第8話 敗北
うまくいったはずだった。
あれからというもの空は周りに警戒されないように調査を進め、逃げ切れる確率を日に日に上げていた。
妹の海に伝えるのは極力あとになるようにもした。
妹はごまかすのが下手だし、時間を与えることで、妹に変な考えが浮かぶのを避けたかった。
潜入してくる奴のタイミングも大方空の予定通りだった。
今から準備するようなことをあの男は言っていたが、システムの都合上早々簡単に入れさせてもらえるとは思えない。
あくまで仲間の侵入は予定通りであの時点では決まっていた。
二人で考えた作戦と思わせておいて、元々の計画に俺を乗せるつもりだったのだろうと空は考えていた。
そして男の話。
全て真実かどうかは怪しい。
しかし、現実的に海がここを去るのが決定していたため、不確かだろうとやるしかなかった。
何もしないで海が出てってしまえばもう二度と会えない可能性が高いことは感じていたからだ。
そこで空の出した結論は、脱出はするが、森で落ち合う約束は無視し、逆方向へ逃げることにした。
不安そうな海を元気づけ、手を引きながら、驚くほど脱出は上手く進んだ。
だがほっと一息つこうと休んでいた所を背後から殴られた。
「バキッ!」
音の響きとともに頭が一瞬真っ暗になり、地べたに体が倒れた。
そして一瞬のうちに拘束される。
「残念だったね!」
あの時の男の声がする。
「騙したのか!」
空は声を荒げる。
「人聞きの悪い。助けてあげようと思ったのに、約束の場所を破ったのはそっちでしょ」
男は悪びれることなく言う。
「なぜこんなとこにいる。こんなことしやがって、どうするつもりだ」
「あっちを見てみな」
空が視線を男の指の方へ向けると、海が他の男たちに取り押さえられ、身動きや口を封じられていた。
「汚ねーぞ!」
「心配しないでもいい。妹さんには手荒なマネはしないよ。大事なお客さんだからね」
「どういうことだ!」
「色々話してあげたいんだけどね、そろそろ追手が迫ってくるころだ。主犯のお兄さん。もし逃げ切れて、又私の目の前に現れることができたらお話ししてあげるよ。私達に妹さんを渡してくれてありがとう」
男はそう言うと空のみぞおちに一発食らわせた。
「クソヤロー」
空は気を失いながら、仲間と妹を連れて遠くへ消えてく男を見る事しかできなかった。
兄弟脱出の主犯格として追われることになった空は、逃げ切り、妹を奪還することはできるのだろうか?
スノードーム clara @clara10
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