第6話
「今朝6時ごろ三島市に住む斎藤智さん(46)の死体が首から下をコンクリートで固められた状態で発見されました、手口が同じであることから先日起こった事件と同一犯とみて警察は捜査を進めています。」
「沙月のお父さん殺されちゃったのか」
沙月のお父さんには家に行ったときに何度かみたことあるけどいいお父さんって感じだったな表向きだけいい人ぶってるだけなのかな。しばらくはあの子と学校にいけないかなぁ。あの子学校来ても友達いないし、お父さんのこと嫌ってたからあの子としては嬉しいかもしれないな。後でMINEしとくか。
「お父さん死んじゃったね。」
「そうね、どうして殺されちゃったのかしら、何にも悪いことしてないのに」
「そんなわけないじゃないですか、何かしたから殺されたんですよ」
この人たちは本当にあの人が何もしてないと思っているのだろうか。お母さんを裏切った人が何もしてないはずがないのに。
「じゃあ沙月はお父さんが何かしたっていう証拠持ってるの?」
「持ってないけど」
姉にしては珍しく怪訝そうな顔をしている。どうやら本当にあの人のことを疑っていないらしい。
「ならなんでそんな言い方するの?」
「お姉ちゃんには関係ないでしょ」
「二人とも落ち着いて、今は今後のことを話しましょうやらなきゃいけないことがたくさんあるから喧嘩してる場合じゃないわ」
「瑞希さんは嫌じゃないの?旦那さんのこと悪く言われても」
「嫌だけどなんで殺されたのか分からない以上、智さんが人の恨みを買うようなことをしたのかもしれないから沙月ちゃんのことをあんまり責めることもできないわ」
「みんなお父さんのことを信じてないってことね」
姉が泣きそうな顔でそう言って家を飛び出していった。
瑞希さんは姉を追って家を出て行ったので残された私は学校に行く準備を始めた。
家を出たタイミングで姉と瑞希さんが帰ってきた。
「沙月ちゃん、学校に行くの?」
「だめですか?」
「こんな時に学校に行くとかあんた人間じゃないんじゃない?」
姉がこちらを睨みつけながらそんなことを言ってきた。
「お姉ちゃんみたいな馬鹿にはなりたくないからね」
「あんたってべんきょうばっかしてるから人間性をドブに捨ててきたんじゃない?」
「愛菜ちゃん落ち着いて、沙月ちゃんも悪気があるわけじゃないと思うから」
「悪気があるとかないとかそういう問題じゃないと思う」
落ち着いていた姉がまたイラつき始めた。
「葬儀とかの話は私がやっておくから沙月ちゃんは学校に行っておいで」
「こんな奴学校に行かせないほうがいいですよ、家に監禁でもしといたほうが私たちのためになるよ、いろんな意味で」
「まぁまぁ愛菜ちゃんとりあえず家の中に行きましょう」
皮肉めいたことを言いながら家に入っていった姉を心の中で馬鹿にしながら、学校へと向かった。
愛菜ちゃんはあれから自室から出てきていない。大好きなお父さんが何者かによって殺さてしまったから当然だろう。しかし、いつまでも学校を休んでいるわけにもいかないから、早く元気になってもらおう。
「愛菜ちゃん、昼ごはんドアの前に置いておくから食べられそうだったらたべてね」
返事はない。彼女は今何をしているのだろうか。寝ているのだろうか。そもそも、なぜ智さんは殺されたのだろう。不倫以外で何か恨まれるようなことをしていたのだろうか。だとしたら何をしていたのだろう。会社の同僚に聞いてみよう。
「私が登校してきたことにクラスメイトが驚いているのはわかるけど、なんであんたは目を輝かせながらこっちを見つめているの?」
「だって、父親が死んだのに平然と学校に来る頭のおかしな女の子がいるんだもん。なんで平然としてられるのか気になるじゃん」
「あんたってほんとにいい趣味してるよね」
「そんなことないよ、好奇心旺盛なだけだよ!」
やはり帰らなければいけないのだろうか。一番嫌いな人間が死んで清々しいのに、今ならきっといつもより勉強に集中できるはずだから帰りたくないんだけど。
そんなことを考えていたら、担任の先生が目の間にきて、
「今日はお家に帰りなさい。お父さんが亡くなって辛いだろう」
同情するような顔をしながらそんなことを言われた。辛くも、悲しくもないのに。
なんであの人のために辛いとか悲しいとか思えるのだろう、やはり姉はなにもしらないのか。
雨の地晴れ @ObaSatoshi
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