幸運な僕は君を見つけた。

@keikei0726

第1話 本

ここは異世界。



またその中、ディクシレット王国の森。



森に住むのは幼い少女と老女であった。

「おばあちゃん!畑の中に面白そうな本が生えてたよ!」

そのいえは決して裕福とは言えず、この国でも低い地位を与えられた一家だった。

「およしリッカ。その本は魔法の本だよ。燃やしたのにまた現れやがって!」腰の曲がった老婆 ロロニア・アルベルトはその孫 リッカ・アルベルトに言い放った。

「ロロニアおばあちゃんはなんでそんなに魔法を嫌うの?魔法ってとっても便利なんだよ?」

「リッカ!昔から言ってるだろ?爺さんの言ってたことは嘘だって。魔法は争いの道具に過ぎない。銃と一緒さ、、そんなこと言ってないで、早く畑の野菜とってきておくれ。」

「嘘なんかじゃないよ、」リッカは小声で呟いた。


=ディクシレット王国=

この国はかつて魔法による市民革命により滅びた。

現在、王族は魔法を貴族だけに広め、魔法で市民を統制している。




 森に住む少女リッカは畑仕事を続けていると、家に多くの兵隊が訪ねてきているのが見えた。

森から出たことのないリッカは、いつものように外界の人間を怖がり隠れていた。


長い時間が経った。もう日も沈みかけ、いつもなら二人で食卓を囲んでいる頃だ。

すると家にいた兵隊たちが退散して行った。

『おばあさんは兵隊さんが嫌いなのによくこんなに長い時間家に入れたなぁ。』

お腹の空いたリッカは野菜を持ち上げ、家へ運ぼうとした。


しかしリッカは運んでいたトマトを落とし潰れてしまった。

なぜなら兵隊の列の一人の手にはロロニア婆さんの白い頭があった。


そこからどのくらいの時間が経っただろうか。

リッカはそこから動く事ができなかった。


朝になった。いつもならロロニア婆さんがリッカを起こしに来るころだ。

『そうだよ。あれはなんかの見間違え、、』そう心の中で言い聞かせ、重い足を運ぶリッカの目に映ったのは、首から下だけの爪を剥がれた老婆だった。



その時リッカの心に流れ込んできたのは亡きおじいちゃんの言葉だった。

『リッカ魔法はすごいぞ、不可能を可能にしてしまう。使い方さえ間違わなければどんな願いも叶うのさ。』


「あの本だ。」死臭漂う部屋の中を死に物狂いで探した。

しかし見つからないまま途方にくれた。

『あの兵隊たちが持って行ったに違いない、』口の中が涙と血の味で溢れかえった。


いく当てのないまま家を出ると、畑にはほんのりと土をかぶったあの本があった。

『なんで。』と疑問に思った。

しかしそれ以上に希望が見えた。その本を開いたリッカはあるページに出会う。


文字は書かれていても貧民であり、森で暮らしてきたリッカには読めっこなかった。しかしそこには天から降ってくる人間の絵と、王冠を着飾った人間の絵が書いてあった。リッカには何も分からずただこのページを開いたまま、強く願った。

        

       『ロロニアおばあさんを返してください』


そのページに書かれた魔法陣が強く光り、空から人影が見えた。

『おじいちゃん、、やったよ!』


しかしリッカの足元に降りてきたのは寝そべった冴えない男だった。


「ここどこですか。あとあなた誰ですか?」






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