第3話 パジャマ&夜ご飯🐾

手と手を合わせて、口元を隠す姿勢で、食卓のイスに座り込む。俺の向かいのイスには二人の少女がいる。


「そ、それで君たちは本当に俺が飼っている『ひな』と『まな』なのか?」

「そうだよ〜、ご主人様!」

「そういうことになりますね」


そう。少女たちは俺が飼っているペット。こういう言い方をすると、変な趣味を持っている物にしか聞こえないが、本当に今朝、会社に行く前は間違いなくひなまなだった。

しかし、彼女たちにはアニメとかでよく見る獣耳や尻尾がある…それにこの家に入れるのは俺一人だし、案の定、ひなまなも見当たらないし。

彼女たち曰く、俺が会社に行ってから数時間後、二人とも気づいたら人間の姿をしていたという。

そして、なぜ彼女たちが人間の言葉を喋れるのかは彼女たちにも分からないらしい。


「とりあえず、まずは服を着ようっと私がひなに提案したのです」


、と自分の事をまなと名乗る少女が言った。

それで俺の服を着ているってわけか。


「この服、暖かくって良いの!ご主人様の匂いもして凄く落ち着くの!」


クンクンっと着ている俺の服を嗅ぐ、ひなと名乗る少女。

これはもう信じるしかないようだな。


俺はすぅーとイスから立ち上がり、


「分かった。とりあえずはお前たちがひなとまなだって事を信じよう」

「ありがとうございます、主人様」

「ご主人様、大好き〜」


二人の反応を見て、やっぱりどこあの二匹と重なるところがある事を不思議に思う。


「じゃあ、お前らちょっと待ってろ。俺はとりあえずお前たちのパジャマを買ってくるから」

「え〜、ご主人様の服のままが良いのに!」

「ダメに決まってるだろ?風邪ひいたらどうするんだ?」

「くぅーん、、」


落ち込み方が完全に犬のひなその物だ。


「まなもそれでいいか?」

「あ、はい。大丈夫です」


少し目を逸らすまな。その態度もいかにもまなって感じだ。でも、まさかまなが敬語だったのはびっくりした。



「じゃあ、大人しく待ってろよ」

「は〜い!わんっ!」

「いってらっしゃいませ、主人様。にゃん」


「…あ、あのいちいち『わん』とか『にゃん』とか言わなくっていいから…」

「「は〜い」」



そう言い、俺は近くの服屋に向かった。幸い人は少なく、さっさと二人用のパジャマを買い、すぐに家に向かう。他に服を買っても良かったが、今日はもう遅いためやめた。明日は土日なので明日買いに行くとした。




ガチャ、


「おかえり、ご主人様〜」

「はいはい、ただいま」


そう言って、ひなは俺の腕にくっつき、顔をスリスリする。


「ひな、お前いつもはドアの向こうにいるのに今日はどうして玄関にいるんだ?」

「だってもうドア一人で開けられるもん!」

「あ、そっか」


そう。今更気づいたが二人とも元は結構小さかったが、今は高校一年生の女子くらいの身長はある。


「まなはどうした?」

「リビングにいるよ!」


リビングに向かうと、


誰もいない。あれっと思っていると、カーテンがある部分が少し膨らんでいる。そこで俺はその正体がわかった。すると、膨らみはゴソゴソと動き出し、中からひょこっと顔をだし、


「おかえりなさいませ、主人様」

「あ、ただいま」


やっぱり、人間の姿になってもこいつらは変わらないんだな。


「よし、お前たちのパジャマを買ってきたから、俺の服を返せ」


袋から買ってきた服を取り出し、彼女らに渡す。



〜数分後〜


「着替え終わったよ、ご主人様!」

「着替えました、主人様」

「お、二人ともよく似合ってるじゃないか」


ひなには薄いピンク色のボタン付きパジャマ。

まなには薄い水色の色違いのパジャマ。

本当によく似合っている。


「えへへ、嬉しい!」


ひなは顔を赤くして、でもそれを隠す素振りはまったくせずに後ろにつている尻尾をパタパタっと振る。


「あ、ありがとうございます、、」


まなも顔を赤くするが、恥ずかしいようで顔を逸らして、見せようとしない。


その様子を見て、俺はクスッと笑う。


「じゃあ、色々あったが、そろそろ夜飯でも食うかーってお前たちはペットフードは食うの?」


なぜ、先にそれを考えなかったと思ったが、そこはどうなんだ。


二人はお互いに目を合わせ、また俺の方を向き、


「無理!」

「無理です」

「や、やっぱり、、」


どうやら、人間になってから臭いが無理らしい。



とりあえず、適当にご飯、野菜炒めと卵焼きを作った。


「すまんな、今日はこれで許してくれ」

「ううん!凄く美味しそう!」

「いただきます」


そして、俺も席につき、食べ始める。すると、


「ん?ひな、どうした?食べないのか?」


ひなだけ皿に全く手をつけていない。まなは黙々と食べているのに。


「だって、まだしてないもん」

「してないってなにを?」


すると、ひなは自分の手をグーの形にして、俺に見せる。


「あー」


そこで俺は思え出した。確かに、ひなにご飯にあげる時はいつも、、


「ひな、別に今は『お手』はしなくってもいいだぞ?」

「いや!ひなはする!ひな、いい子だもん!」

「はぁ、わかった」


席から立ち上がり、ひなの前に立つ。ひなは「まだかな、まだかな」みたいな顔で俺の方を見つめる。

俺は自分の手の甲を差し出して、


「ひな、お手!」

「わんっ!」


ちょこんとグーの手を乗せる。


「おかわり!」

「わん!」


同じく反対側の手も乗せる。


「よし!」

「アン!」


そして、ひなはご飯を食べ始める。いつもみたいに美味しいそう。

そして、まなというと、


いつもみたいに黙々と食べている。笑



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飼っている犬猫がある日、人間になって修羅場っているのだが? 青空零 @aozorarei

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