「サンタは赤い…?」

低迷アクション

第1話

「なぁっ“タケ”よぉっ?ちょっと聞きてぇんだけどよ、サンタってあっけぇよなっ?」


知人のタケは、彼の先輩“ヤギ”からの話に“またか…?”と心の中でため息をつく。

今日の先輩はだいぶ飲んでる。こーゆう時は絡み酒になるのが、毎度の事だ。


「ああ、赤いんじゃないすか?多分…」


「お前、いい加減に答えんなよ?こっちは“ケンヤ(息子の名前)”の生活に問題ないよう、父子家庭、気張ってんだぞ!」


「ああ、すんません。見たのは、息子さんなんすか?」


「おうっ!うちっ、2階が子供部屋だからよ。何か、夜中に、トイレとかで目ぇ覚めると、


“サンタさんが窓から覗いてる”ってさ。


でよ、もうすぐクリスマスだろ?だから、最初は


“なんだぁっ?サンタ早乗りしすぎだろっ!”


とかって笑ってたんだけどよ」


「けど…何すか?」


「いや、多分、子供の言う事だからよ。寝ぼけただけだと思うから、

あんまり気にしてねぇんだけど…


なんかさ、俺が間違ってなきゃぁなんだけどよ。

確かにサンタって赤いよ?それはそうだな。後は赤い帽子に大きな袋、

袋は持ってんらしいんだわ…けど、帽子は被ってない」


「被ってない?」


「代わりに…角…生えてるらしいんだよ。頭に…だから、

何だか、よくねぇもんじゃねぇかってさ…思ってさ」


珍しく神妙な顔の、ヤギの様子から、冗談の類では、なさそうだ。


「ヤギさん、息子さんがホントに見えてるとしての話ですけど…

そりゃ、やっぱりサンタじゃないっすよ」


「だよな、だったら、何だよ?あれ…」


「そりゃ…頭に角って言ったら、お…」


「おっ?」


口を“お”の発音で止めるヤギの前で、タケは、ある可能性に気づく。


「ヤギさん…」


「んっ?あんだよ、途中まで言った事、ひっこめんじゃ…」


「こないだの“現場”何処でしたっけ?」


「そりゃあっ、お前、飯野山のとこの解体と地ならしだけど…あ、おめーっ、

話聞いてなかったろ!今日、飲み始めに話した…」


「絡まないで!とにかく、そん時に何かどけたり、壊したりしました?」


「何だよ?そ、そんなの重機使ってっから、わかんねぇけど…あっ…」


思い出したといった顔のヤギの前に、自身の分の勘定を置いて、席を立つ。

正直、よくわからない。だが、関わらない方がいい。…


「おいっ…」


焦ったようなヤギの声に、タケは振り返り、言葉を告げる。


「先輩、さっきの、話の続きですけど…鬼っすよ。それ…多分…

早く何とかした方がいい。何とか出来ればですけど…」…(終)

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