第8話(最終話)刀と鞘の絆

 結城ゆうき凛々りんりんがアイドルを、ひいては芸能界を引退したニュースがお茶の間を騒がせてから数年後。

 結城凛々は御剣みつるぎ刀子とうこという普通の女の子に戻り、芸能関係の専門学校を卒業した。

 太刀川たちかわ鞘香さやかの立ち上げた事務所には結城凛々に憧れてアイドルを目指す候補生たちが多く入所して、なかなかの大所帯になっていた。

 鞘香は事務所の社長でありながら、同時にプロデューサー業を続けていた。やはり彼女はプロデューサーの仕事が好きなままだった。

 そして、刀子は鞘香の事務所に就職した。今度はアイドルとしてではなく、アイドルをサポートするマネージャーとして。

「あの、もしかして結城凛々さん……?」

 結城凛々を知る若きアイドルの卵たちは、凛々本人に逢えて驚くと同時に光栄と喜びの表情を浮かべる。

「そうよ。今度は担当アイドルに勇気を与える存在になろうかと思ってね。……まあ、まだ新米マネージャーなんだけど。ちゃんとついてきなさいよね、右も左も分からないひよっこアイドルたち!」

「ふふ、刀子、気合十分じゃないか」

 鞘香は微笑ましいとでも言いたげに刀子を見て、からかうように笑う。

「鞘香さ……太刀川先輩の補佐をさせていただきます! 私たち、『刀と鞘』、ですからね!」

「じゃあ、行こうか。久々のステージ裏へ!」

 そう、今日はアイドル候補生たちの初めてのお披露目ライブである。

 自分にもこんな時代があった、と思いながら、刀子はステージの太陽のように眩しいライトに、ステージ脇から目を細める。

「よし、行ってきなさい、ひよっこども!」

 刀子と鞘香は、アイドルたちを勇気づけるように背中を押す。舞台に駆け出すアイドルの卵たちを見ながら、どちらともなく手を繋いでいた。

「……鞘香さん。あの子たちなら、きっとトップアイドルになれますよね」

「私はもうトップアイドルに固執してはいないけど……そうだね、きっと」

 かつて芸能界の頂点へ羽ばたこうとしていたアイドルは、今はアイドルたちを見守りサポートする立場になったけれど。

 鞘香に寄り添う刀子の顔は、幸せに満ちていたのであった。


〈完〉

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アイドル×プロデューサー~刀子と鞘香の場合~ 永久保セツナ @0922

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