番外編 女装をした天宮

 帰ってくると、何故かは分からないが騒がしい。この寮は騒がしいか死んだように静かなのかどっちかに偏りすぎだと思いました。

 少しだけ玄関から声をかけてみるか。


「おーい! うるさいぞー!」


 少しだけ静寂を取り戻す。そして、天宮の声がはっきりと聞こえるようになった。


「あー! 相馬くんが帰ってきたよ! 涼風さん!」

「そんな嘘に騙されると思うなよ」

「さっきの聞こえなかったの?」

「待って! その格好で行っちゃ……った……」


 ばたばたと階段を降りてくる。まるで犯罪者から逃れるように焦りに焦った感じが伝わってきた。


「はぁ……はぁ……、相馬くん……た、助けて……」


 降りてきたのは天宮遥だったが、その格好で大体察しがついた。その格好とは、うちの女子生徒の制服だった。


 俺の部屋の卓を中心にして4人が座っていた。卓の上に制服を置いて。


「制服は、要らないんじゃないかな?」

「一応あった方がいいんだよ! 説得力あるし!」


天宮の圧が凄い。あと、説得力ってなんだ。


「まず、涼風はどうしてこれを着せようとしたんだ?「もしかしたら、着せてみたら可愛いかも!」なんて言わないよな」

「言うね! 言った! 絶対言った! もう、そのまんま言おうとしてたよ! だって可愛いじゃん! 遥くん! 男なのに! お、と、こ!」

「わー、わかったって、天宮が可愛いってことは」

「そこは否定しないんだね。あと、遥でいいよ。男同士なんだし」

「わかった。これからはそう呼ばせてもらうよ」


 くだらない話が長々と続き、同じ言葉を何回もいい、同じことを言い回し、ただただ時間が過ぎていった。

 遠野が、「もう、結論でないから女装趣味があるって設定でいいんじゃないかな?」などと爆弾を落とし、その日が終わった。

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実は俺の〇〇だった。 時雨色 @sigure_iro

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