第4話

「あぁ!先生っ!」

「リザベラ!」


 先生が大きな声を出しています。今朝も朝から酔っ払ったリザベラが来てふたりは愛し合っていました。


 コンコンッ。ガチャ。

「やっぱり……。先生!その売春婦はなによ?!」

「あぁ、君か……。」


 また女の人が家の中に入ってきました。しかし先生とリザベラは愛し合うのを辞めません。


「君もおいで。」

「ふざけないでよ!こんな汚らしい売春婦……。」


 僕は、リザベラは綺麗だと思うけれども。


「あっ……。先生。あの女なに?」

「僕の妻だよ。」

「先生……。結婚してたの?」

「そうだよ?」

「……やっぱり。本当に素敵な人なのね。惚れ直しちゃったわ。」

「リザベラ……。君は本当に可愛らしい。」

「……ちょっと!」

「君も落ち着きたまえ。君は僕の妻なんだ。誰よりも、君を愛している。」

「先生……。酷いわ。」

「リザベラ……。もちろん君の事も愛しているよ。」

「ふざけないでよ!」


 妻、と呼ばれた女性は先生とリザベラを引き離し、リザベラの頬を殴りました。すると、リザベラは笑いながら、妻と取っ組み合いの喧嘩を始めました。先生は、それを見てとても嬉しそうに声を出して笑っていました。


 僕は、知っています。


 リザベラ以外にも、妻以外にも、たくさんの女の人が出入りしている事を。


 その度に、女の人達が出会ってしまっては、いつも喧嘩になって、先生はそれを本当に嬉しそうに声を出して笑って見ています。


 リザベラと妻が喧嘩をしているのを涙を流して先生は笑って見ていたかと思うと、僕の方に先生が近付いてきて、いつもみたいに僕を抱きしめてキスをしてくれました。


「スゥ。見えるかい?芸術的で政治的で倫理や論理に満ち溢れた光景だ。醜いかい?美しいかい?」


 そのうち、リザベラが笑いながらキッチンへ向かい、それを妻は追い掛け、馬乗りになり、リザベラを殴りだしました。

 

 先生は、それを見て更に嬉しそうに大きく声を上げて笑っていました。


 そこに、スーツの男の人が来てふたりを止め、「貴方達!何をしているのですか?!」と、大きな声を出しました。


 妻は泣きながら崩れだし、スーツの男の人にもたれかかっていました。


 でも、僕は見ています。


 妻とスーツの人がたまに先生がいない時に、この家で愛し合っていた事を。

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