第6話「ダーツしてゲーセン行って」
「着いたね清水さん。ラウンドワンに」
「うん、そうだね!」
午後1時半、バスから降りると目の前には巨大な建物の『ラウンドワン』。ゲームセンターやカラオケなどを楽しめる複合エンターテインメント施設だ。
「ゲーセンにカラオケ、ダーツもあるし楽しみだね」
「私もすごく楽しみ!ふふっ」
そう返す清水さんの表情は無邪気な子供のように可愛らしい笑顔を浮かべている。普段は清楚で落ち着いた雰囲気をしているけど、実際は明るい人でもありよく笑う。このギャップと笑顔に心を惹かれる男子も多いようだ。もちろん俺もその一人。
そんな大層おモテになる清水さんと(変装しているとはいえ)普段はクラスでも目立たない日陰者の俺が二人きりで遊びに行くなんて、何だこれは!?パラダイスか!?もし同じ学年の男子達に知られたら山に埋めらるだろうなぁ。
そんなことを考えていたらいつの間にか受付が済み中に入る。
「ねぇねぇ、どこ行くどこ行く?」
今度はぴょんぴょん跳ねながら行き先を聞いてくる。それに合わせておっぱいもゆさゆさ揺れる。あぁ、エチぃ……
「そうだね。ゲーセンとか面白いけど、ダーツも興味あるし」
「あっ!私もダーツやってみたい!ダーツ行こダーツ!」
「それじゃあダーツにしようか。お手柔らかにね、清水さん?」
「私も初めてやるけど負けないよ!」
あぁ、可愛いなぁ清水さん。普段は『負けないよ』なんて言わないのに。こういう子供っぽいところもあるんだなぁ。これは早くもいい収穫を得たぜ!
行き先を決めた俺達はエレベーターに乗ってダーツ場へ向かって行った。
♡
「やったーっ!また私の勝ちーっ!」
「うあ~っ、また負けた~っ……」
何戦かダーツ対決を繰り広げ勝率は五分五分。まぁ本当は清水さんの実力に合わせて勝ったりわざと負けたりしているんだけど。
「それにしても清水さん強いねぇ。本当に初めてかい?」
「うん。でも、昨日家で練習してきたの」
「家にダーツでもあるのかい?」
「ううん。ダーツは無いから投げる真似しただけだけど」
えっ!?何それかわいい!今日のためにわざわざ練習したってこと?しかも投げる真似だけとか可愛いなぁ。清水さんが家で練習してるとこ見たかった……
時間を確認すると時刻は午後2時半。さて、そろそろ若女さんのところに向かうとするか。
「あっ、
「えっ!?沢井くん大丈夫!?」
「う、うん……ごめんよ清水さん、ちょっとトイレに行ってくるよ……」
「うん……」
苦痛に
だが、心配してくれた清水さんには悪いけどお腹が痛いのは嘘。これは若女さんとの約束を果たすための演技なんだ。
個室トイレに駆け込み道具を取り出してメイクを直す。さらにウィッグを替えてアクセサリーを付けて制服を着崩せば――
しばらくトイレに籠って上井天馬に変装した俺は約束の集合場所へ向かって行った。
♡
午後三時、約束の場所でLINEを開きながら若女さんを待つ。
『ごめん清水さん。腹痛が酷くてしばらく出られないかも……』
しばらく一人にさせてしまうから一言連絡を入れる。清水さん連絡に気付いてくれるかな。
『うん。分かった!』
『ダーツやって待ってるね』
あぁ、待っててくれるなんてどれだけいい子なんだ清水さん。約束を掛け持ちしてるのが申し訳なく思えてくるぜ。しばらくしたら戻ってくるから待っててね、清水さん!
『あっ、いた!ペガーっ!』
清水さんの優しさに心を惹かれていると遠くから若女さんが駆け寄ってくる。同時にその巨乳もばいんばいん揺れる。
「うっす若女!」
「おーっすペガ!いつもなら最初からいるのに今日は途中参加なんてマジ卍ぃ!」
「マジ卍ぃ~!友達と来てたんだけどさぁ~、そいつが途中で帰ってヒマになっちゃったんだよぉ~」
いつものようにバカ丸出しな会話を広げる。
しかし、やっぱりすげぇ巨乳だ。走った時揺れるしワイシャツとカーディガンを持ち上げるぐらい目立つし、マジでエロいわ……
「おっ、ペガ来たんだな」
「ペガーっ!おっそいよぉー!」
若女さんに続いて男女四人のチャラチャラ仲間が合流する。皆上井天馬の姿で知り合った人達だ。
「んじゃ、ゲーセン行こうぜ」
「あたし太鼓の達人やりたい!」
「カワイイ人形のクレーンゲームないかなぁ~」
約束の時間に合流しいつものメンバーが揃ったところでゲーセンへ向かって行った。
♡
太鼓の達人やレースゲームで対戦、クレーンゲームで景品取るまで遊んで気付けば三十分近く経っていた。今日は出費が重なるなぁ……
「あーん、めっちゃかわいーっ♡」
隣を歩く若女さんがブタのぬいぐるみを両手で抱きかかえる。百円一回でゲットできなかった若女さんに代わって二百円二回でゲットしてプレゼントしたものだ。
「めっちゃ気に入ってんじゃん」
「うん!これずっと前から気になってたんだぁ~!ありがとね、ペガ!」
若女さんもやはり年頃の女の子、可愛いものには目がないようだ。
「あっ、でもお金払わなきゃ……」
「二百円ぐらい別にいいって。たまたま取れそうな位置にあっただけだし」
「でも……」
「いいっていいって、そんなに金使った訳じゃねぇから」
「うん、ありがと……」
嬉しそうな顔が一変して申し訳なさそうな顔に変わる。別に二百円くらいいいんだけどなぁ。この手のぬいぐるみって数千円するから三百円で買ったと考えれば安いものだし。
そして時間は午後の三時半。そろそろ本格的に清水さんが心配する頃だろう。いい感じに遊んだし一旦ここを離れるとしよう。
「あっ!ぐっ、いつつ……」
「? ペガ、どうしたの?」
「お、おう、急に腹が痛くなってきてさ……」
「えっ、大丈夫!?」
「あぁ、
「大丈夫?一人で行ける?」
「ヘーキだって。トイレくらい一人で行けるから」
先程と同じように苦痛に苛まれる表情を浮かべてお腹に手を当てながらゲームセンターを離れる。
若女さんっておバカだけどいい奴なんだよなぁ。お金をきちんと払おうとするし、今だって心配してトイレまで付いて来ようとしてくれたし、ルックス(主におっぱい)のおかげもあって密かに男子からの人気も高い。
そんなことを考えながら再びトイレに駆け込んで行った。
カメレオン人間レオン君が彼女作るために変装します! おおかめ @okame4686
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