読まれる小説12 ミステリーのコツ(前編)



 これも前のエッセイに書いたんですが……いちおうミステリー書きなんで、しつこく載せときます。


 カクヨムでは圧倒的にファンタジー、ラブコメ作品が多いですよね。読まれるものもそっちだし、ミステリー、ホラーなどは、もはや過疎区域と呼ばれている。ホラー思いついたけど、読まれないから書くのやめよっかな、とさえ近況ノートに書いてる人がいた。


 テレビ番組も以前はあれほどにぎわった二時間サスペンスが消え去り、ドラマもめっきりミステリーは減少した。今期は奇跡的に『天国と地獄〜サイコな二人〜』も『青のS P』もめっちゃ面白いな。


 ちなみに、S Pは青春ドラマと警察物のコンフュージョン。天国と地獄はSFとサスペンスのハイブリッド。純粋なミステリーではないところがミソかも。

 もはや、純粋な本格ミステリーでは数字がとれない……。


 というより、どこかの時点で出版業界は良質なミステリー書きの発掘育成に失敗しちゃったんだと思います。


 ミステリーって書きためるには、そうとうの時間がかかるけど、ドラマだと20万字の長編一作が一時間ないし二時間で終わっちゃうんで。少なくともシリーズ作品を10冊ていど書いてないと、ワンクールのドラマにならない。

 そんなにパカパカ、すごいトリックを思いつく人って、なかなかいないですから。


 僕自身もミステリーを書いてはいるけど、トリックを考えるのは苦手です。

 というか、業界では、あらゆるトリックは先人によって書きつくされたと言われているんで、そんななかで読者を「あっ」と言わせる斬新なトリックを考えろって言われてもね。


 今、書かれてるトリックは、以前、誰かが書いたものの焼き直しか、トリックとトリックの合体か、シチュを変えるとか、そんなものですよね。

 いっそ、トリックらしいトリックはなく、クライムサスペンスで行っちゃうとか。


 なんで、すたれたかっていうと、ミステリーはとにかく書くのに手間ひまかかるから。

 トリックもそうだし、本格とか新本格とか言われるものにしようと思えば、それなりにルールがある。


「なんとなくミステリーっぽいもの書きたいから書いてみた」と、たまに近況ノートで見ますが、たぶん、残念ながら、それは本格ミステリーのルールには乗っ取ってないです。ふだんからミステリー好きでたくさん読んできたという人が書いたのなら別ですが。


 これまで、SF、ファンタジー、ホラー、ミステリー、短編でなら恋愛物、現代ドラマ、青春物、ラブコメ、子どもむけミステリー、絵本、童話、エッセイなど、幅広く書いてきましたが、そのなかでもダントツで書くのが難しいのはミステリーです。


 では、ミステリーのルール。

 ミステリーにもいろいろあるけど、そのなかでも本格ミステリーって言われるやつです。


 本格ミステリーにおいて、もっとも大事なのは読者と作者との知恵くらべ。謎解きまでに犯人などを言い当てられれば読者の勝ち。当てられなければ作者の勝ち。当然、作者は犯人をあてられないように、さまざまな趣向を凝らします。


 その前に、犯人などと書きましたが、本格ミステリーであつかわれる謎解きには、三つのダニットがあります。

 フーダニット、ハウダニット、ホワイダニット。

 つまり、誰が殺したのか。

 どうやって殺したのか。

 なぜ殺したのか。


 たいていは誰が殺したのかという犯人探しで進むんですが、たまに犯人はわかってるのに、どうしても殺しかたがわからなくて逮捕できない、とかありますよね。途中までフーダニットで来て、途中でハウダニットに移行する、と言った複合技が今の主流なのかなと。ハウダニットはそのぶん、殺しかた——つまり、トリックが奇抜な上しっかりしてないと、面白い作品にはできません。ちょっとハードルの高いミステリーと言えるでしょう。


 さて、自分はふつうに犯人探しで行こうかなとか、いやいや、人間心理にスポットを当てたヒューマンミステリーだ、ホワイダニットで行くとか決まったら。


 いざ、書いていくわけですが、ここで忠告。

 これは必須です。

 書きだす前に、ふだん「おれは絶対プロットなんか作らない!」と豪語している人でも、ミステリーにおいてはあるていど、ぼんやりとでもいいので構想を持っておきましょう。ここで言う構想とは、トリックを最低でも一つ、そして犯人。これだけは必ず決めてから書きます。

 大事なことですので、もう一度。

 トリックを最低でも一つ、そして犯人。これだけは必ず決めてから書きます!


 犯人を決めずになんとなく書きだすことも、できなくはないですが……まあ、エタりますよね。話が進むにつれて矛盾が出てくるし、うまくまとまらなくなって、作者自身がギブアップすることになります。


 いや、慣れればね。これも、さんざん本格ミステリー書きちらしてきた人なら、なんとなく勘でそれっぽいものも書けますが、慣れるまでは絶対にトリックと犯人は必須です。


 なぜかと言うと、ミステリーは以下のように書かなければならない決まりがあるからです。


 その一、本格ミステリーは真剣勝負! よって、フェアでなければならない。


 これ、どういうことかって?

 文字数がかさんできたので、次回に持ちこします。

 ミステリーっぽい引きだなぁw

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