第58話 殺さない為の拳


 散々ローテーションで暴れまわり、短い睡眠を終え俺達は翌日を迎えた。

 次の日の予定は前日と変わりない。

 女生徒達の教育と、普段と変わらない野営。

 但し、大して寝て居ない為多少眠気は残るが。


 「キタヤマ様達の弱点を見つけましたわ」


 戦闘が一段落した時、イリスがそんな事を言ってきた。

 何かと思って視線を下げれば、彼女は随分と深刻そうな顔をしている。


 「前衛が危なくなった時、真っ先に飛び出すのはキタヤマ様です。 まだ、対処できるかもしれない段階で、貴方は飛び出す」


 「おいおい、俺らは護衛だぜ? お嬢様方に傷の一つでも付ければ、俺らは――」


 「怖いんでしょう? 仲間が傷つくことが」


 寝ぼけた頭を、ガツンと殴られた気分だった。


 「先程キタヤマ様が助けに入った時なんて、私達後衛でも十分……とは言いませんが、ギリギリ間に合う時間はありました。 それが失敗しても、ニシダ様やミナミ様で十分に対処可能な距離。 それでも貴方は飛び出した」


 「いや、そりゃ俺がリーダーだし。 俺の指示が遅れたら……」


 「だからこそ、自分で対処した。 ですよね? 貴方は少し背負い過ぎな気がします。 昨日の夜発散したかと思えば、発散し過ぎて素が見えてしまったみたいですね。 誰かを守ろう、誰かを救おうとする気持ちは美徳ですが……それは弱点にも変わります。 あくまで弱点、弱さではありません」


 随分と意味深な言葉を吐いてくるイリスに首を傾げてしまうが、その様子を見た彼女は大きなため息を吐いた。

 えっと、守っている奴らが弱点になるってのは理解できるが……共に守り合う関係なら問題ないんじゃ?

 そんな事を考えながら彼女の言葉を待っていると。

 意を決したように、彼女は俺に対して……いや、“悪食”に対しての言葉を放った。


 「貴方方は“人”と戦うべきではない。 きっと、戦っている相手の背景までも捉えてしまう。 余分な責任まで感じてしまう。 だからこそ、人を“殺す”べきじゃない」


 「おいおい、俺らはウォーカーだぜ? 傭兵じゃない。 あくまでも俺らの相手は魔獣や魔物、人間は専門外だ」


 ハッハッハと笑って躱してみれば、彼女の表情は更に暗くなった。

 これもまた、俺の常識が外れている事を示しているのだろうか。


 「ウォーカーには護衛や警護、そう言った依頼もあります。 その際に相手するのは人間の可能性も。 そして何より、戦争が起こった際に駆り出されるのはウォーカーなんですよ? ちゃんと理解していますか? その時貴方は、人間を穿てますか? とてもじゃないですけど、今日の様子を見ると仲間を大事にし過ぎて居ます。 自身を犠牲にし過ぎて居ます。 そんな状態で、人間を殺せますか?」


 とても苦しそうに吐くその言葉は、まるでナイフの様だった。

 俺の認識の甘さ、覚悟の無さ。

 今まで覆い隠していた部分に、鋭く刺し込んでくるような言葉。

 実際の所、どうなのだろう?

 ゴブリンやオークと言った人型モンスターなら問題はなかった。

 だが、本当に“人”が相手になった場合。

 俺達はどうなるんだ?

 ちょっと、想像が付かない。

 “勇者”に向かって槍を投げた事はある。

 だがあれは“殺す”為に投げたのではなく、止める為にヤツの足場に投げただけだ。

 もしも“殺す”事が前提になった場合、俺は槍を投げられるのだろうか?

 しかし守るべき相手、保護する子供達が現在進行形で増えている俺達は、死ぬわけにはいかない。

 ソレだけは確かだ。

 そんな状況であったとしても、俺は相手に槍を叩き込む事が出来るのだろうか。


 「悪い、ちょっと今すぐ答えは出せねぇ」


 「なるべく、早い内に答えを出しておく事をお勧めいたします。 良くも悪くも、“悪食”は目立っていますから。 その手の依頼が回ってくる可能性は否定できません」


 そんな訳で、俺達の受けた依頼は進んでいく。

 今日一日だけ狩りをして、明日には帰る。

 魔獣の種類を見る限り、やはり楽な仕事だ。

 しかも教えている少女たちはかなり飲み込みが早い。

 順風満帆、そう言えるはずなのに。

 何故かイリスの言葉が胸に残り、今日だけは穂先が上手く収まらなかった。


 ――――


 最終日は呆気なく訪れた。

 ベースキャンプからほとんど離れることなく、“お坊ちゃま”を護衛する仕事。

 不満はある、憤りもある。

 しかし、コレが仕事だ。

 そうして俺達は全てを飲み込み、ココに居る。

 なんて事を思っている間にも、仕事を終えた他の“護衛”達は帰って行く。

 誰しも、何処か気疲れした様子を見せながら。


 「団長、我々も……」


 「分かっている、分かっているが……もう少しだけ」


 何度も言うが、今日は最終日なのだ。

 どの生徒も帰還して、成果を教師達に発表する。

 その結果は後日公表され、順位が付けられる。

 我々が護衛した貴族もそれなりに足を進めたし、高成績なのは間違いない。

 だとしても、だ。

 彼等がいるのだ。

 “悪食”と名乗る彼らが居る以上、我々が最上位などという考えは甘えだろう。

 なんたって、あの王猪と角牛の群を平然と正面から討伐する連中なんだ。

 知りたい。

 彼等がどれ程の魔獣を討伐して来たのか。

 彼等に教えを請うた生徒達が、どれ程成長したのか。

 その結果で、俺の団長としての自信は随分と左右される事だろう。


 なんて、思っている時だった。


 「私達が最後ですか? これは大変失礼いたしました。 なにぶん距離がありましたので」


 そんな事を言いながら、ベースキャンプに一度も顔を見せなかった面々が森から帰還してきた。

 4人の学生、そして4人の黒い鎧。

 誰しも疲れた表情を浮かべている中、このパーティだけは涼し気な表情で戻って来た。

 誰よりも過酷な環境に置かれていたというのに、学生でさえ余裕の笑みを浮かべている。


 「提示いたしますわね、私達の討伐出来た分は……これだけですわ」


 そういってマジックバックをひっくり返す少女は、随分と悔し気だ。

 だがしかし、出てくる物は常軌を逸していた。

 王猪の毛皮が複数出て来た事にも驚いたが、それ以外にも闇狼や小型の魔獣の毛皮や爪や角。

 そう言ったモノがゴロゴロと出てくる。

 しかも、全てちゃんと処理されているのだ。

 アレならマジックバッグにより多く入れられるし、余分な肉などは見当たらない。

 まさか、あれも“彼等”が教えたのか? この短期間に?


 「ふざけるな! コイツらだけでそんな魔獣を狩れる訳がない! どうせ護衛の連中が狩った魔獣だろ!?」


 情けない。

 正直それしか思えなかった。

 声を上げたのは、我々の護衛対象。

 クライシス家のお坊ちゃま。


 「イリスならともかく、他はハズレの貧乏貴族ばかりじゃないか! どうせ凄腕の護衛を雇ったに決まっている!」


 もはや聞いていて恥ずかしい。

 その“凄腕”と呼ばれる護衛として、我々を大金で雇い、更には殆どの狩りを騎士団で済ませ、最後の一打だけ譲った様な戦闘を繰り返したお坊ちゃま。

 これは相手だけでは無く、私達騎士団に対しても侮辱行為に他ならない。

 だというのに、彼は止まらなかった。


 「そんな奴隷モドキみたいな連中とずっと夜を過ごしたんだ。 今度の夜会では何を言われるか分かった物じゃないなイリス! 賊に純潔を売り払って成果を上げたとなれば、他の貴族から何を言われるか――」


 「あら、“悪食”の皆様に初めての御相手をして頂けたなら、私としても本望なんですけどね……如何せん皆様紳士過ぎまして。 女体よりも“狩り”を優先されましたわ」


 「は?」


 そんな事を言いながら、スッと右手を上げるイリス嬢。

 すると、後ろに立っていた黒鎧の一人。

 一番小さくて、獣の耳を生やした少女がバッグをひっくり返した。


 「お土産は禁止という事なので、仕方ありませんね」


 呟きが聞こえたと同時に、滝の様に出てくる魔獣の素材と魔石。

 その場に立っているだけでは彼女が埋まってしまいそうな勢いで、移動しながらドンドンと素材をばら撒いていく。

 猪、鹿、狼、牛。

 そんな代表的なモノも数多くあり、他にも小型の魔獣の毛皮やら爪やら。

 馬鹿みたいな数が排出された。

 もはや、笑うしかない。


 「言ったでしょう? 私達が得られた魔獣素材は先程提示した物品。 そしてこれが護衛達……“悪食”が狩った魔獣素材の数々ですわ」


 今回の様な貴族様のイベントは、基本的に護衛が狩った魔獣も依頼主の手柄になる。

 それくらい狩れる護衛を雇える力があるんだという証明として。

 だが彼女達のパーティは、自身と護衛の成果をきっちりと分けていた訳だ。

 詰まる話、コレはもう……完敗という他ないだろう。


 「ふ、ふざけるなよ!? 不正に決まってる!」


 それでも認めないお坊ちゃまは、顔を真っ赤にしながらこちらを睨んだ。

 勘弁してくれ、いくらなんでもコレは俺のせいじゃない。

 なんて事を思った瞬間、この小僧はとんでもない事を言い始めた。


 「その成果を上げた証明を見せろ! ウチの護衛と、お前の所の護衛で一騎打ちだ! コレで勝てる様なら納得してやる!」


 余りにも自分勝手で、一方的な要求。

 こんな決闘、認められる訳が無い。

 俺達も、教師陣も、彼女達でされ呆れた表情を溢す中。


 「いいぜ、試したい事もある。 丁度良い」


 黒鎧のリーダーが、二本の槍を手に前へと踏み出した。

 あれは……間違いなく以前に見た死神。

 あの二本の槍で、王猪や角牛を薙ぎはらっていた強者。

 デッドライン。

 そう感じた男が、こちらに向かって歩み寄って来た。

 一度手合わせをしてみたい、そんな風に思っていたというのに。


 「相手は誰だ?」


 怖い。

 ただただ、そう感じた。

 アレはダメだ。

 超えちゃいけないラインだ。

 近づいてくる黒鎧を見て居るだけで、ガクガクと膝が震える。

 だとしても、だとしてもだ。

 俺はこの騎士団の長であり、今回の護衛対象の前なのだ。


 「俺が相手だ」


 そう言って、剣を抜いた。

 勝機なんて見えない。

 だとしても、部下にこの男と戦えというのは些か酷な命令だろう。

 私でさえ、漏らしてしまいそうな程の恐怖を感じているというのに。


 「手合わせを頼む。 私の名は――」


 「いらん。 次の瞬間には殺し合う相手の名前なんぞ、聞きたくない」


 殺し合う訳じゃないんだけどな……試合だよな、コレ。

試合だよな?

 そんな事を思いながら、威圧に負けて剣を構えた。

 あぁくそ、こんな依頼受けるんじゃなかった。

 随分な金額だったからこそ依頼を受けたが、止めておけば良かった。

 まさか最後にこんなヤツと一騎打ちする事になるとは。


 「いざ……尋常に勝負」


 「合図は任せる。 好きなタイミングで動きな」


 「では……金貨の落ちた瞬間という事で」


 言いながら部下に目配せをして、コイントスを指示。

 キンッ! という金貨を弾いた音が背後から聞こえた。

 その金貨は私を飛び越え、両者の中心へと落ちてくる。

 コレが落ちた時、私は“コレ”と剣を交えなければいけない。

 そう考えるだけで、心の中でため息を吐く。

 私が死んだときは、どうか家族をよろしく頼む。

 ――コツッ!

 金貨が地面に落ちた瞬間、足に力を入れた。

 全力で踏み込む!

 そんな事を考えた私の思考は……真っ白に染まった。


 「は?」


 「しゃぁぁぁっ!」


 もう目の前に、槍の穂先が迫っていたのだ。

 無理だ、避けられる筈がない。

 兜を突き破り、この槍は私の脳髄を弾き飛ばすのだろう。

 それくらいの勢いで、回避などする暇もない。

 そんな想像をしたところで、槍が“ズレ”た。


 「ぐぅっ!」


 槍の穂先が僅かにずれ、私の兜の脇からとんでもない轟音と共に火花が上がる。

 掠った。

 掠っただけのだ。

 だというのに、兜が弾け飛ぶ様な勢いだった。

 これは、本当に人間か?


 「ふんっ!」


 すぐ目の前に相手が居るのだ、呆けてばかりは居られない。

 槍を突き出した状態なら、相手は随分と無防備。

 そのわき腹に向かって思いきり剣を振り上げるが。


 「……チッ」


 彼は舌打ちを一つ溢しながら、もう一本の槍で平然とこちらの攻撃を受け流した。

 これくらいは想定内、騎士同士の試合でもままある事。

相手は槍で、こちらは両手剣。

 ならば離されれば不利になる。

 なにより、また先程の一撃を喰らう事になるだろう。

 アレは外れたのではない、ソレだけはしっかりと理解していた。

 次もまた外してくれる、そんな保障はどこにもないのだ。

 だからこそ必死で彼に食いついて行こうと地を蹴ったその時、腹に重い衝撃を受けた。


 「……ぅぐっ!」


 「貴様! 決闘において蹴りを使うなど恥と知れ!」


 後ろからお坊ちゃんの煩い声が聞こえる。

 しかしそのお陰で何をされたのか理解出来た。

 俺は蹴りを貰って後方に吹き飛ばされたのか……だとしたらまた距離が空いた事になる。

 不味い、早く起き上がらないと次の一手が。

 そんな事を考えながら慌てて状態を起こし、再び剣を正面に構えると。


 「……何を、している?」


 こちらの隙を突いてくる事を警戒していたというのに、彼は離れた位置に立ったまま二本の槍を地面に突き刺していた。

 そして、武器を置いたままこちらへと歩いてくる。

 ええと、コレはどうすれば良いのだろうか?

 決闘中に武器を自ら手放した場合、それは試合放棄を意味する。

 形だけ見ればこちらの勝ちになる訳だが……気のせいだろうか、彼の敵意が先程より強い気がするのは。


 「やってみると案外すんなり分かるもんだな。 いくら戦っても、俺に“人”は殺せない」


 「ええっと?」


 両手の拳を互いに打ち付けながら、彼はそんな事を呟きながら歩み寄ってくる。


 「だから、殴る事にした。 イリス、コレが俺の答えだ」


 「はぁぁぁ……やはり貴方は“人”と戦うべきではありませんね」


 イリス嬢が呆れた声を洩らしているが、少し待って欲しい。

 誰も止めに入らないという事は、このまま続行するのか?

 確かに格闘家なんかは居る、彼等の拳は“武器”とされる。

だが彼はそうではない筈だ。

 つまり俺は、武器を持たない相手に一方的に剣を向けなければいけないのか?

 流石にソレは、騎士のやる事では無――。


 「しゃぁっ!」


 「ぬぅっ!?」


 なんて事を、考えられる程甘い状況ではなかった。

 鋭い、とにかく鋭い拳。

 それに見たことも無い構えで、次々と拳が放たれる。

 早い、眼で追えない程の連撃だった。

 考えてみれば当たり前だ。

 槍をあれ程の力で穿つ人間なのだ、素手だけとなればそれ以上に速い速度で突き放ってくるのは当然。

 これでは剣を振るう事すら満足にさせてもらえない。


 「おぉ、こうちゃんのボクシングスタイル。 久々に見た」


 「ぼくしんぐ、というのですか? アレは」


 「いや~本格的なって訳じゃないけど、見様見真似で北君がやってたヤツ。 でも結構凄いんだよ?」


 他の黒鎧達が何かのんびり喋る声が聞こえてくるが、こちらとしてはそれどころではない。

 剣を構えようとすれば懐に飛び込まれ、籠手ごとを叩き落される。

 前に出ようとすれば、顔面に拳を浴びる。

 かといって後ろに下がれば、すぐさま軽いステップで距離を詰められる。

 これでは、先程とやろうとしている事が逆ではないか。


 「「団長!」」


 「おい何やってる! 押されっぱなしじゃないか!」


 部下の声と、耳障りな貴族の声。

 後者はどうでも良いが、部下たちの前の情けない姿は見せられない。

 だからこそ痛みと衝撃に耐え、せめて声だけは上げまいと歯を食いしばっていた訳だが。


 「流石は騎士様ってか、随分と耐えるじゃねぇか」


 「は、はは……簡単に膝を折る訳には、いかなくてな」


 先程からガツンガツンと兜の中に響いていた轟音は鳴り止み、いつの間に彼との間に一定の距離が開いていた。

 兜が変形してしまったのか、随分窮屈な上に視界が遮られている。

 邪魔だ。

 膝も笑っているし、息だって絶え絶えで胸が苦しい。

 ならば……そう考えてからは早かった。

 兜を脱ぎ去り、彼同様武器を地面突き立てる。


 「これでも騎士なんでな、無手の相手に武器を向けるのはどうにも気が引ける」


 「ハッ、振る余裕が無かっただけに見えたが……そういう事にしておいてやらぁ」


 そう言ってから、彼もまた兜を脱いで放り投げた。

 中から出て来たのは鎧同様、黒い髪と黒い瞳。

 これは私の条件に合わせてくれた、という事で良いのだろうか?

 随分と粋な事をしてくれる。

 正々堂々という言葉を形にした様な男だな、全く。


 「改めて、名前を聞いても良いだろうか? 俺はエドワード・タルマだ」


 「生憎と長い名前は覚えるのが苦手でね、エドって呼ぶことにするわ。 俺は北山だ」


 「キタヤマ……覚えておこう。 黒い戦士よ」


 「おい、その恥ずかしい呼び名を今すぐ止めろ」


 どうやらお気に召さなかったらしい。

 フッと軽く笑い声を上げてから、こちらも拳を構えた。

 多分もうろくに動けない、だからこそチャンスは次の一回のみ。

 兜を脱いだ事を、後悔させてやる。

 そう思ってニッと口元を吊り上げれば、彼もまた不敵な表情で口元を吊り上げた。


 「嫌いじゃないぜ、アンタみたいに真っすぐぶつかってくる奴は」


 「フッ、ここまでボコボコに殴っておきながら。 光栄だ、とでも言っておこう。 では……来い! キタヤマぁ!」


 「しゃぁっ!」


 会話を終えてから俺達は駆け出し、互いに拳を顔面に向けて突き出した。

 避けられない、というか互いに避ける気が無い。

 両者とも全力の拳を顔面に受け、鼻血が噴き出したのが分かった。

 あぁ、ダメだ。

 意識が……。


 「あんな坊ちゃんに付いてるくらいだから、どんな安っぽい騎士様かと思ったが……ナイスファイトだ、エド」


 「仕事と、プライドは……別、だ……」


 あぁ、当時は怖かった親父のパンチなんて、本当はネコパンチだったのか。

 そんな風に思える程、強烈な一撃。

 脳が揺れるどころか、首が捩じ切れるんじゃないかという程の衝撃だった。


 「「団長ー!」」


 部下たちが駆け寄ってくる声を最後に、私は意識を手放したのであった。

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