最終話 羽ばたく少女のツバサ
最後の練習を終え、部員全員で大スタのそれぞれのパートを区切っていた仕切りを片付ける。広々とした大スタに演奏するための機材やドラムセットを中に持ち運び演奏する舞台をセッティングする。
様々な配線を交差させ、演奏する反対側の隅っこにPAミキサーが机の上に置かれる。
舞台の後ろにはカーテンが敷かれ、そこは演者の待機場所となっていた。演奏の舞台とPA卓の間にパイプ椅子を並べ会場は完成した。
舞台を見渡し、明日が一回生バンド、と思うと胃を握りしめられるような痛みに襲われた。
不安がないと言えば嘘になる。まだまだ自分では完ぺきとは言えなかった。
でも、次の演奏は本番。一回生バンドの舞台だ。
否応なしに明日はやってくる。
そんなことを考えていると気が付けば部活は終わっており、帰宅路についていた。
いつものように彼女は私の隣を並行して歩いている。
でも、様子がいつもと違うように感じた。最近は色々あって口数が減ってはいたが、それでも少しは言葉を交わしていた。
今日に限っては学校を出てから終始無言でただ歩くことに専念しているようだった。
私もどこか声を掛けずらく黙っていた。
ただ、不思議と気まずさは感じなかった。沈黙があれば居心地が悪くなるのだけれど、彼女とはずっとこうしていられるように思うことができた。
気心知れた仲との沈黙は悪くないと何かの曲の歌詞にあり、その時は理解できなかったけれど、今ならわかるような気がする。
進行方向と彼女の横顔を交互に見ているとちょうど公園の傍を通りかかったとき、目が合った。
あっ、と小動物のような聞こえないぐらいの小さな呟き。何かを考え込んでいるように緊張した面持ちだった。
そして、奏音さんは重い口を開いた。
「ねえ、ちょっと寄っていかない?」
そう言うと公園の方に目配せした。
私はもちろん断らなかった。
二人で公園の中に入っていく。すると以前私の悩みを聞いてもらっていたベンチを見つけた。何も言わなかったけれど私たちは自然とそのベンチに腰掛けた。
座ったはいいけれど会話はなかった。私はどうすればいいかわからず、ただ奏音さんの言葉を待った。
「緊張するね、明日の演奏」
奏音さんはやや元気のない雰囲気で私に問いかけた。
「ええ、そうね。私も緊張してる」
「……大丈夫、なの?」
その“大丈夫”とはきっと私の悩みについてのことなのだろう。
本音を言えば、どうなるかわからない。
パニックになって演奏中に逃げ出してしまうかもしれない。
一瞬“大丈夫よ”と言おうと思ったけれど……。
一人で抱え込まない。そうやって私と奏音さんの関係が出来上がったのだ。
奏音さんの前では素直になってもいいのではないだろうか。
「……正直に言うと……怖い。前に間宮先輩たちが演奏を見に来た時でさえ、冷静でいられず演奏もおぼつかない状態になってしまうのだから、もっと大勢の前だとどうなってしまうのか」
「やっぱりそうだったんだね……」
「でも、私はみんなと演奏したい。せっかくここまでみんなと一緒に練習してきたのだから。それを無駄にしたくないの」
私のことを不安な表情で見ていたが、次第に物憂げに力なく笑った。
「ほんと、椿さんは強い人だよ」
「そんなことないわ。逃げ方を知らないだけよ」
「そこが椿さんのいいところなんだよ」
本当にそれが自分のいいところなのか自信が持てない。でも、こうやって心を許せる人に出会えたのだから悪いことだけではないかもしれない。
「私もそういう健気なところを見習わなくてはね」
そんなことない、と言ったけれど、彼女は首を横に振る。
「私は……椿さんが思っているほどの人間じゃないよ」
笑ってはいたが、私の好きな快活な笑みではなく、それは作り笑いだった。
「でも、そんな私を拒まないで助けてくれたことが本当に救いだったんだ。こんな人間、見捨てられて当然だと思っていたから」
「それは私も同じよ。こんな過去があるなんて知られたら終わりだと思ってた」
「……そう考えると私たちの境遇はやっぱり似ていたんだね。椿さん以外の人だったらここまでしてくれなかったように思える。ふふ、そんな二人が同じバンドで一緒に演奏するなんてね」
作り笑いではない、私の好きないつもの朗らかな笑みを向けてくれた。
「前までの私は原曲のキーで歌いたいって願望がずっとあった。私のために作ってくれた曲だからね。オリジナルに忠実に歌うことが全てにおいて正しいと思っていた。だから最初、椿さんの提案を受け入れることが出来なかった」
まるで犯した罪を告白するように話し始める。
「……でも、こんな私に手を差し伸べてくれる人たちの気持ちを無下にすることなんて出来ない。自分の気持ちを押し殺してでもみんなと演奏したいと思った。それからは風通しが良くなったみたいに気持ちが楽になった」
「奏音さん……」
私に向き直り真剣な瞳が私を捉える。
「私は……私に寄り添ってくれたみんなの演奏で歌いたい。椿さんの奏でる音を聴きながら歌いたい」
彼女の言葉に胸が高鳴る。
人との関わりが不得手で、一生自分は孤独なのだと思っていた私への言葉。
その言葉を聞いた瞬間、私の中にあった演奏への恐れは消えてゆく。
霧散する恐怖心の代わりに奏音さんと共に演奏したいという気持ちが満たされていた。
「ええ、私も奏音さんの歌声でギターを弾きたい」
「……うん、ありがとう」
安心しきった幼子がするような笑顔に変わる。
確かに感じる充実感。強く寄本奏音という存在に引かれている自分が居た。
――ああ、私は彼女のことを……。
その瞬間、明瞭に彼女への想いを意識した。
そして彼女に応えるように私も笑顔を返した。
ちらりとカーテンをめくる。
ざわめく会場。ジャズ研の部員たちが私たちの演奏を待ち兼ねているようだ。ギターアンプの真正面の最前列に間宮先輩が座っているのが見えた。
舞台裏のカーテン一枚で区切られた空間で自分たちの出番を待っていた。
一つ前のバンドの演奏が終わってもなお、その熱量の余韻が舞台に残っていた。
その熱の余波に呑み込まれないよう精神を集中させる。そうしなければまた逃げてしまうような気がして、溶けてここから消えてしまいたくなってしまう。
覗くのを止めて、薄暗い空間の中、それぞれのパートごとの楽器が置かれていたが、私は迷わず鎮座している自分のギターの前に立ち止まりそれを手に取りギターを強く抱きかかえる。
――大丈夫よ、私。だってみんなが居るんだから。
もう今までの自分とは違うのだと言い聞かせる。逃げてはいけない。
一回生バンドの本番なのだから。
「みんな、集まってくれないかな」
奏音さんに招集され打ち合わせをしたわけでもなく自然と私たちは円を作る。
「おっ、景気のいいこと言ってくれるんか!」
「いや、そういうわけじゃないんだけれど……」
綾野さんの問いに照れながら髪を弄っている。どこかきまりが悪そうな瞳で私たちを見渡す。
「その、こんな時にする話なのか分からないけれど……みんなに改めて言いたいんだ。本当にありがとう」
私たちの顔を一人ずつしっかりとした瞳で見遣る。
「ふふ、急にどうしたの?」
「過田先輩にはほんとにお世話になりっぱなしで、私たちを導いてくれました」
「いいえ、年長者として当然のことをしただけよ」
「それでも、ですよ」
過田先輩は大きな壁が立ちはだかったときに道を示してくれた。私たちのことを一番案じてくれていた。
「早稀は、私の体調を一番心配してくれたね」
「……奏音に抜けられると困るなって思っただけだよ」
早稀さんはわざとらしく視線を逸らした。どこか素直になれない言葉だったが、今の私にならわかる。きっと恥ずかしいのだろう。目元まで隠れた髪の毛の下の表情がほのかに朱に染まっているのが想像できた。
「綾野は……」
「うちは自分のことで精一杯やったから奏音に何にもしてへんよ」
「いや、そんなことない。初心者なのに私たちの演奏についてきてくれた。そんな綾野の姿に私は勇気を貰えたんだ」
楽器を始めたばかりで不安になることが多かったはずなのに、いつも明るい表情を見せてくれた。そんな姿を見て私たちは励まされた。そして今では立派な私たちのベーシストとなってくれた。
そして奏音さんは私の方に身体を向ける。
「椿さんは……これまでにたくさん話したとは思うけれど、それだけじゃ全然足りない……言葉だけじゃ伝えきれないことでいっぱいだ。椿さんには助けられてばかりいるように思えるよ」
「それは私もよ。奏音さんの言葉で前に進む勇気をもらって、今の私がいるの」
私は奏音さんに救われ、奏音さんを私が救うことが出来た。
私と奏音さんは支えあって生きている。
そんな言葉はフィクションだけの世界にしかない幻想だと思っていた私がその言葉の意味を初めて実感することが出来た。
奏音さんは再度、一人ずつ表情を確かめるように眺める。
「それじゃあ、行こう」
カーテンの幕が開かれた。
一気に緊張感が高まる。
その先、私の目に移りこんできた光景は大勢の部員たちが私たちを注視していた。
怖気づき目を背ける。
――大丈夫よ、もう見えないはず。
念じ俯いたままの視線を恐る恐る上げる。いないはずなのだから……。
でも……そこにははっきりと私の目には中学時代の同級生の顔が映っていた。
またも幻影の同級生たちは厭らしい笑みを私に向けている。私の失敗を望んでいるのだ。
みんなは私を置いてそれぞれの立ち位置に移動する。急に寒さを感じたと思ったら体が金縛りにあったかのように硬直してしまった。
凍えそうなほど寒々しいのに私は汗を掻いていた。
観客席の無表情の幻影の一人と目が合う。
その子は佳奈ちゃんだった。
――ダメだ、どうしても見えてしまう……私は過去の自分のままなの……。
未だに待機場所から出てこない私を心配そうにバンドメンバーが振り返り見詰めていた。
私も持ち場に行かなければいけないのに足は鉛のように重く神経が繋がっていないかのようにピクリとも動いてはくれない。
佳奈ちゃんと視線が合い、思わず瞳をつぶりその存在をかき消そうとした。
みんなと演奏したいと思っていたのに変わることが出来ない自分が情けなかった。 私なんて存在しなければよかったんだ……。
「……椿さん」
耳元で囁かれる言葉に我に返った。
私に手に誰かの暖かな手が添えられていた。
恐る恐る目を開けるとこちらに優しく微笑みかける奏音さんがいた。
「奏音さん……」
「怖いかい?」
「あ、あの私……ごめんなさい……みんなと演奏したいって言ったのに……やっぱり変われない、出来損ないなんだ……」
瞳が滲み自分が情けなくて仕方がない。
すると握られていた手が少し強く握られる。
「そんなことない。椿さんは私を助けてくれたじゃないか。そんな人間が出来損ないなわけない」
私の頭を撫でながら、私の大好きな朗らかな笑みを見せる。
「怖いのなら、私と一緒に行こう」
彼女に引き寄せられ身体はふわりとまるで羽のように軽くなりようやく一歩を踏み出すことが出来た。
「大丈夫、私を救ってくれた椿さんなら出来るよ。さあ、私と一緒に」
そう言って彼女は舞台の中央にある立ち位置につく。
硬直は解け、幻影はもう見えない。
心の陰りは消え去り、彼女に私の持てるすべてのことを注ぎたいと願う自分がいた。
私も定位置につく。
ギターにケーブルをつなぎ、みんなの方に目を向け準備ができたと目配せする。
早稀さんの4カウントを合図に私たちの演奏が始まった。
過田先輩のピアノが儚くも優美な旋律を奏でる。
みんなの演奏を下から支えるような早稀さんのドラムに、綾野さんのベースがグルーブ感を生み出していた。
そして奏音さんの温かみを感じるような優しい歌声が舞台を、観客席を包み込む。初めて彼女と出会った時に感じた想いと同じ。彼女の声が私の心に溶け込むようにして癒しを与えてくれる。
私も彼女の声に寄り添うようにギターを弾く。
今の自分を作り上げた過去の記憶が浄化されてゆく。もう何も後ろめたいと思いながら弾かなくても大丈夫なんだ。
奏音さんと一緒に演奏したいと思ってここまでやってきた。彼女との演奏がこんなにも素晴らしいことだなんて。
そして、最後は赤子が静かに眠るように締めくくり、私たちの演奏が終わった。
部屋の隅々から音が吸い込まれ消えていくと観衆の拍手の嵐が私たちを迎え入れてくれた。
目の前にいる間宮先輩は子を見守る母親のような笑顔で私を見ていた。
舞台のみんなの方を向くと綾野さん、早稀さん、過田先輩、3人の笑顔が見えて胸が弾んだ。
「椿さん!」
私の元へ頬を紅潮させた奏音さんが駆け寄り私の手を取る。そして耳元で囁いた。
「とても……とても素敵な演奏だったよ」
胸をギュッと締め付ける感覚。でも、痛みはない。むしろ喜びを感じるような温もりを確かに感じた。
奏音さんの素直な言葉に天にも昇る心地だった。
そして私は彼女の気持ちに応えるように強く握り返し、一つの決心をした。
一段一段踏みしめながら階段を上っていた。
行き着く先は屋上。
一回生バンドが終わりみんなで演奏の感想を言い合っていた際に私から奏音さんに告げた言葉。
――屋上で話したいことがある。
奏音さんが私の過去を知るきっかけとなった場所であり、彼女が自分の過去を打ち明けた場所でもある。私たちの様々な関係性の契機となった場所をあえて指定した。
どうなるのかわからない。けれど、言わずにはいられない。
心の片隅で淡い期待を寄せていた。胸が早鐘を打つのを止められない。
階段を昇りきり、そしてドアを開いた。
春が終わり夏の始まりを感じさせるような暖かい夜風が流れ込む。
そこには手摺にもたれ掛かり夜空を眺めている奏音さんが待ち構えていた。以前にも同じような場面を見たことがあるけれども、前とは違い打ちひしがれている様子はなく、優しく包み込む満月のような表情で彼女は微笑みかけてくれた。
「やあ、待っていたよ」
手招きされ彼女の傍まで歩み寄る。
「私が呼んでおいてなんだけれど……よかったの?まだみんなとおしゃべりしたかったんじゃないの?」
「いいんだよ。それに私も椿さんに話したいことがあったし」
「そう……よかった」
私は安堵し胸をなでおろした。すると奏音さんは真摯な目つきに移り変わった。
「……私の夢を叶えてくれて、ありがとう」
「えっ?」
先に奏音さんが話題を切り出した。
「クレイドルを歌わせてくれたってことにだよ。歌う機会なんての疾うの昔に失われてしまったんだと思っていたからね。でも、椿さんは私に歌うきっかけを作ってくれた。そして今日歌うことが出来た」
「ええ……」
提案はしたけれど特別なことをしていない。本当に頑張っていたの他のバンドメンバーたちだと思う。
「ふふ、謙遜だな椿さんは。自分の功績だと思っていないでしょ?」
すべてを見抜いているかのように奏音さんは私の顔を覗き込む。
「いや、そんなこと……」
「じゃあ、自分のおかげだって思っているんだね」
「えっと……うう、意地悪だわ……」
「はは、つい揶揄いたくなっちゃうんだよね」
からからと笑う彼女を見て、冗談に戸惑うも、以前のような笑顔を見れるのが嬉しかった。
「でも、私を立ち直らしてくれたのは間違いなく椿さんだ。キーを変えて演奏することに最初は不安を感じていたけれど……みんなと演奏できて、本当に良かったと思ってる。今すごく満足しているんだ。この気持ちはすべて、椿さんがくれたものなんだよ」
屈託のない笑顔に私は内から熱い何かが溢れそうになる。人らしく振舞うことが出来なかった私がようやく誰かのために行動することが……。
「椿さん……」
彼女の言葉に我に返ると自分の頬を伝うものに触れる。涙だった。
そしてようやく自分が泣いていることに気付いた。
「大丈夫かい?私なにか気に障ることでも……」
私の手を取り、彼女は私の顔を覗こうとする。
「ううん、違うの。……夢を見ているみたいで……私なんかが誰かに求められたり、認められることなんて……ないって思って……」
「そんなことはないよ」
嗚咽をこらえようとする私を奏音さんは抱き寄せ、きつく抱きしめた。
「椿さんは誰よりも私のことを想って、行動して、救ってくれた。それは他の誰でもない、私と同じように痛みを知っている椿さんだからこそできたことなんだ」
彼女は私の流した涙を指で優しく拭う。
「椿さんのおかげでやっと納得できる自分になれたんだ」
奏音さんの言葉が私の心に染み込んでいく。汚れた過去に抗うためにやってきたことが無駄じゃなかったんだ。
そして私は視線を上げる。
「……本当に感謝しなければいけないのは私の方よ、だって……」
彼女の気持ちに応えるために私も強く抱きしめる。
「だって、空っぽだった私を埋めてくれたのは、あなただから」
どれだけ時間が過ぎたのだろう。
彼女が真横に居るという事実だけで心が躍る。
この時間は永遠のようで、一瞬で過ぎ去ってゆく。
「完全下校時間になりました。生徒の皆さんは速やかに下校してください」
学内に帰りを促すアナウンスが流れる。その知らせは屋上にいる私たちの耳にも届いていた。
「……時間みたいだね」
「そうみたいね」
「そういえば、椿さんが話したかったこと、聞いてないね」
「ああ……それは、もういいの」
「本当にいいの?」
頷く私。今の私にとって十分すぎるくらいに話すことが出来た。たった一つの言葉を除いて。
「そうか、なら戻ろうか、みんな待っているだろうしね」
「ええ……」
その一言こそが一番彼女に伝えたいことだ。
今の私は十分すぎるくらい幸せを感じていた。
――でも……。
彼女が私の横を過ぎ去ろうとする。
でも……私の気持ちを伝えるために、せっかくこの場に呼んだのにあやふやのままで終わらしたくない。伝えたい想いとその言葉を口にする気恥ずかしさに板挟みの状態に胸が苦しくなる。
やっぱり伝えなくても……と思った刹那、彼女との思い出が蘇る。
――私たちは自分の気持ちを伝えることで繋がれたんじゃない。
彼女の心にこの気持ちが届かなくてもいい。過ぎ去り、背を見せる彼女へ勇気を出し私は告げた。
「……奏音さん、好きよ」
精一杯絞りだした声量は蚊の鳴くようなか細い声しか出ず、奏音さんは振り向きもせずそのまま扉に向かって歩いて行く。
聞こえなかったのだろう。でも……。
――これでいいの。今のままでも十分すぎるくらいに私は満足なのだから。
伝えれなかったという落胆と、変わらない現状に妙な安堵を感じながら少し駆け足で彼女の横に並ぶ。
彼女の横顔をちらちらと窺うも変わった様子はない。やはり気づいていないのだろう。
彼女がドアノブに手を掛けると、ピタリと動かなくなった。どうしたのだろう、と思い顔を覗きこもうとしたときだった。
彼女が私の方に振り向く。
その表情は私の大好きな朗らかな笑みだった。
「椿さん……私も好きだよ」
そして扉が開かれた。
いつか、その重みが消えますように 虚ノ真 @marcotosin15
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