世界観や設定がとても細かく考えられている作品です。中学生の椎名沙良が、ある少年に連れてこられた「鏡界」と呼ばれる異世界。そこでは人々がみんな銅鏡のような「盾」を使うことができ、そんな盾に興味を持った椎名は、世界の危機に直面することになります。
様々な形のある盾の描写も綺麗で登場人物も魅力的。主人公・椎名は礼儀正しくて頭の回転も早く、カッコいいです。現実世界でクラスのいざこざにモヤモヤした気持ちを抱えているところには共感も覚えます。
苦手な人、あまり関わりたくない人はいますか?そういう人たちとどういう風に接していますか?この物語は他者との向き合い方を教えてくれます。今の環境に違和感を抱く一人の少女が、これからの生き方を考え、生き抜く術を身に付ける物語です。
とくに女子中学生に読んでもらいたい作品です。
人々の心が「盾」を生み出す異世界において、少女は他人と適度な距離を築くために「盾」を発現できるようになります。
現実世界と異世界とを往復するにつれ、迫る双方の世界が崩壊しかねない危機。
それを救えるのは、少女の力だけではない。
ひとりの少女がすべてを背負わず、現実世界にはいなかった「信頼できる人」とともに世界の危機に立ち向かう。
読後感も素晴らしく、もう少し文章を練り直せば、「小説賞」でもよいところまでいける作品ですね。
本作のリライトや、作者の新作を読んでみたくなる。
そんな物語。
まさに「Excellent!!!」です。