キャラクターを崩壊させないギャップ



 キャラクター造形。

 ラノベやキャラクター重視の作品において、一番重要なことですよね。魅力的なキャラクター。とにかく、何をおいてもそれが求められる。


 魅力的なキャラクター作りと言うと、とかくギャップと言われますよね。平凡でなく、ありきたりでなく、印象的、個性的なキャラクター。それには、ギャップが必要なのだ、と。


 魅力的なキャラ作りそのものに関しては、さほど言うことはないですよね。とくに異性に関しては、けっきょく理想のタイプをモリモリ盛りこんじゃえばいいだけなんで。


 ただ、キャラクター性って、どのていど個性が必要なのかってのは、作品のジャンルによっても違ってきます。ラノベは強めがいいんだろうけど、ミステリーなどで変に個性的だと悪目立ちしちゃうし。たいてい探偵は変人ですが、犯人は一見ふつうの人が多い。裏の顔はあったりしますが。


 ところで、ギャップって、どこまでが許されるんでしょうか?

 たしかに、ギャップの見える瞬間って、ドキッとします。清純派と思ってたのに、ころんだときチラリと見えたパンツがレースの赤だった。あきらかに勝負パンツ的な……とかね。まあ、これはぜんぜん許される範囲。


 ラノベ読まないんで、小説の例はよくわからないんですが、マンガ読んでると、たまに物語の最初と最後でキャラクターの扱いがずいぶん変わっちゃう話ってないですか?

 例にあげるとディスることになりそうで、あんまりおおっぴらに言えないんですが……。


 たとえば、とある少女マンガで、けっこう古いやつ。ゲイの怪盗が主役。最初はオシャレで耽美でカッコいいロン毛の美青年として描かれてました。

 でも、敵役として出てきた脇役の軍人のほうを、おそらく作者さまが気に入ってしまったんでしょうね。途中から怪盗はすっかりギャグ担当になり、出番もほとんど軍人に奪われてしまったのです……。

 面白い作品でしたが、なので後半はグダグダ。なんとなく、いつのまにか終わった——そんな感じでした。


 これに似た崩壊を招いた少女マンガをもう一作、知ってるなぁ。それもじゃっかんBLっぽいやつで、最初は超絶美形の扱いで男からモテモテだった主役(男)が、巻を追うごとに大食らい担当になっていき、バディの相棒とか、上司役にあたるメガネイケメンとかのほうが耽美担当に変わっていった。その作品も連載打ち切りの形で自然消滅したと思う。最後、つまんなかったもんね。ちなみに死神物でした。

 上記二作品ともわかったかたはスゴイですよw


 この二作の共通点は、作者のお気に入りキャラが途中で変わっちゃったこと。

 つまり、主役が作者の寵愛を失い、飽きられた。それによって、キャラクターが崩壊し、ストーリーをひっぱっていく求心力を持つ人物がいなくなった。そこはやっぱり主役として生まれてきてますから、物語の根幹にかかわる重要な設定を背負ってます。それ以外の人物でストーリーを進めようとすると、どうしても遠まわりだったり、外野感が強かったりする。最初のコンセプトから外れたりね。


 さて、じゃあ、そもそも、なんで大事な主役なのに飽きられちゃったのか?


 作者が自作キャラに飽きるのには二パターンあるような気がします。


 一つはキャラクターが成長しない(変化しない)、またはあらゆるシチュを書きたおしてになった。


 二つめはギャップを盛りこみすぎて最初の設定とは別人になってしまった。


 どういうことか説明すると……いやまあ、説明しなくても想像つくかもですが、途中でやめると気持ち悪いじゃないですかw


 けっきょく、キャラクター重視の作品って、好きなキャラにあんなことやこんなことをさせたいっていう作者の願望のもとに書かれてるんで、どんな好きなキャラクターでも、たいていはあるていど書けば、させたいことがなくなる。同じことのくりかえしでは新鮮味がないので、作者のモチベが続かない。

 日常ほのぼの系など、この状態になると途中放棄されるんじゃないでしょうか? 要するに、エタですね。

 だからこそ、シリーズ全体を通したストーリーがないと続かなくなるんですが。


 二つめ。

 こっちは一つめと似て非なる理由ですね。

 キャラに飽きそうになったとき、別の面を見せるために、ギャップを足す。こんなに美形なのに、じつは食いしん坊で大食漢なんです。さらに飽きそうになったときに、また足す。こんなに美形なのに、じつはガキくさくて無邪気なんです。さらにまた足す。もうなんかあんまり美形に思えないかもしれないけど、仕事も横着なんですよ……。


 はい。前述の死神マンガを例に出しました。これじゃ読者だって、そのキャラクターを魅力的だと、もう思わないですよね。作者自身も自分の盛りこんだ新設定のせいで変わりはてたキャラに愛想をつかして、ほかにお気に入りを見つけてしまった。


 ギャップはたしかに、それを出した瞬間は新鮮味があります。でも、それが定着しちゃうとギャップではなくなってしまうので、また新しいギャップを出さないといけなくなる。エンドレスの連鎖なんです。だからといって、なんでもかんでもギャップ、ギャップで入れてしまうと、キャラが崩壊していく。そのキャラクターとして、どこまでなら『新しい魅力』の範囲で受け入れられるか、そこを見極めるのが大切ですね。やりすぎると魅力ではなくなるので。


 そのキャラのやりそうなこと、やっててもおかしくないことを決めとくのは当然として、このキャラが絶対にしないこと、できないことっていうのも日ごろから決めておくといいかもしれません。


 たとえば、うちのキャラの大半は『カトちゃんペッ』はしません。しろと言われたら怒り狂う人もいます。

 でも、三回まわってワンなら、やりかたによっては可愛いので、半数くらいはできそう。ワレスさんはできないけど、ハシェドならできる!


 キャラクターを一人の人間として、尊厳をもって慈しんでいれば、崩壊させることはまずないはずです。キャラを愛しましょう。それに尽きます。


 ではまた、気がむけば、いつか更新するかもしれません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る