続編予告 『第一都市』

 「えっ、また迷子になったの?」



 正式名称、地球管理システムAI国家OSの役割を担うリンという少女がまた道に迷ったらしい。

 見た目は少女、中身は大人……というかババァかもしれない。リンが作られてからもう50年以上経っているからだ。ちなみにリンは有名な探偵ではない。


 リンはこの世界に存在したあるコンピュータウィルスと化した人工知能がホログラム化して……何だこれ、わかりにくいわ!前作の『ヒキガネを轢いたら』の悪役のグレンのことだよ!

 そう、このグレンと似て似つかぬ参考として作られたと思いきやちょっと違う感じの元々ホログラムとして出現できるコンピュータウィルスじゃなくて人工知能の今はロボットのロリババァである。


 やっぱりわかりにくい?

 仕方ないだろう。SF小説なんだから(全国のSF小説の作家に謝れ)。




 そんなことはさておき、例のリンちゃんが迷子になっているという話に戻ろう。



 「いや、まさか機械仕掛けにするとこんなに方向音痴になるとは……」



 頭を抱えていたのは金髪の若い女性、ジュリア・シュヴァルツヴァルトという研究員だった。彼女はこのコミュニティ長にでもなれる所長の座を狙っているらしいが、どうもその従兄弟のルカ・ゴルバチョフが邪魔らしい。


 「ホログラムのままの方が良かったのかもね」


 そう発言したのは、研究所に意味もなく侵入してきたアリサ・ベルテという若い女兵士だった。


 「ちょっと、あんたまた何しに来たのよ」


 「ここはアリサの庭なの。おじいちゃんのアレン・ベルテ博士が作った課に来て何が悪いの?」


 「邪魔なんだから帰りなさいよ!」


 ジュリアにとってこの課を作ったのは誰であろうとどうでもいいことである。

 いづれは自分が全ての課を支配する博士号を手に入れる予定だからだ。

 コミュニティの大事なプログラムであるリンを機械仕掛けにしたのもこのジュリアだが、結果、リンが方向音痴の迷子ロボットになってしまったのは塵のような失敗で、そんなものは失敗の内に入らないのである。



 「どこかの国で『塵も積もれば山となる』という言い伝えがあるらしい。ジュリア、君はナディエージダの大切なホログラムを壊したな」


 そう言ってきたのは従兄弟のルカ研究員だった。


 「本当、あんた達ってうるさいわよね?!今からGPS作ってくるから黙ってなさいよ!」


 ジュリアは皆から離れるように半ば怒りながら自分の研究室にこもった。


 「GPS作るより、今は探しに行った方がよくない?」


 アリサがルカに訊いた。


 「……そうだな。俺達だけでも探しに行こうか」


 そう言ってルカとアリサは今日も例の迷子ロボットを探しに行ったのである。






 そしてある日、例の迷子ロボットは夢の中でも迷子になっていたらしい。

 え、夢の中?そもそもロボットって夢を見るのか?普通は見ないと思うが、晴野幸己という人が書く小説にはそういうわけわからんことはザラにある。ロボットも夢を見るし、鳥は飛べないし、バトル小説はバトルをしない。ツッコんでたら疲れちゃうよ?

 そんなわけで『第一都市』のどっからへんにリンは夢を見て、それからヤバイ奴に遭遇してしまう。




 「貴様もやはり機械に感染したか、それとも感染されたか」



 機械仕掛けになったリンは動きを静止。

 元々ホログラムであったため、意識はあったが、朧げな世界で出会ったのは……グレンだった。



 「……貴方、なんだかとても悲しそうな顔をしてる」



 リンはグレンに言った。



 「……悲しそう?」



 半世紀以上前、グレンはある3人組に機能を消されてから一度も起動できなかった。

 それなのに、インターネット世界でも迷子になりまくれるリンは微かに残ったグレンの粒子に出会ったのだ。




 第一都市。

 それは、地球管理システムAI国家OSが存在する平和な世界。

 崩壊しかけた世界で人々はお互いに助け合い、これからも世界はきっと良くなっていく。


 リンも何も知らなかった。

 自分という存在が何を犠牲に生まれたのか。平和な世界にどんな代償が払われたのか。



 ナディエージダの人々との関わり。

 

 グレンとの出会い。


 明かされる真実。



 この世界は一体何が正しいのだろうか。

 本当の敵は誰だったのだろうか。



 そんな誰もが思うを疑問を抱きはじめたリンは今日も突き進んで…………


………迷子になるのである。

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ヒキガネを轢いたら 晴野幸己 @Karina238396

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