五、六行に一回ていどになるよう抑えてます。少なくとも一文のなかに二度三度と入れないようにしてる。
小説はこの省略がうまくできないといけません。はぶいても、ちゃんと意味が伝わらないといけないし。
たとえば、今、推敲中の僕の話の一節です。以下、例文。
昔の因縁のことを知っている人はいるかいないかわからないものの、家人の人柄などは使用人からでも聞ける。意外と重要なことだ。人が悪魔化するときには、周囲の人との人間関係が大きく作用するからだ。
これ、書いてるときはなんとも思わなかったけど、よく見たら『人』っていう漢字がこの一段落のなかに七回も入ってますね。内容的にしかたないとこもあるけど、これはさすがに多い。せめて半分に減らしたい。
昔の因縁を誰かが知っているかどうかはわからない。が、
七回が二回までに減らせた! こっちのほうが断然スッキリしてますよね?
『人』を言いかえたのもあるけど、『こと』が二回あったので、一か所なくしました。意外とこれだけで読みやすさは違ってくる。長いセンテンスも短く切る。
さて、今度は述語。
述語は同じ語尾が連続することをさける。た、で終わる文章が五、六回も続くと単調なリズムになる。
ちなみに、ここまでの文章をあらためて見てもらえば、例文をのぞき、同じ語尾が連続してるのは二回だけです。『い』で終わる連続が一回。『る』が一回。
語尾って、文体のリズムに直結するので、気をつかってる書き手さん、わりと多いですね。
僕はなるべく違う語尾をじゅんぐり使いつつ、あえて同じ語尾を三回くらい連続させるときがあります。同じ語感をくりかえすことで、印象を強めたいときですね。
彼の秘密とはなんなのか?
誰にも言えないことなのか?
私にさえ話せないほどなのか?
みたいな感じですね。たたみかけるような強い語調になります。
さて、このへんくらいまでは、「もちろん私もやってます!」というかた、多いんじゃないですかね。
このエッセイのなかでも何度も書いたし。
じゃあ、推敲で手直しするのはこれだけかと言えば、まだある。
これは、もしかしたら僕だけの書き癖かもしれないんですが……。
僕の文章、読みやすい、意味が伝わりやすい、リズムがあると、よく言ってもらえるんですが、じつは推敲前は、もっさりしてるんですよ。
ていうのも、変な癖があって。
最初に気づいたのは、高校三年くらいのときだったかな?
「あれ、僕の文章って、なんか、まわりくどい?」と、あるとき感じました。で、何がそう思わせるのか何度も読みなおしたんです。
そのとき悟ったのは、異様にあいまいな言葉が多いってことでした。
たとえば、『〜だというように感じた。』『〇〇さん、何かたりないものはありますか?』など。
ほかにも、『〜のようだった』とか。『〜ではないかと思った』『であるような気がする』などのように、ハッキリ断言しない言いまわしが多い。
これ、性格的なものなんですかねぇ。そう言えば、リアルな生活のなかで、ハッキリ言い放つのは相手に悪い気がして、ちょっとぼかした言いかたすることが多いかも。
なので、それに気づいてからは、なるべく、そういうのを見つけたら、推敲のさいに省略するようにしてます。
何か、何か、なんとなく、と見たら消す。あいまいな述語は断定形にあらためる。
これをやりすぎてるから『文章が冷たい』って選評を受けるんだろうか?w
以下、例文。
「この家で怪奇なことが起こってるというので、調べることになりました。おれは本柳龍郎です。よろしくお願いします。さっそくですが、みなさんのお話を聞きたいんですが、まずは自己紹介してくださいますか?」
これなんかも駄文ですよね。まわりくどいし、『ですが』が二回重なってる。ここでも『こと』が重複してるなぁ。
なおすと、こうなる。
「この家で起こる怪奇なことの原因を調べています。本柳龍郎です。さっそくですが、みなさんのお話を聞かせてください。まずは自己紹介をお願いします」
どっちが読みやすいかは明白。
なんなら、さらに『こと』をなくして、『この家で起こる怪異の原因を調べています』でもいい。
みなさんも、「この単語なくても意味わかるな」と思えば、どんどん消していってください。一文のなかでほんの五文字でも、長編一作で積みかさなると、そうとうな文字数になります。五十字のなかの五文字なら、十万字では一万字ですからね。
規定の十万字に達しさえすればいい、ではなく、ムダのない文章のみで十万字を目指しましょう。そのほうが展開も早くなるし、内容も濃くなるわけですから。どっちが面白いかは自明の理です。
逆に言えば、あとで推敲をしっかりやるんであれば、最初に書くときは文章なんて、てきとうでいいんです。そのほうが早く書けるので。初めは筆致より展開を気にしたほうがいいですね。
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