視点について
ラスボスなみに手強いやつ1
※視点はみんなが悩むことなので、前のエッセイに書いてた関連のことをまんま持ってきました。おもに初心者から中級者向けに。前に読んだ人はごめんなさい。
ここまでの四章で、初心者のかたに役立つであろうことは、おおよそ書きました。(初心者向けエッセイで、三点リーダは偶数で使うとか書いてあった)
じゃあ、もう書くことないかな?
いえ、じつは、そうじゃないんです。
初心者のかたに言っても混乱させるだけだから、ここまで、あえて、まったくふれずに来たことがあります。
そうです。おそらく、多くの書き手さんが苦しんだであろうアイツ。
視点です。
ここからさきは、初心者のかたは、まだあまり気にしないでください。
最初に書いてから少なくとも半年(本音を言えば一年以上)は経って、短編を三十は書いた、長編なら三作ほど完結したよ——というかたにとって、そこからさきの技術向上の大きな壁になる存在。それが、視点です。
そろそろ書きなれてきたし、本気で小説がうまくなりたいな、そう思い始めたときに重要になってくる技術。
視点については、自作ダメ出し講座でも、けっこう詳しく書いたんですが、そのときは、かなり書きなれたかたのために書きました。
今回は、さっきも言ったとおり、初心者から中級にかかろうというかたにわかりやすいように説明しようと思います。
小説を書き始めると、わりとすぐに、この視点という言葉を耳にすると思います。あるいは、人称ですね。一人称、三人称という言葉、聞いたことありませんか?
初心者のかたが今、おぼえておくのは、これだけでいいです。視点には、一人称と三人称がある、ということ。
中級以上のかたには、すでに知っていることで、わずらわしいかもしれませんが、初心者のかたのために説明しておきますね。
まず、視点ですが、これは、物語の進行をその目で見る人物のことです。物語の中心にいて、作者が描写したいことをその目で見てくれる人物。
おおむね、主役ですね。
物語は主役を中心に進んでいくので。
書き手にとっても、そのことがハッキリわかるのは、一人称です。一人称とは、僕、私、おれ、あたし、など、自分を示す代名詞で書かれる文章のことです。
例文でも使っているのが、それですね。
僕は雨の降りそうな空もようを見て、傘を探した。
僕は遅刻しそうだ。電車が来た。しまりだすドアのすきまに、僕は体をすべりこませた。
こういう書きかたが一人称です。
その人が見たこと、聞いたことをそのまま書けるし、そのとき感じたこと、考えたことも書けるので、キャラクターの心情をダイレクトに読者に伝えられます。読み手に感情移入してもらえるので、共感を得られやすい書きかたと言えます。
また、書き手自身、視点が乱れにくいという利点もあります。
一人称では基本的に、ほかの人物は外から見たことしか書けないので、視点の狂いようがありません。
なので、初心者向けの書きかたは、この一人称です。
ただし、一人称には、これをしちゃいけないという制約が多くあります。
一人称は主役の目を借りた書きかたなので、主役が知らない事実を書くことはできません。主役が行ったこともない場所をとつぜん語りだせませんし、自分がいないあいだに他の登場人物が話していた内容を書くこともできません。それらを、主役は知るはずがないですからね。
そういう場合は、“前にネットで調べてみたんだが、この店は町で一番人気のメニューを置いてるらしい”というように、なぜ知っているかという経緯を記します。
のちになってAさんから聞いた。昨日、僕が帰ったあと、AさんとBは、こんなことを話したのだそうだ——というように伝聞調にするなどの工夫が必要です。
これは禁止事項ではないですが、一人称を使う場合、なるべくなら同一人物を、物語の最初から最後まで視点人物に固定したほうが、読者の混乱が少ないです。
一人称=主役と読者は感じます。一人称なのに、あまりにも大勢に視点が動くと、読者は誰に感情移入していいかわからなくなり、主役が埋没してしまいます。
一人称の最大の武器は、読者を主役の味方につけることです。複数人物に視点を移すのは、最大の武器をなげすてたことになります。
とはいえ、たとえば恋愛物で、カップリング予定のヒーローとヒロインをダブルキャストにしたいときなど、例外的に、二人とも一人称で書いても不自然ではないでしょう。
ただし、ここで、もう一つ禁止事項。
一人称を使う場合は、ワンシーンのなかで視点人物を切りかえるのは、やめてください。
恋愛物だと、ある一つの場面の、男女両方の気持ちを表現したいですよね。ですが、一人称でそれをやっちゃうと、視点の狂いまくった話になってしまうので。
視点の切りかえは場面ごとに行う、これが基本です。
初心者のかたには、だんだん、わけわからなくなってきましたよね? なので、初心者のかたが一人称を使うときは、必ず一人を主役にして、話の全編を通し、その人の見たことだけを書きましょう。
一人称と三人称をまぜて使っちゃいけないという禁止事項もあるんですが、一人を主役にしているかぎり、まざることもないですから。
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