第5話 決戦前夜
エイミは苦労の末? 食材も手に入れ、パン作りだけではなく、サンドウィッチづくりの構想にも着手していた。
最初は何度も失敗していたが、パン作りは何度かしているうちにさすがに手際がよくなり、美味しいものをつくれるようになってきた。
その出来栄えからか最近はザオルも文句を言わなくなってきた。
そして肝心な中身を何にしようかと考え、何度も試作をしたが、結局は基本に戻り、卵サラダを作ることに決めた。
普通の組み合わせだとつまらないからと、アレンジを考えてみたりもしたが、どれもボツになるような味ばかりで、人に出せるようなものではなかったからだ。
そしてそのレシピを簡単にメモに書き留める。
①もらった鳥胸肉をハーブで焼き、薄くスライスする。
②それをレタスとトマトと玉ねぎの上に乗っける。
③最後にチーズを入れた卵焼きをはさみ、もちもちの柔らかなパンで包む。
メニューが出来上がったエイミは、アルド、セバスちゃん、リィカを自宅に招くことにした。
長い間探してきた、ガリア―ドのアジトを見つけ、戦いに挑む前の日のことだった。
夕方ごろ、アルドとセバスちゃんとリィカは別々に彼女の家を訪れた。
全員が揃い、丸いテーブルに4人は腰かけると
「遂に明日だわ」とエイミが気持ちを込め、話し始める。
「もしかしたら明日で最後の日になってしまうかもしれない。でもなんとか奴らを倒して、お母さんの仇を打ちたい。そして多くの人を苦しめたこの戦いに終止符を打ちたい」
「そうだな」とアルドはつぶやき、「リィカモガンバリマス」とリィカも続く。
「私は戦いには参戦出来ないけど、心の中で応戦してるから。でも危ないときは逃げてよ。絶対死んじゃだめだからね。」
セバスチャンがの目に涙が溜まる。
それを見て、エイミも涙があふれ出しそうになる。
しかしそれをこらえ、右手で目をこすると、
「みんなの為に明日はがんばろう。でも張りつめすぎてもいけないから、みんなで、ワーッとやろうかと思って今日は誘ったの。料理も作ったからちょっと持ってくるね」と言い、席を立つと、何度かキッチンと席を往復しながら、料理を持ってくる。
その中には試行錯誤したサンドウィッチの姿もあった。
料理が席に並ぶと4人は食事に手を伸ばす。
「おー、サンドウィッチじゃん」
アルドがすぐさま気づく。
「おー、さすが! 良く気付いたね。約束だったから作ってみたよ」
「パンも作ったのか?」
「そうだけど、なんで?」
「いやー、こだわるなーと思って。フィーネが作ってくれたサンドウィッチのパンは近くに住んでたおばさんがパン作りが趣味で沢山作った時にもらったものだったんだ。フィーネもチャレンジしたみたいなんだけど、結構めんどくさくていつしかやめてたな」
エイミは目が点になる。
「えっ!一から作ってたんじゃないの?」
「うん。フィーネは料理は上手かったけど、そこまで凝るってほどではなかったな」
「マジか…、私の努力が…」
エイミは肩を落とす。
「でもすげー、美味いよ」
その一言にで笑顔になる。
「でしょ、でしょ?」
「あぁ、味のタイプは全く違うけど、色々てんこ盛りでいいな。パンも硬いより、やわらかい方が好きかもしれない」
そう言いながら口に放り込んでいく。
「ホント上達したねー」
横から少しからかいの目を向けながらセバスちゃんが言う。
「パンラシキモノガパンニ、シンカシマシタ」
空気を読まずリィカも続ける。
「えっ、いつも作ってるんじゃないの?」
真顔で聞くアルドに
「うるさい」とエイミは返す。
顔も少し赤くなっている。
そんな二人がほほえましく見えたセバスちゃんが、エイミが席を離れたときに、ある日、サンドウィッチを食べたいとアルドが言っていたから、何とか作ってあげようと努力していたことを伝えた。
「ありがとな」
席に戻ってきたエイミにアルドが言った。
「急にこっちの世界にやってきて、困惑してる俺を助けてくれてさ。で、俺の為にサンドウィッチも作ってくれて」
「いや、まぁ別にいいけど」
又してもエイミは顔が赤らむ。
「明日は絶対勝ってさ、又これ作ってくれよ」
「うん」
エイミは顔がほころぶ。
そうして四人は笑い合い、戦いへ向けた最後の日を楽しく過ごした。
対ガリア―ドの前哨戦。サンドウィッチとの戦いはエイミが苦戦をしながらも、終盤ノックアウト勝利をおさめた。
続けて明日、ホントの戦いがはじまる。
でもこの時はまだアルドは知らなかったんだ。
戦いの後「あぁいうこと」になってしまうことを。
アルドは再びエイミのサンドウィッチを食べれる日は訪れるのだろうか?
エイミの手作りサンド clara @clara10
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